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私だって好きでこんなとこ来てるんじゃないよ!
後ろから女の彼氏らしき男がやってきた。
上半身裸でスウェットのズボンだけ履いて、さっきまで寝てましたと言わんばかりに髪はぼさぼさ。
とりあえずかけた眼鏡は曲がっている。
「どちら様ですか?」
男は私に尋ねた。
尋ねられても何も答えられない。
来なければよかった…。
あ、そうだ!
部屋を間違えたことにして逃げよう!
我ながらいい案を思いついたと思ったその時、男は思いがけない事を言った。
「坂井?」
え?
何故?
確かに私の苗字は坂井だが、何故お前がそれを知っている?




