病ンデル童話選【赤ずきん】
グロ・サイコ・殺人・厨二病要素満載ですのでご注意。
ふわふわの巻き毛にバラ色の頬。
あどけない顔立ちの愛らしい女の子。
お気に入りのびろうどの赤いずきんは大好きなおばあちゃんのお手製。
それを被って村を歩けば・・・みんなが笑顔になる、村一番の可愛い少女。
それがあたし、赤ずきん。
ある日、おかあさんがあたしに言ったの。
おばあちゃんの具合が悪いから、ケーキとワインを持ってお見舞いに行きなさいって。
怖くて悪いオオカミさんが出ると噂の森の奥。
そこにあるのが、大好きなおばあちゃんの家。
あたしは勇気を振り絞って、ひとり、お見舞いに出かける事にしたの。
ちょっぴり怖いけどお母さんの言いつけ通り、歩いていけば大丈夫。
森の中のいっぽん道をあたしはまっすぐ歩いていく。
すると出会ったのは大きな体でぶっきらぼうなの猟師さん。
猟師さんはあたしをじろじろ見て、いやらしい笑顔を見せる。
・・・なんだかイヤな気分。
でも。
おばあさんのお見舞いなら、花を摘んで花束を作ったらどうだい? って。
そう優しく教えてくれたの。
それは名案ね!
あたしは猟師さんの提案通り、寄り道をして籠いっぱいに花を摘んだ。
そして、また道を進む。
こうしておばあちゃんの家に到着したんだけど・・・家の中は薄暗くて、静かで。
・・・なんだかまた嫌な気分。
「おばあちゃん、おはよう。あかずきんよ」
けれども家からは何の返事も無いまま。
だからあたしは寝室に向かったの。
ベッドには顔まで深々と帽子をかぶったおばあちゃん。
ああ、良かった。おばあちゃんがいる。
でも帽子で顔が隠れて良く見えない。
「おばあちゃん、今日はお帽子がとても大きいわ」
「そうかね? 気のせいだよ赤ずきん」
おばあちゃんは返事をしてくれたけど、なんだか声がおかしい。
「おばあちゃん、とても手が大きいわ」
「お前の柔らかな体を愛撫して抱きしめられるようにだよ」
「だけど、おばあちゃん・・・お口がおそろしく大きいわ」
「それはね。お前の可愛らしい唇を塞いで、お前自身を・・・食えるようにだよ」
そう言うと帽子を取ったおばあちゃん・・・ううん、猟師さんはあたしに襲い掛かってきたの。
猟師さんは恐怖に震えるあたしの服をはぎ取りながらこう言ったわ。
赤いずきんを被った娘は「売り物」なんだって。
そして、森の道を通った目印のずきんを被った娘を・・・この家で「買える」んだって。
おばあちゃんがあたしに赤いずきんをくれたのは・・・「売り物」にするため?
だからあたしを愛してくれたの?
お母さんは、猟師さんにあたしを食べさせるつもりだったから森の中を歩かせたの?
だから目印の赤いずきんを被せたの?
――みんなあたしを・・・騙したの?
あたしの体をまさぐる猟師さんの毛むくじゃらの腕。
まるで獣の様な・・・ケモノ?
そうよ。
この人は・・・ううん、人じゃないわ。彼は猟師さんじゃない。
コレは――オオカミなのよ。
怖くて悪いケモノのオオカミ。
そう、悪いオオカミは・・・駆除しなきゃ!
あたしはベッドの隣に置かれていた猟銃を手に取る。
そして、荒い息を吐きながら、あたしの体に覆い被さるオオカミに向かって。
――引き金を引いた。
――ばぁんと、オオカミの頭に咲く赤い花。
ああ、まるで・・・赤いずきんの様ね。
銃声を聞いて、慌てた様に部屋に入ってきた老女。
狼を見ると悲鳴を上げ、あたしを罵ってきたわ。
――うるさいわね。あたしはもう騙されないわ。
あなたもおばあちゃんの名を騙る、悪いオオカミなんでしょ?
あたしは喚き散らす老いたメスのオオカミへ銃口を向け、ためらわず撃つ。
あはは、あなたも赤いずきんが似合うじゃない。
あたしほどじゃないけどね。
そして・・・二匹の血飛沫で赤く染められた寝室のベッドの上。
持ってきたケーキを食べ、ワインを飲みながらあたしは考えた。
お母さんが森の中を歩かせたのは、客にあたしを吟味させるつもりだった。
そして村人達のあたしへの笑顔は、あたしを淫売だとあざけ笑う嘲笑だった。
――許せない・・・絶対に。
あたしの体は怒りで震える。
・・・大丈夫。わかっているわ。
あなた達は全員、偽物。
あたしの大切な人を真似しているだけ。
みんなきっと、あのオオカミ達に食べられちゃったのね。
可哀そうに・・・あたしが仇を討ってあげる。
村にいる、お母さんの真似をしている薄汚いオオカミ。
そして村人になりすましている下品なオオカミ。
――こいつらを、全部退治しなきゃ。
あたしは返り血で真っ赤に染まったずきんを被り直す。
そして、猟銃を肩に担ぎ、軽やかな足取りで来た道を帰っていった。
――そして・・・可愛い赤ずきんに悪さをする狼はぜーんぶいなくなりました。
めでたし、めでたし。