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片付けが終わるころには二人ともそれぞれの部屋に戻っていた。私はマンションに戻って来たときに発見した夏子の部屋らしき部屋へ行き、部屋の奥のウォークインクローゼットに入った。さすがに下着は夏子の物を借りられないので、帰りに寄ったスーパーで何組か買ってきた。パジャマだけ取り出してお風呂へ行った。
さすがに高級マンションだけあって、お風呂もデカい! 憧れの天井からのシャワーまでついてる! そして入浴剤からシャンプー、リンス、ボディーシャンプーも、見ただけで普段私の使っている物より0が何個か多そうなお値段の品々がズラ~っと並んでいる! まるでドラマみたい! いいなー夏子!
優雅なバスタイムの後、フカフカの高級バスタオルに身を包んだ。違うっ、違いすぎるっ! 我が家のお風呂場においているような、〇〇町内会とか文字が入ったタオルとは違いすぎるっ! 私は夏子と自分の人生の格差に愕然とした。
風呂を上がってリビングへ行った。そしてソファに座って、これからの一番の難題について、どう立ち向かおうか考えた。とにかく落ち着くのだ。冷たい水を飲んで大きく深呼吸。さて、本題! 夏子の部屋に行った時、ベッドは一つだった。大きなクイーンサイズのベッドただ一つ。と、いう事は、尚之さんと一緒に寝るんだよね…? って、…当たり前か…夫婦なんだもん。でもっ! 無理無理無理…。いや、無理でしょ! 好きでも無い人と寝るなんて! しかも相手は同級生の旦那さんだよ! 不倫じゃん! ってか、そもそも私、尚之さんの事、全く好みじゃないし! もともと都会的なクールなタイプって苦手なのよ。表面的には愛想よくしていても、その表情の無さから裏では何考えてるのか全く読み取れない! 見下されてるんじゃないかって思っちゃうし、何よりあの冷たそうな目で見られると滅茶苦茶緊張する! あー無理だ! どうしよう…。
「夏子!」
そんなことを考えていたら尚之さんがやって来た。私の事を呼びに来たの…? どうなるかわからないバクチのような行動なんて出来るはずがない! ここは私からハッキリ言わなければっ!
「あ、あのっ! 夜は…どうされますか? そのっ…尚之さんは…お疲れでしょうから、ゆっくりベッドを独り占めして下さい! 私めはこのソファで寝かせていただきますので心配には及びませんっ!」
「…?」
尚之さんは眉間に皺を寄せて私を睨むように見た。まずい…
「何? 俺と一緒に寝たくないってこと?」
うわ、また私、尚之さんを怒らせちゃった? って、そもそもこの案件って、回避不可能って事? あ~、いったい何が正解なの~夏子~!
「おいで! いつものように二人で激しく愛し合おうよ!」
野獣~! 野獣ですっ、この人! さっきまであんなにクールでぶっきらぼうだったくせに、何この豹変ぶりっ!




