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2.バイトリーダーはレジ打ちを教えたい!?

夏の暑い日に食べるチョコミントアイスって、なんか風情ですよね。

 ふぅ〜仕事か……確か今日からあのえーとなんだっけ。名前忘れちゃったよ。勇者ってことしかもう覚えてないよ。印象が強すぎるんだよアイツ……。



 ガシャンガシャン


(あーきたきた)


「たのもう!」


 以前来た時と全く変わらない風貌のその男は、なぜか先日よりも顔の掘りが深く見えた。

 勇者が、扉のちょうど真ん中に立っているせいか、もの凄い虫が入ってくる。外にある虫駆除器(個人的命名)のとてつもない電撃の音が聞こえる。


 肩に、ちっちゃいコクワガタのメスを乗せやつ(勇者)は登場した。



「バイトリーダー!! 私を指導してくれ!」


 足を肩幅に開き、両腕を胸の辺りで組んでいる。

 背中に担いでいる剣は黄金に輝いていた。


「あ、こんばんわ、勇者さん。時間ギリギリですね。私は22時に来てと言いましたが、21:59に来るとは思いませんでした。せめて5分前くらいに来るのが社会人のマナーだから次回から気をつけてね!」


「はい!バイトリーダー!」


「あと、そのバイトリーダー!って呼ぶのやめてくれるかな。私の名前は村山です。お願いします」


「ふふっ、やめたまえ!私はその人たちを職業でしか呼べない病気なんだ!だから私の名前も勇者と呼んでくれ!」


 コクワガタのメスから少し小さめのモンシロチョウが勇者の肩に止まっているが、いまはそれどころでは無い。


「とりあえず、勇者さん。中に入ってください」




 虫が━━とくにウスバカゲロウがめっちゃ入ってくるんだ……。





 ☆



 客の居ない深夜のバイトというのは、存外悪いものではなく、スマホを触ったり小腹を満たすために廃棄の揚げ物を店長に内緒で食べることができるからだ。


 ただ、ガッツリ防犯カメラに写ってしまうと、まずいのでそこだけは注意が必要なのだが。




「それで、勇者さん。廃棄を食べてはいいよと言ったけど、そんなに口いっぱい入れる必要はなかったんじゃないかなって僕思うんだよね」




「えぇ、じびばぜん。おはがずいでで」


「ほら、口に入れすぎて何言ってるかわかんないよ」

(お腹すいてて)

「こ、こいつ脳内に直接?!」

「ぴょん!ぴょん!雑魚な人間には理解できない神の領域なのだよ」メガネクイッ


 光の精霊が勇者の頭からはい出て謎にメガネをクイッとした。というか目がないように見えるのになんでメガネしているんだこいつ。



「えっと、ヒカリん?さん?こわいですよ」

「ふっ、愚かなる雑魚よ。貴様みたいな愚者には分かるまい」


「こわっ、やびのぜいぜい、へっはわるのはやへなはい」

「ぴょん!ぴょん!闇の精霊マリリン・モンローですぴょん!」

「名前だけファンシーなんですね。闇なのに」

「ふっ、愚問だな。脆弱なる肉塊」


 闇の精霊って名前ファンシーなのにタバコ吸ってるんだな。しかもi○OSだし。手がないのにどうやってあの重いヤツ持ってるんだろ。てか、金はどこから出てくるんだろう。

「ぴょん!ぴょん!魔封じの指輪を売ったぴょん!」


 なんか、光の精霊に唾をかけられたんだけど。どうしよう、なんか暑い。


 いつの間にかモンシロチョウからウスバカゲロウにジョブチェンジしている勇者の肩を見ながら、とりあえずレジ打ちについて教えることにした。


「でわ、勇者……えーと」

「ぴょん!ぴょん!ハイラルだぴょん!」クイッ


 この光精霊……決めゼリフじゃないのにいちいちメガネクイッってするんだ……痛い子なのかな。


 バイトの制服を勇者……何とかさんに着てもらい、(剣はバックヤードに置いてもらった)名札をぶら下げレジの前に立ってもらった。


「それじゃぁ、勇者くん。ここのボタンを押してくれるかな」

「はい!バイトリーダー!!エクスキューショナーアタッーーーク!!!」


(あぁ……機械って意外と丈夫なんだ……)


 勇者の指からほとばしる爆煙と共に、出退勤ボタンが押された。


 ジュウジュウと焦げ臭い匂いがした。

 よく見ると、勇者のバンダナが歴戦の戦闘を繰り広げられてきたくらいにボロボロになっていた。


「あの、魔力みたいなの込めなくていいから。君の唯一のトレンドマークみたいなのが焼け焦げてるから」

「ふぅ……このボタンとやら手強いですね。4魔柱達よりも頑丈だ。次は、聖剣バビロニアで滅ぼし尽くしてやります!!」

「うん、それはやめよっか」


 その後、2時間ほどレジ打ちの練習をした。

 勇者のバンダナは灰となって消えてしまった。





日っていう、漢字って読み方沢山あるんだ……知らなかった。日本人なのに

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