表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/8

2

誤字脱字は通常運転のはずです。

多くのブックマークありがとうございます。

何故だ。視界に入るものが男だけの空間は。それも見目麗しいと言われる分類の男しかいない。

もしも、ここが夜会だとしたらご令嬢方の視線を集めただろう。

残念なことにここは私に宛がわれた執務室だ。溜息しか漏れない。

1時間前に突然、エリック殿下がジョナスを連れ執務室に入室してきた。シェリア嬢の一件以来、ここに殿下が滞在するのが常になっているため、あまり気にしないようにしている。気にしたら最後。きっと、殿下は嬉しそうにその理由を語るだろう。「暇」というひとことと「謹慎」について。

休学した理由は、学園の風紀を乱したためと王太子としての再教育と謹慎が表向きの理由になっている。ジョナスはそんな殿下を止められなかったということで同じく謹慎処分を言い渡されている。

学園の風紀が乱れたかといえば、そんなこともなくシェリア嬢の計画はあまりにも杜撰(ずさん)すぎて思想の浸透にはほど遠かった。()()()()()()()()に目をつけていたことが問題だったのだろう。彼らは貴族特有の特権階級の意識が強い。「平等」「自由」という言葉に眉を顰めたくなった者が多くいると聞く。そもそもシェリア嬢は、そんな彼らからすれば遊び相手にはいいが、結婚したいと思えるような女性ではなかった。常に殿下の周りにいたためか、そんな彼女に手を出そうと考える輩もいなかったのが、今回の件の一番の救いだろう。

これが、爵位が低い者や次男や裕福な平民だったら話は違ったはずだが、彼女は彼らに目をつけるこもとしなかった。自分達よりも地位と権力がある者以外には興味がなかったようだ。それが、彼女たちの敗因に違いない。

目を通していた書類を置き、仕方がないから目の前の人物と向き合う。



「殿下、ここは私の執務室ですよ。なぜ、ここにジョナス同伴で居座っているのですか。仕事の邪魔なので謹慎でもしていてください」



恨めしくエリック殿下を見れば、涼しそうな顔をしている。側に控えているジョナスは苦笑気味だが。

ヴィアンカ様との婚約解消(仮)を無効にするために殿下の協力は仰いだ。

だが、ジョナスを巻き込んでいいとはひとことも言っていない。これも殿下の単独行動のせいであったのだから、殿下ひとりが私に誠意をみせるべき問題なのに。



「何を言っているんだ。お前が協力しろと言うから、わざわざジョナスを連れてきたんだぞ。感謝こそされても、文句を言われる筋合いはないからな」


「殿下、ライオネルの気持ちを察してください。私にヴィアンカ殿下に婚約解消を言い渡されたなど、恥ずかしくて言えるわけもないでしょう。ヴィアンカ殿下に近づく男共に牽制するのにも関わらず、自身は遠目からみるだけ。そんな情けない男が私に知られたいとは思わないでしょう」


「だからこそ面白いと思わないのか。ヴィアンカはこんなライオネルのことを慕っていたのにも関わらず、一時の感情であのような暴挙に出てしまったことを悔いている。王女として失格だと。そして、落ち込むあまり部屋から殆ど出てこない。面会できる者も限られているからな。もちろん私は面会できない」



そうだろう。と言いかけて止めた。

ジョナスは、シェリア嬢の件では殿下の名誉回復のために動き回っていたので婚約解消(仮)騒動の場面には出くわしていない。それでも、知っているということは殿下が口を滑らせた以外にない。

あの場にいた侍女や護衛にはきつく箝口令が敷かれているからだ。そもそも、王宮勤務のもので王族の名誉に関わる事項を外部に漏らすことは重罪とされているために、そのようなことをする者がいないのはわかりきっている。



「ライオネルのこともだけれど、殿下の名誉回復についてもきっちり話し合わなくてはいけないんだからな。そもそも、今回の件で、殿下の婚約者候補も絞れたからいいけれど、残ったのがジャクリーン公爵家とフェバリッジ公爵家、ハリンストン侯爵家とアルフマン侯爵家の4家だけ。それで、名誉回復のためにこの4家の何れかのご令嬢とのラブロマンスを繰り広げてもらいたいのですけど」



15家あった候補から4家にまで候補を絞れたのはよかった。

だが、ラブロマンスとは。最近、貴族の子女の中で恋愛小説が流行っているのは知っている。

それを殿下に適応するのは如何だろうか。

そういえば、ハロルドを通じて聞いた話ではヴィアンカ様が恋愛小説をティエラ嬢に勧めていたと。



「ラブロマンスか…。ご婦人やご令嬢方からの受けはいいだろうな。だが、中央政権の運営を行うのは男だから、どうしたものか」


「殿下の身から出た錆です。いままでも、失言のフォローはしきれませんでしたけれど、今回は特に色恋にうつつを抜かした王子と言われておりますからね」


「記憶障害を患っていたということでジョナスが対処していたが、無理だろうな」



記憶障害とは何とも苦しい言い訳を考えたものだ。

シェリア嬢に対応していたときですら、夜会は開催され殿下は参加されていた。

それに、1番近い夜会でフェンリル伯爵──ジョナスの父に対して「今日のカツラも素敵ですね」と爽やかな笑みで言い放ちその場を一瞬で凍らせた。フェンリル伯爵のカツラについては触れてはいけないというのが暗黙の了解だったというのに。ジョナスは笑いを堪えるのに必死だった。

また、殿下に挨拶に来たリシュリア侯爵夫人に対しても「若い燕を飼われたようですね」などと、愛人のことを本人に言う始末だ。

頭がいたかった。そして、皆その失言という名のひとことがいつ自分達に向くかと怯えているのだ。

そう考えると無理だろう。



「無理でしょう。社交界は常に醜聞にまみれておりますので、1年もすれば忘れられるのではないでしょうか?それとも、私の話を公にでもしますか?殿下のせいで、ヴィアンカ様に婚約解消を言いつけられたと?」


「ライオネル、少しムキになりすぎ。落ち着いて」



ジョナスは笑っているが、もしもこれが自身に降りかかった問題だったら、笑っていることなどできなかっただろう。

それくらい、今回の件はあまりよろしくない。



「それにしても、シェリア嬢を国外退去にしてよかったのでしょうか?突然、商家一家が消えたならば多くの憶測を生むことになるでしょう。その対策は如何なさっているのですか?」


「それなら、隣国に渡るにはある街道を使わなければならないのはわかっているな。最近、あの街道では賊が出るという噂でな。それも、酷いことに出会ったら最後、皆殺しにされるらしい。あくまで、これは噂だ。もし、そこで隣国にある奥方の実家に療養のために一家揃って向かっていた者達が消えてしまってたら、とても痛ましい事件だと思われるだろう。それに、()()()()()()()くらい必要だろう」



ああ、殿下。あなたという人は。もともと、国外退去でなんて済ませる気はなかったのですね。

痛ましい事件として、この件については口外するなと。

政治思想犯の末路としては、あまりにも刑が軽いと思っていたら、そんなシナリオを用意していたのですね。

優雅に紅茶を楽しんでいる殿下から紡がれる言葉には、毒が含まれている。

思想弾圧などすれば、王家の権威に関わる問題なるだろう。だが、そこは見なかったことにすると。

殿下に視線を向けていれば

「まあ、そんなことよりも話を戻すとヴィアンカのことだ」と、ここを訪れた目的に戻ることになった。



「殿下もはやく婚約者決めてくださいよ」


「わかっているが、ライオネルとヴィアンカが式を挙げるまでは結婚はいい」


「だから、婚約者だって言ってるでしょう」



ジョナスと殿下が言い合っているのを見ると、ハロルドとティエラ嬢のことを思い出してしまう。

微笑ましいと思うと、自然と笑みが溢れる。

殿下とジョナスが目を見開いているがみえる。

「久しぶりにお前が笑ったところをみた」と言われたので、少し不機嫌に「誰のせいですか」と拗ねるしかない。

部屋には笑い声が響く。

久しぶりに笑うと気持ちがいいものだな。

最近は、あまりにも苛立ちと悲しみが襲ってくるものだったから。

何かを思い出したかのように、ジョナスが叫ぶ。

「そうだ!百夜(ももよ)通いだ」

百夜通いとは?と殿下と私が顔を見合せていると、説明してくれる。

ジョナスの親戚には 東の島国出身の者を娶った者がいるらしく、その者から聞いた話らしい。



「想いを寄せる女性に、求婚した際に誠意があるなら百夜通えるでしょ?そうしたら、結婚してあげるっていった内容だったんだ。それをライオネルがヴィアンカ殿下に誠意をみせて通いとおしてみれば、ヴィアンカ殿下もきっとライオネルのことも見直すよ」


「待て、百夜ってことは夜だよな?夜はダメだ。昼にしろ」


「えええ、殿下はわかってないですね。夜ってところロマンチックなんじゃないですか」


「お前のロマンチック思考はどうにかならないのか」


「私もヴィアンカ様の元に夜向かうのは気が引けます」



うんうん、と頷く殿下をみていると、ここで夜に行くなどと言っていたら、殺気を出していたに違いない。

この方も本当に妹離れしたほうがいい。



「で、やるの?やらないの?」


「100日ヴィアンカ様の元に通うことはするが、ただ通うだけでは駄目な気がする。やはり、あの方に似合う薔薇を贈ろうかと。薔薇の花言葉と共に私の気持ちを知っていただきたい」


「一番、お前がロマンチストじゃないか」



殿下が何か叫んだようだが聞こえない。というか、聞く気がない。

薔薇の花言葉は本数によって意味合いが違うと母が言っていたな。

帰宅し、早速相談しなくてはな。

執務室から退出しようとすれば、おもいっきり肩を捕まれ「いますぐ、向かえ」と殿下に言われたが、まず薔薇がない。

薔薇がなければ意味がないではないか。



「殿下、今すぐに薔薇園で紅薔薇を一本用意してください。そうしたら、向かいます」



何故、俺がという顔をするので、無理矢理口元だけあげてみれば、渋々といった形で薔薇園に向かう。

それが面白かったのかジョナスが笑いを堪えきれず、噴き出している。

うるさいので執務室から追い出し、扉が閉まったのを確認し引き出しに入れてあるメッセージーカードを取り出す。

久しぶりにあの方へ書くな。



───ヴィアンカ様



あなたの元に今から参りますから、お待ちください。

深草少将と小野小町ネタをいれてみました。


5/7 日間ランキング 17位ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ