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行商エルフ(仮題)シリーズ

行商エルフ(仮題)6

作者: まい

ちょっと独特な空気を漂わせる小さな町でも、のんびりマイペースなエルフさん。

「???……“いし”がどうしたんですか?」


「らんだむてんいとらっぷ?」


「*いしのなかにいる*?」


「「「ひぇっ!!」」」


「長い棒?」


「「「へぇ~」」」



「近くの森に、そんな薬草が」


「薬草と共生する魔物……」


「安心しな、先生!俺が守ってやるから!そしてウチに来て一緒に寝ろ!!」


「なに言ってんだ?先生は500歳……下手すりゃ600歳近いBBAだぞ?そんなのを嫁にするって正気か」


「あんなデカイおっ○い、揉まなきゃ損だろ!」


「……アンタ達!(小声)」


「んァ?」「はァ?」


「「………………(ガタガタガチガチガクガクブルブル)」」




 …………はい、先生は今怒っています。静かになるまで6分。どれだけ待たせてくれたのでしょうかね?(コメカミピクピク)



 ここはとある町。町ひとつ村ひとつを寄り親(後ろ盾になっている上位貴族)から預かっている、男爵様の町です。


 ここの男爵様は住人からの評判が良く、誠実な運営をされています。


 その町で、少し行商人として商売をしていたのですが、男爵様から私の見識の広さを見込まれて、町の子供達へ開いている寺子屋的教育施設で1日限りの講師を頼まれた流れです。


 テーマは自由と言われたので、子供の幻想(英雄願望)を壊しながら、商人視点で見た町で生きて行く方法やこの地を富ませるヒント等をちりばめて、講義としてみました。


 ……結果はご存じの通り、エロガキやク○ガキに場を引っ掻き回されて、オモチャになっただけですね。あいつらの未来なんぞ知りません。下手な英雄願望を抱いたままこの町を飛び出し、世間の荒波にのまれてヒトの道から外れても、知った事ではないのです。



 特別講師の仕事も終わり、次はどうしようかと主要道をブラブラ。


 依頼主への報告ですか?それは明日のおやつ時で良いと言われています。そして今の時間もおやつ時。つまり、まる1日フリーなのです。


 今から露店は遅すぎて、宿は確保済み。やるべき事が無くて暇潰しに何をするか、ピンと来ないのですよ。


 それなので、この辺で一般的な肉である、ヘビ肉の串焼きを片手にほっつき歩いています。


 森には無毒の蛇が、よくウネウネしているそうで。チョコチョコ家庭の食卓にのぼりますから、気後れしていたらこの町でお肉は食べられません。


 200年は前に私がヘビ酒をここから広めましてね?魔力を込めたお酒だとより効果が増すとかで、とても珍重されていまして、町の名産品として財政を潤わせているそうです。



 …………だからでしょうかね?町の広場の植え込み。

 さっきからガサガサと言っているんですよ。(エルフ)を含めた耳の良い種族は、思いっきり聞き取ってまして……その。顔を赤くして、そっちを見ないよう足早に通り過ぎるのが多数。


 あっ、獣人カップル。男の方が彼女さんに殴られた。アッチを見ちゃ駄目ですってば。


 気付いていない種族は、広場の露店や屋台でのんびり物色したり通りすぎたり。


 ……さて、私も物色しますかね?オペラグラスや望遠鏡みたいなのは、置いてありませんか?まあ【無限収納】に入っていますから、それを出せば良いだけですけど。



 来てしまった衛兵さんと、大声で説教されて良い恥さらしになってしまっている方々は放っておいて、気になるものを数点買ってしまいました。


 ひとつ目はヘビ酒。男爵様へのお土産ですね。地元産なら手にはいるから、お土産にならないと思いますよね?

 でも実はこれで完成形ではないのです。これに、この辺では出ない魔物のとある素材を粉にして混ぜます。すると2倍3倍の効能が発揮されて、とんでもないお酒になるのです。

 これを教えてあげれば、もっと増益が見込めるかもしれませんね。


 ふたつ目は謎の古文書として売られていた、()()()の日記帳。中身をパラパラとめくってみましたが、随分赤裸々な内容で、これを世に放つのは駄目だと収納して封印する事にしました。


 みっつ目は直球。呪われたハートのペンダント。

 身に付けると羞恥心が薄れる、大変危険なペンダント。危険ですが、使い方次第なんです。

 潔癖過ぎたり身持ちが堅すぎたりする方に付けてあげると、程よくなるのですよ。ええ。


 ……冗談でも、恥さらしになった方々に使っては駄目ですよ?若気の至りなんて言葉では済まなくなって、人生が終わってしまいかねませんから。



 この後も町の変化を眺めながらブラブラし続けて、気付けば夕暮れ。今晩の宿“もみじの木陰”へ帰りましょうか。




 いくら蛇のお肉が沢山獲れるからって、朝食にも出されるとは思いませんでした。

 しかも山椒をふった蒲焼き丼。完全にうな丼を食べさせられている気分で、余計な勘繰りばかりで頭がグルグルしてしまいました。


 ……そしてこの体が妙にポカポカしているのは、プラシーボ効果でしょうかね?そうだと言って下さいお願いします!


 状態異常回復の魔法を使ってみる?…………効果がありましたね。

 と言うことは……いえ、考えるのは止めましょう、そうしましょう。



 なんて葛藤しながら宿を出ると、目の前には男爵様の馬車。


 予定変更で、今から来られないかと打診されました。



 向かった男爵家は、かなり慎ましいお屋敷。町の中では一番良い家、ではありますが。


 そこで使用人一同から歓待を受けました。




「これは村でとれた野菜を乾燥させて作りました。甘味もあって、中々美味しくできました」


「これは町の商人が扱っている最高級のお茶です。取り寄せるのに苦労致しました」


「いかがでしょうか、この町は」


「この町はもっと良くなると信じていますが、いかんせんそのための知識や先立つものが……」


「旦那様が伴侶を見つけて下されば、もっとやる気になって頂けると思うのですが……」




 あれあれ、雲行きが怪しいですね?


 使用人達が出してくるお茶やお菓子。これを【詳細解析】でチェックすると、微量ながらヒトの判断能力を奪う効果付き。

 この町特産の、特別な粉ですね、これ。


 この程度なら耐性がありますので、そのまま飲食しても問題なし。


 最初は世間話から始まったのに、いつの間にか町の経済やら発展やらのお堅い話になって、行き着くところは男爵様への愚痴ですか?


 ……いえいえ、なにがしたいか。して欲しいのかは解ってます。似たパターンは何度もやられていますから。


 でもこれは随分懐かしいですね。およそ70年振りとなるでしょうか、私の一番苦手なやつ。



 このままお昼までずるずると駄弁り、お昼を頂いたら再びおやつ時まで男爵様の苦労話を延々と。


 …………これ、悪意がないから大変なんですよ。分かっているんですよ?聞いていたらキリがないと。分かっているんですよ、その意図も。


 たっぷりと男爵様への同情を誘い、やって来ました御大(おんたい)




「大変お待たせ致しました」


「……え?ワタクシが朝から『行商神……宰相』様を呼んだ?滅相もございません」


「そうですか、使用人達を叱っておきます」


「ところで昨日の特別講師の内容ですが」


「それでですね」


「素晴らしい」


「有難うございます。我が町を想い、思案して頂けるなど」


「どうですか?我が伴侶に。貴女様ならばどこからも文句は出ないでしょう」




 はい来ました、コレですよコレ。


 使用人は、男爵様の望みを叶えようと()()()()で私を嵌めて、

 男爵様は男爵様で、所領の未来の為になにかしたくて、こうする。


 私は“誠意には誠意で返す”事を善しとするヒトですが、こんな誠意なんていりません。


 こんな押し付けの誠意は迷惑以外の何物でもないのです。


 ないのですが、どんな断りかたをしてもこじれます。


 ならば受け入れるか?それは絶対に有り得ません。私の夫はただひとり。


 ではどうするか?一択です。私にはコレしかありません。


 ()()を込めて断る返事()()()




「は?貴族になれるのだぞ?貴女にも益がある話ではないか!」


「誠意には誠意で返す話は、嘘だったのか?」


「ではなぜ()けられぬ!」


「そんな屁理屈など!!」


「……っ!そのメダルはっ!?」


「すみませんでしたぁ!頭に血が昇りすぎて、おかしくなっておりましたぁ!!」




 やはりこうなりました。これもいつものパターンです。

 誠意・善意の暴走。自分がこうするなら、相手はこうしてくれるはず。


 その考えに囚われて、自分の望んだ展開から逸れると、裏切られた!と憤慨してしまう悲しさ。



 なので最終手段。この国の王家が後ろ盾に居るよ、と示すメダルですね。コレを提示すれば、その国で大抵のわがままなら通ります。

 ……わがままはしないよう、戒めていますが。


 これで一件落着。私はあの効果が増したヘビ酒を土産として置き、撤退と決め込みました。



 そして撤退しながら、

 あんたらの誠意なんざ受け取りませんよーだ。


 あんなのが真の誠意だとヌかすなら、誠意は寺子屋モドキのエロガキどもの言葉と同列になっちゃうっつーの。


 だからか?だからあんな町の目立つところでイタす(バカ)者が涌くんだよ!


 もう少し夜関係以外の特産品を作れよ!なんかこの町の空気はピンクいんだよ!ヘンにムズムズするんだよ!


 じゃあなんで、ヘビ酒の強化を提案したか……ですか?


 この町の周囲は、アレに関する物っぽい素材しか無いんだよちくしょう!この辺で獲れない物を混ぜたのは、せめてもの抵抗なんだよ!


 と、かぶったはずの猫が、しばらく仕事を完全放棄してしまいました。

~あの広場にて


「あの美人で(一部分が)デカいエルフのお姉さん、グイグイいくなぁ」


「……?どうしたの?」


「人間族のお前じゃあ分からないか」


「なんなのよ、早く教えなさいよ」


「あっち見てみ?」


「……植え込みの動きが、ほかの所より激しいわね」


「ナニやってるかは、想像つくだろ?」


「……(顔真っ赤で頷く)」


「俺達聴覚の優れた種族なら、絶対に聞き取れる距離。それを知らずにヤってるなら、人間族カップルかもな」


「……(顔真っ赤で相手を殴る)」


「痛っ!だからな?耳の良い奴等は、大体恥ずかしくてこの場を去るんだよ。興味のある奴は顔を真っ赤にして、耳に意識を集中しているやつばかり」


「……(周りをグルリと見渡して)なるほど」


「なのにあのエルフ、顔色を変えずに、じわじわ露店や屋台を冷やかしながら、さりげなく近寄っていく」


「やり手ね?」


「なにをヤっているのかは分からんがな」


「時々、本当に買っている所が巧妙」


「……ん?」


「どうしたの?」


「衛兵が走ってきてる」


「エルフさんは……とても残念そうな顔をしているわね」


「相当な好き者かもな」


「衛兵さんが植え込みに呼び掛け始めたし、ワタシ達はデートに戻りましょ?」


「……仕事に必要な道具の買い出しが、いつデートになったんだ?」


「はぁ(ため息)」


「おい、どうした?なんでそこでため息なんだ?」

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