はじまり
私は憧れていた。
魔法に頼らない、本物の依存と愛を。
私だけのことを考えて生活し、私なしでは生きられない人物との出会いを。
ただ、、
どんな因果か私には生まれ持ったあり余る魔力があり、それは叶わない。
魔法で人の心が読めてしまうし、どんな人物も心の中で「よそ見」をしている事を私は知っている。
好きな人が現れても、幻想を抱く前に「知ってしまう」のだ。
そんな私が信じられるもの。
私が魔力を「ある方法」で注げば、どんな高貴な人物も私に尽くしてしまう。
「魔力の暴走」により、人が理性による身体と心の制御を失ってしまう病の流行。
それを鎮めるためのアトリエ。
助手は2人。
2人とも、私の魔力で一生私に夢中である。
依頼者は1日20人。
私の魔力による加護を求めて、予約は半年先まで埋まっていた。
私はやり甲斐を感じていた。
そんな中、ある日急に、私から「心を読む能力」が消えた。
なんの前触れもなく。
こんな事は初めてで、私は簡単に壊れてしまった。
誰も信用できない。
誰とも関わりたくない。
私のアトリエは無期限休養となった。
そんな中、私に寄り添おうとする助手の2人。
私が信じられるものは、「私の魔力」で心を縛られている、この2人だけ。




