可愛い彼女の、とある片鱗が見えた話。
しばらく歩いていると公園が見えてきた。中に入るとベンチに見慣れた後姿があり、近寄ってみるとやはり怜だった。どうしようか迷ったが話しかけることにした。
「こんな時間に一人で出歩くのはあまり良くないんじゃないかな?」
すると怜は驚いたような顔をしたあと、
「颯斗先輩……?どうしてここに?」
「それはこっちのセリフでもあるんだけどな……まあいいや、隣に座ってもいい?」
「はい、もちろんです!」
彼女は嬉しそうな顔をしてスペースを空けてくれたのでそこに座ることにする。しばらく沈黙が続いた後、怜は静かに語り始めた。
「最近気づいたんです。私、本当は寂しかったんだなあって……だから誰かと話したり、遊びに行ったりするのに憧れてたんです。でも私にはそういう相手がいなかったから……それで、前に勉強を教えてもらった時に思ったんです。この人ともっと仲良くなりたいなって!」
怜は真っ直ぐこちらを見つめている。僕は自分の胸の内を話した。
「僕も同じことを考えてたよ。君と一緒に過ごす時間はすごく楽しい。でもこの関係を壊してしまうんじゃないかと思うと怖いんだよ。」
すると怜は優しく微笑んでくれた。
「私は大丈夫です。それに壊れたりなんかしないと思います。だって……」
少し間を開けてから続けて、
「私たち、両想いなんですよ?」
その言葉で緊張の糸のようなものが切れたような感覚に陥った。
「そうだね……これからよろしくね。」
そう言って手を差し出すと、怜はそれを握り返しながら言った。
「はい!よろしくお願いします!」
こうして僕らの関係は恋人へと変わった。これからもこの幸せな時間が続くと……僕はそう信じていたのに。
「じゃあ颯斗先輩、スマホ貸してください」
「え?いいけど……何に使うんだい?」
「それはですね……こうするんですよ」
怜は僕のスマホを慣れた手つきで操作する。……ここで何故か嫌な予感がしたのは間違いなかったのだろう。
「はい!できました!」
そう言って僕に画面を見せてきた。そこには怜以外の連絡先がすべて消えているスマホがあった。
「え?」
理解が追い付かない僕に怜は言う。
「私が先輩の彼女になったので、私以外の連絡先はいらないでしょう?」
「いや、でもこれはさすがにやりすぎというか……」
「大丈夫です、私もそうしますから」
「そういう問題じゃなくて……」
「それに……」
怜はさらに続ける。
「先輩は私のこと、嫌いなんですか?」
「そんなわけないだろ……」
「ならいいじゃないですか」
そう言われてしまうと反論できない。
「……わかったよ」
「ありがとうございます!」
こうして僕らの関係は完全に変わってしまった。