7
「とりあえず、名前教えてくれないかな?」
「…遥人。」
「遥人君か。…えっと…あなたは…」
「甥だよ。ママが尚之兄ちゃんの姉だよ。」
そっかー、甥っ子かぁ~。なんだ、心配して損した!
「中学生? 高校生?」
「…中一。」
「えーーーーー!」
「何でそんな驚くんだよ!」
「カッコよすぎ~! 中一でその完成度なの~? 信じられない! 世の中って不公平だよね~! 持てる者と持たざる者の差、有り過ぎでしょ!」
「何だよ、それ! ってか、俺、持てる者とかじゃないし。どっちかっていったら持たざる者の方だよ…。」
「え~! 君、そんなこと言ってたら、全国のモテない男子たちから反感買っちゃうよ~!」
「…マジウザ。」
「お腹空いてるでしょ? すぐ作るからテレビでも見て待ってて! 今日は時間も無いから大したのは出来ないから期待しないでね!」
「あんたが作るの? 俺に料理を…。」
「他に誰がいるの? ここにはインビジブルな誰かがいるってことですか~! って、そうだったら怖いじゃんっ!」
私が一人で盛り上がっていると、遥人君は頭を傾げながら呆れた様子でリビングのソファの所に行ってしまった。さあ、腕を振るいましょうか! 私はミートソーススパと簡単なサラダを作った。ミートソーススパが嫌いな男子はあまりいないから、きっと遥人君も食べてもらえるんじゃないかな…。
私はいつものように大輝好みのケチャップたっぷりな庶民的な甘めのソースを作った。いくら富裕層の子とはいえ、中高生の男子って、分かりやすい料理が好きだもんね…きっと…大丈夫でしょう…。食事の支度が済んで、リビングにいる遥人君を呼んだ。彼はテーブルの上を見ると、目を見開いて驚いていた。どうしたんだろ…。
この家庭はお金持ちみたいだから、もしかして私の料理があまりにもお粗末すぎたとか? 私は改めて部屋の中を見回した。家具はシンプルだけど、よくみたらどれも高価な外国の有名ブランドばかりだ。このテーブルだって大理石だし…。きっと、普段は世界三大珍味とか、ミシュランシェフ監修のディナーとか、そんなの食べてんのかな…。田舎の素人の手料理なんて、きっと今まで見たことも無いのかも…。そんなの張り切って出してしまった自分が恥ずかしくなってきた。
「食べていいの?」
「う、うん…。だけど…お口に合わないかもしれないだろうから…あ、そうだ! ウーバー頼もうか?」
「いいよ、これで。」
「そ、そう?」
遥人君は行儀よく「いただきます」と手を合わせると、無言で私の作った哀れなミートソーススパゲティを食べた。私は固唾を飲んでそれを見ていた。遥人君は何も言わない。お口に合ったのだろうか? いや、何も言わないという事は、きっと田舎くさい料理だと思っているのかもしれない…。うっかりいつもの感じで献立を決めたのが間違いだった!
そこに尚之さんが帰ってきた。




