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帰宅中、いきなり可愛い女の子に声を掛けられる話。  作者: やる気になったら書く人
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呼び方を変えてもらう話。

その後はどこか居心地の悪い教室で授業を受け、特に何も起こることなく放課後になった。今日は怜が話があると言っていたので、教室で少し待つことにしたのだが……全然来ない。もしかして何かあったのだろうかと思い、怜の居るであろう一年生の教室に行くことにした。階段を上り、教室の前まで来たところで、聞いたことのある声が聞こえた。

「貴方が私の兄を誑かしたんじゃないんですか!」

……この声は今日のお昼頃に話しかけてきた、小谷理沙ではないか?もう少し耳を傾けると、どうやら彼女が誰かに詰め寄っているようだ。

「ちょっ、ちょっと待ってください! 本当に何の話をしているんですか!?」

あれ?この声、もしかして怜が詰め寄られているのでは?

「惚けないでください。貴方が兄を誘惑して連れ去ったんでしょ!?」

「違います!私は小谷先輩と面識なんてありません。」

怜の声だ。間違いない。

「じゃあ他に誰がいるっていうのよ! 貴方がやったんでしょう!?」

「それは……」

「ほらやっぱりそうなんじゃない! この女狐め!」

まずい。このままだと怜が危ない。そう思った僕は慌てて扉を開け、教室の中に入る。

「あっ先輩……」

怜は無事だったみたいだ。よかった……。

「なに貴方達、もしかしてグルだったの?それなら納得ね。兄がよく言っていたわ、あの涼風颯斗とかいう陰キャと雪野怜っていう可愛い子が付き合ってて気に食わないって。私にとっては兄を誑かしている女のほうが気に食わないけど、確かに釣り合ってる感じがしないわよね。」

そう言った次の瞬間、僕が口を出す前に怜が理沙の胸倉を掴む。

「颯斗先輩の悪口は言わないでください。私のことはどう言おうが勝手ですが、それだけはダメです。」

怜の顔は今まで見たこともないような、整った顔立ちには似合わない鬼気迫る表情をしていた。

「ちょっと!離しなさいよ! 怖いんだけど!……わかったから! とりあえず手を離してよ!」

怜は言われてやっと気がついたのか、怜は掴んでいた制服を離した。

「私、貴方のこと嫌いよ。大嫌い。それに、まだ兄の事で疑ってますから!」

そう言って彼女は逃げるように教室を出て行った。

「……ごめんなさい、私、怖かったですよね」

「そんなことないよ」

「でも……」

「むしろ、怒ってくれてありがとう。ちょっとうれしかったよ。」

「ほんとですか?」

怜は不安そうな顔でこちらを見上げてくる。

「ああ、本当だよ。」

そう言うと、彼女は安心した様子で息をつく。

「それで、僕に話したいことって何だい?」

「えっと……ここでは言いにくいので、一緒に帰りませんか?」

「いいよ。」

学校を出ると、僕達は二人並んで歩き始めた。

「あの、先輩」

「ん?なんだい?」

「その……今日はごめんなさい。いきなりあんなことに巻き込んでしまって」

「大丈夫だよ。怜は何も悪くないんだから」

「はい……」

なんだかあまり良い話じゃないし、話題転換しようかな。

「そういえば、怜はいつまで敬語で話すんだ?」

「へ?」

「いや、だから僕に対してずっと敬語じゃないか。そろそろタメ口にしてもいいんじゃないか?」

「それは……無理です。」

即答されてしまった。

「どうして?」

「だって……恥ずかしいし……//」

顔を赤く染めながら俯く彼女。そんな彼女を見ているだけで癒される。

「じゃあ、せめて呼び方だけでも変えないか?名前呼びとか。」

すると彼女は少し悩んだ後、

「……わかりました。」

「じゃあ……これからよろしくお願いしますね。………………颯斗君。」

彼女は照れくさそうに、小さな声で呟いた。

「うん、こちらこそよろしくね。」

その言葉に呼応するように、怜がたははと笑う。そして、彼女は僕のほうを見て言った。

「やっぱり、貴方が好きです。大好き。」

「僕も好きだよ。」

そのまま時間がどれだけ流れただろうか。そろそろ怜の家が見えてくるといったところで、彼女が意を決したように口を開いた。

「あのですね……今日私の家に来てみませんか?」

「えっ!?」

思わず大きな声を出してしまう。

「嫌でしたら別に良いんですけど……」

「いや、そういう訳じゃないんだが……ただ驚いただけだ。」

「本当に来てくれますか?」

怜が上目遣いで聞いてくる。反則だ。

「もちろん行くよ。」

そう答えると、怜は嬉しそうに微笑んだ。

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