彼女が励ましてくれる話。
あれ以来、怜はますます積極的になり二人でいる時はいつもくっついてくるようになっていた。それはうれしいことなのだが、正直周りの目がかなり怖い。そんな可愛い女の子の彼氏がいつも教室の隅にいるような陰キャなんて勿体ないなんて言われたりもしたし、最近は別れろなんて脅されたりするようになってきた。なんとか怜にはそうなっていることを隠していたのだが、そんな生活が一か月ほど続いたある日、とうとうばれてしまった。僕が同じクラスの男に脅されているところを見られたのだ。その男は怜に気づくや否やどこかへ去っていった。僕もあわてて態度を取り繕ったのだが、
「……ねぇ颯斗先輩、何か隠してますよね?」
怜は鋭い。僕が悩んでいるときとかすぐに気づいてくれるし。しかし今回はちょっとまずいかもしれない。
「別に何もないよ」
平静を装って答えると、
「嘘つかないでください」
とあっさり見抜かれる。
「最近先輩が他の人に呼び出されてることは知っています。」
「……その、私に言えない事だったら言わなくてもいいんですけど……教えてくれませんか?」
怜の目はとても真剣だ。しかし話したところでどうにかなる問題ではないし、むしろ余計心配をかけてしまうだけだろう。
「本当に何でも無いから。ごめんね、今日はもう帰るよ」
「待って!」
帰ろうとした僕の腕を掴む怜。
「何を隠してるのか知らないですけど……私はそんなに頼りないですか?私は……先輩のことを助けてあげたいんです。」
彼女の瞳は潤んでいた。僕は観念することにした。
「実は……君のことで色々と言われてるんだ。怜は可愛いから……僕みたいな地味な奴とは釣り合わないって」
それを聞いた怜は少し考えてから口を開いた。
「つまり嫉妬されてるってことですか?」
「多分……」
「でも先輩は何も悪くありません。悪いのはそいつらのほうです。だから先輩は何も気にしなくて良いんですよ。」
そう言って彼女は微笑んでくれた。やっぱり怜は優しいな。
「……怜、大好きだよ。」
思わず抱きしめると彼女は驚いていたがすぐに笑顔になり、抱き返してくれた。
「私も……ずっと前から好きです。」
このまま一緒に帰ろうと思ったのだが……
「ごめんなさい、私、この後学校でやらなきゃいけないことができちゃったの。今日は先に帰っててくれる?」
とのこと。部活や委員会に所属しているといった話は聞いたことがないのに、学校に残って何をするのだろうか?少し疑問に思ったが、あんまり聞くのも良くないだろう。そう思った僕は名残惜しみつつも、今日のところは怜と別れて一人で家に帰ったのだった。