喧嘩に挟まれた令嬢
思いついたので書きました。よろしくお願いします。
「公爵令嬢! 貴様の悪事をここで暴いてやるっ!」
卒業パーティーの最中、突然そんな声が聞こえた。
振り向くと、王子が金髪を振り乱し青い瞳で、わたし……を挟んだところに居た、婚約相手である銀髪で赤い瞳の公爵令嬢を睨みながら指さしていた。
人を指差すなって教育受けなかったのかなこの人。
静まり返ってしまった会場に、公爵令嬢の涼やかな声が響く。
「あら、ご機嫌麗しゅう御座います殿下。貴方様からお声がけ下さるとは、鉄の傘を用意させねばなりませんね」
そう、薄ら笑った。派手な顔立ちの美女ゆえ、迫力が凄まじい。
そして、その場から離れようとしていたわたしの左腕をがしっと掴んだ。へ?
ぐいっと体を引き寄せられて、まるで公爵令嬢を背に庇ってるような体勢にさせられる。
「して、私の悪事とは一体?」
「この男爵令嬢をいじめたことだっ!」
王子は隣にいた茶髪の美少女を示す。王子、パーティで婚約者以外をエスコートしてるー。
茶髪の美少女はつぶらな大きい目を涙で潤ませ、いかにも自分はかわいそうな存在であるとアピールをしていた。
「王子様ぁ、ほんとぉに怖かったんですぅっ!!」
と、豊満な胸を王子に押し付けるように腕にしがみついた。
「貴様はこの国の母たる妃の器では無いっ! 貴様との婚約破棄を宣言する!」
王子は会場に響かせるように声を張り上げた。
ざわざわと周囲が動揺する。彼らの結婚は、ここ数十年仲が悪い王家派と公爵派の中を取り持つための、国で決めたもの。
だのにそれが破棄されそうになっているからだ。公爵令嬢の彼女と結婚するが故に王となるのに、なりたく無いのだろうか?
わたしも動揺している。わたしを挟んで喧嘩しないでほしい。そして解放して欲しい。わたしが所属する派閥は目立たずがモットーの中立派なんです!公爵派でも王家派でも無いんですよぉ!!
「悪女だなんて、言いがかりですわ。私は婚約者がいる者に乱りに関わるものでないと、注意を促しただけでございます」
「男爵令嬢の持ち物を壊したり隠したりしたそうじゃないか!」
「証拠は」
「彼女の証言があるだろう!!」
王子、それ本気で言ってる?
「そんな怖い顔で睨まないでくださいまし。ああなんて恐ろしいのでしょう」
公爵令嬢はなんでわたしを盾にするの!?
「おい、そこの令嬢邪魔だ」
邪魔だって言われても、美女にしっかり掴まれて動けないんです! 公爵令嬢様、意外と怪力なんですね……。
「この子は健気にも悪意から私を守ってくださっているのです」
勝手に仲間にしないで!!
「それと殿下。王太子であるのにこの娘が何者であるのかお分かりでないようですね?」
え、わたし何者でも無いですよ?
「令嬢、名は」
名乗りたく無いよう……でも命令だから名乗らないといけないのよねぇ。
「……伯爵家の娘でございます」
王子はじっと睨むように私を見下ろしたままだ。多分何もピンときてないんだと思う。
でもなんか後方でピンときた方が何名かいらっしゃるのですけど、わたしの家いったい何なんですか!? 歴史が古いだけの中立派ですよ!?
「ふん、覚えたからな……ともかく、公爵令嬢! 貴様との婚約は破棄だっ!!」
と叫んだ。そして、
「庇うお前も無事では済まさないからな。衛兵! この二人を会場から摘み出せ!」
わたしたち二人は会場外へ追い出されたのだった。
王家に睨まれちゃったよぅ……どうしよう。
「巻き込んでしまって申し訳ないわね」
全く申し訳なさそうな顔で、彼女はそう謝った。
「良い機会だと思ったのよ。私あの人とはうまくやっていけないと思っていたし、あの人が国の頂点に立つのはどうかと思っていたから」
と優雅に溜息を吐いた。
「あなたのお家はこの国ができた当初から在る、由緒正しき中立派だとご存知?」
自分の家ですから知っていますけども。
中立派は、この国の貴族の五割が所属する巨大な派閥だ。別名日和見派。
「そう、古くからある家で、且つ中立派。つまりあなたのお家は中立派の代表格なの。目立たないけれど重要な存在なのよ」
あー、なるほどぉ。つまり殿下の行動は、"王家は中立派のことなんてわからないし重要だと思っていないし、要らない"って言ったのと同じことをしたんですね。
「明日から楽しみね」
と目を細めて笑う姿はもう怖い以外に言葉が見つからなかった。
どうにか無事に家に帰ると、もう情報が届いていたらしい。お父様にしこたま怒られた。
「あれほど周囲に気を配っていろと言ったのに!我が家は巻き込まれ体質持ちの家系なんだぞ!」
「本当に申し訳ございません……」
「まあまあ、巻き込まれたのが殺人事件や汚職事件ではなくて良かったではありませんか。あなたと違って」
とお母様はおっとり笑っていた。目は笑って無かった。お父様そんなことに巻き込まれてたの?
その後の結果だけ言うと、王太子だった王子は除籍されて公爵令嬢は弟王子と結婚。
そしてわたしは、彼女のお茶会友達になった。
そのお茶会には彼女の義妹となった姫も毎度参加しており、時折王太子(もちろん弟王子のことだ)も混ざって大変仲睦まじいご様子なのでこの国は安泰だなぁと思いました(遠くを見ながら)。
おしまい
ここまで読んでいただきありがとうございました。




