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姫君を横たわらせるとさっそく洗髪を始めた。


うちの美容院で使っている最高級のシャンプーだ。


本当はヒカちゃんの為に買ったのだ。


ごめんね、ヒカちゃん。


でもきっと彼女なら許してくれるはず! 


「しゃんぷぅというのは、いと心地よきものでございますなぁ。」


姫はうっとりとしていた。


これだけ長い髪だとその重みで頭皮も凝るだろうな…。


僕はヘッドスパ並みに心を込めてマッサージした。


とにかく長い髪なので、シャンプーするのは大変だった。


シャンプーが終わって、トリートメントに取り掛かった。


さすがうちの美容院で使っている最高級トリートメントだ! 


もつれて指通りが悪かった髪に指がスーっと通っていく! 


最後のすすぎが終わる頃には腰に鈍い痛みを感じていた。


さすがにこの体勢はきつい…。


久しぶりの重労働だ…。


姫君の頭にタオルを巻いて、とりあえず一息ついた。


そして車のエンジンをかけてドライヤーをつないだ。


「な、なんと! 地獄の窯から湧き出でる熱をば、風神の神通力にて竜巻を起こすが如し!ツクヨミの御使い様は風すらも操ることができるのでございますか! この神通力を持っていたせば、あっという間に姫の髪も渇きまするな! 」


…おおげさな(笑)。


女房さんが言うには、平安のやり方だと、髪を乾かすのに朝からやって晩までかかるんだって。


「おぉ…げに摩訶不思議なお力よ…。風神とて、つくよみの御使い様にはかなうまい!」


姫も驚きを隠せないでいる。


まあ、電気も無かったこの時代だ…僕が魔法使いか何かに見えるのも無理なかろう…。


髪が渇いてきたら、今度はストレートアイロンを使った。


「な、な、なんと! 姫の縮れた髪が、かように真っすぐになるとはっ!!!」


現代の文明の利器でございます…。


最後にヘアオイルを塗った。


姫君の髪は生まれ変わったように黒く艶やかに光り輝いた。


「こ、これが…わらわの…髪なのか? 何という事じゃ! …おおおおおお…おおおおおおおおおおぅぅぅ………。」


姫は自分の髪を手に取ると、感動に打ち震えて泣き出した。


よかった。喜んでもらえて。


その時、女房が血相を変えてやってきた。


「姫様! 大変でございます! 若君が、今宵参られるそうでございます!」


「なんと!」


姫君も女房もわなわなと青ざめた。


例の貴族の若君、今晩来るのか…。


よし! 


俺も男だ! 


現代の美容師の意地を見せてやるぞ!



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