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「そんなに泣くほど価値のある男かね?」
後ろから声がした。
振り向くと、プールの脱衣所の屋根に真宙が座ってこっちを見ていた。
「何で知ってんの?」
「噂って速いからね~。」
「ほっといてよ。」
「別に構ってるつもり無いけど…」
「じゃ、あっち行って!」
「俺の方が先にここにいたんですけど…。」
私は真宙を相手にするのを止めて、また自分の殻に閉じこもった。
その時、彼は予想もしなかったことを言った。
「坂井~、30になって、お前が誰とも結婚出来なかったら俺がしてやるよ。」
「え?」
「だから~、そん時は俺がもらってやるから心配すんなって!」
「何で? 何で真宙が? つか、あんた、私の事好きだったの?」




