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今まで父から一度も聞かされたことの無い名前の自動車屋。


何故、自動車屋なんだろう…。


「ミャオ…。」


キャリーケースの中からルビーが心配そうに鳴いた。


「大丈夫よ、ルビー。パパがルビーの事頼むくらいなんだから、きっといい人に違いないよ。」


ルビーはじっと私を見た。


不破自動車…。


ここに何があるというの? 


考えてもしょうがないし、父との約束なので、言われた通りに寄り道せず真っすぐにその店に向かった。


私のイメージでは、車屋はたいてい幹線道路沿いにあるような気がしていたのだが、その店は大きな通りから入り込んだ、少し分かりにくい場所にあった。


こんなところで自動車屋をやって、お客さん来るのかな? 


私は店の駐車場に車を止めて中に入った。誰もいない。


「あのー、すみません…。」


「はーい。」


声をかけると奥の方から声が聞こえた。


そしてすぐに店のお兄さんが出てきた。


「いらっしゃいませ! すみません、ちょっと奥で作業していたもので。」


お兄さんは申し訳なさそうしていた。


「い、いえ、全然大丈夫です。」


「どうぞごゆっくり見て行って下さい。」


「あ、いや…車を見に来たわけでは無くて…その…父からここに来るように言われて…。」


「お父さん? お客様、お名前教えていただけますか?」


「設楽です。」


「…もしかして…設楽教授の…」


「娘です!」


「…そうでしたか…。教授は?」

「今朝、母とスイスに行きました。夕べ帰ったらいきなりスイスに行かなければならなくなったと言って…。私も一緒に来るように言われていたんですけど、大学もあるし…」


お兄さんは眉間に皺を寄せて少し考え込んでいた。


「あの、ちょっと中で話してもいいですか? それから出来たら車をガレージの方へ入れたいので、移動させてもらってもいいですか?」


「は、はい!」


私は車のキーをお兄さんに預けた。


彼は奥の部屋に私を連れて行き、店の入り口にはクローズドの看板を下げ、私の車をガレージに入れてシャッターを下ろしてから事務所に戻ってきた。


彼は私の為にコーヒーを淹れてくれた。


いい香りに緊張していた心が少し楽になった。




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