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支離滅裂な覚悟はしています。

誤字脱字多いと思いますが、今回もよろしくお願いします。


(いと)しすぎてどう接していいか悩みに悩んでいた婚約者であるヴィアンカ様から先日婚約解消の旨を伝えられた。

あのときは絶望した。

何故、婚約解消など軽々しく口にしたのか。

何故、姫にシェリア嬢との関係を誤解されたのか。

何故、あのときシェリア嬢が姫との婚約解消を望むようなこと言ったのか。

何故、私のことを信頼してくれないのか。

いろいろな何故が湧きあがって来る。

最後に触ることすら出来ずにいた姫から伝わった私に対する一途な想いを知り得たことに歓喜したが、それでも先に伝えられた言葉が忘れられずに心に重くのしかかった。あのとき、行動すればよかったのだ。

「あなたは私だけのものだ」と声に出せばよかった。そうしたら、何か変わっていたのかもしれない。いまになっては、どうしようもないことだが。

言い訳にしかならないが、あのときティエラ嬢が薄らと笑みを浮かべていた。あれは、昔から私と好みが被ることが多く姫を私同様に気に入っている。あれが一枚噛んでいるということか。情けない。身内同然とも思えた女性から嗾しかけられたと思うと。

それでも、私は婚約者としての役割はきちんと果たしていたはずだ。


贈り物は毎月、姫の月誕生日に贈り、月に2回は会いに行くようにしていた。


昔、菓子や絵本、ぬいぐるみといった物を贈っていたら母と姉に叱られたことがある。姉の「ヴィアンカ王女もひとりの淑女なのだから、あなたの趣味だけを贈るものでない。まして、あの年頃は大人びたいのです」という言葉を真に受け髪飾りや宝石を贈るようになると、それに見合うだけ美しく可憐に成長された。また、会うたびに姫は満面の笑みを浮かべながら感謝を伝えてくれる。その笑顔が可愛過ぎて、口角筋が緩むのを必死に抑えていたのは、年上の男がだらしない顔など出来ないという自尊心もあってのこと。いまなら、そんな我慢などしなければよかったのではないだろうかとさえ考える。

二度と姫から本当の笑顔を向けられる事がないのなら。きっと、社交的な笑みは向けられる。それでも、本心からの笑顔を独占したいと思うのは私のエゴに過ぎない。

ただ、役割を果たしていたというのも私の独りよがりだったのかもしれない。

姫が不信を募らせてしまった自身の不甲斐ない行いのせいだ。


ああ、考えただけであの出来事は汚点だ。むしろ、エリック殿下のために学園に赴いていたことさえ忌々しい。

陛下から直々に「息子の学園生活のサポートを頼む」と言われ断れる臣下がいようか。後輩にあたるエリック殿下は勉学の面では素晴らしいが()()()()においては失言しかしない。そのフォローをしろとは。そもそもエリック殿下が()()で失言しかしないのはいまに始まったことではない。殆どの伯爵家以上の貴族は知っているのに何故だ。

私ではなく、同学年に在籍する弟のハロルドや同じく側近のジョナスでもよかっただろう。まあ、ハロルドは殿下のことをあまりよくは知らないので無理だとは思うが。

陛下の耳にも懇意にしている女性がいるというのが入ったらしく、何が「歳上からの助言なら聞く耳を持つだろう」だ。

だが、殿下の色恋については完全に職務範囲外と言ってもいいだろうか?

殿下が授業を受けている間は学園の事務作業に駆り出され、王宮の急な呼び出しや殿下の公務の手伝いなどは職務だとわかる。色恋だけは自身の問題でもある。

国王になる自覚があるにも関わらず、周囲の言葉には耳を傾けない。それどころか、シェリア嬢に入れ込む始末だ。

ティエラ嬢以外の候補者は学園に通う身内より殿下の行動について報告されていたらしく、相次ぐ辞退者が多く出される始末だ。

その振る舞いがどれだけ自身に影響するのかわかっているのならいいが。



学園内を歩いていれば、親しくしていたわけでもないのにシェリア嬢にいきなり名を呼ばれる。エリック殿下の側に仕えている時間にだけしか接することもなかった。そのため、お互い認識しているくらいと軽く考えていたのだが、ヴィアンカ様以外の女性から呼び捨てにされるのには不快感しかない。ただでさえ、姫にも呼び捨てにされたことさえないのに。


理由を問えば「エリック様の友人は私の友人です」という幼稚なものだった。


その言葉に衝撃を受け、窘めても直すこともしない姿勢には呆れかえった。

殿下は殿下で「シェリアのやりたいようにすればいい」と。

他にも彼女は突然、昼を用意してきたと言いながらエリック殿下の横にいる私の腕に巻き付きながら上目遣いで「ライオネルも一緒にね」と強請られる。その上目遣いに引き攣りながらも社交用の仮面を繕う。紳士的な笑みを浮かべている自分が周りからどう評価されているかなど知りもしなかった。それでも、エリック殿下がこれ以上評判を落とさなくていいならと思い諦めたことが多数。

社交的な笑みが彼女の勘違いを助長していると、あとからジョナスに言われたために婚約者がいることを伝えれば「まだ結婚していないのに婚約者縛られるなんて可哀想」と意味のわからないことを捲し立てていた。半分以上を聞き流しながら、貴族同士の婚約についての意味を考えられないのかと思えば嘆かわしい。彼女の実家は裕福な商家のため彼女の親は爵位に目を付けたのだろう。

()()()()()()()()()()()()()()色目を使う浅ましい姿は低俗な娼婦そのものだ。

また、目をつけられた者たちは立場を弁えている者が多かったためか、あまり相手にもされていなかった。

高位貴族の子女が通うことのない学園では彼女は、女性の前では王女のように振舞い男性の前では健気で純粋な女性を演じる。まるで、舞台をみているような錯覚に陥ることもあった。彼女にとって学園は自身をさらなる高みに押し上げるための踏み台にしかならないのだろう。親の願いも彼女の願いも、あまりにも欲にまみれている。

王太子と懇意にしていれば貴族との繋がりができる。そして、彼女の考えに触れ触発された者たちが「平等」「自由」を主張するのだろう。

だからと言って、今回ヴィアンカ様に対してもあのように「婚約なんて言葉で縛らないでください」と暴言を許せと言われたら許せるはずもない。



ああ、殿下どうしてくれるんですかね?今回の責任は。




****




割り当てられた執務室で今回の騒動に関する始末書の提出を宰相に急かされている。宰相である父も今回の件に関してはご立腹だ。

エリック殿下の独断が混乱を招いたのだから。あのあと、早急に彼女には王宮より出て行ってもらったので問題はないはずだ。あとは、エリック殿下が何かしらフォローしただろうから。

それにしても、勝手にシェリア嬢を王宮内に手引きした者は誰だ。

内部に彼女の信奉者でもいるのだろうか。

殿下ではないことだけは願いたい。頭が痛い。

それにしても、ヴィアンカ様の涙を堪えている姿が瞼に焼き付いて消えることがない。なんて、可愛らしい姿だったのだろう。

だけれど、婚約解消とはやはり困る。あの愛らしい方を私以外の誰かが手にするのは。

ペンを滑らすのを止め、どうすれば姫の考えを改めて頂けるかを考える。

そのとき、控えめなノック音が聞こえる。

すぐに「忙しいからあとにしてくれ」と入室を拒んでみるが、音の主は人の話など聞いていないか部屋に勝手に入室してくる。

入室してきた相手が、いま頭を悩ませているシェリア嬢だとは。

苛立ちを隠すかのように、アルカイックスマイルを浮かべれば「ライオネル、よかったわね。あなた婚約者のことなんてどうでもよかったのでしょ?きっと、煩わしく思っていたはずよね?私、あなたのことを救ってあげたかったのよ。だから、これからもヴィアンカ様に悩まずに私たちと仲良く出来るわね」と、興奮しているのか頬を赤らめている。その姿に不快感しかない。

無理に作った仮面が剥がれ落ちそうなくらいに馬鹿馬鹿しい。

もう殿下のお守りとして、学園に行くとはないだろうからいいか。

これで少しは殿下も大人しくなるだろう。厄介事はもういい。



「…シェリア嬢、あなたはただの学生だったから、いままでの振る舞いを許容していました。ですが、今回は王宮で騒ぎを起こした。その意味がわかりますか?ヴィアンカ様に対して何故あのようなことなさったのですか。それに、私はこの部屋への入室を許可していません」


「学生だから…?何を言っているの?ライオネルも学生でしょ?許可って…どうして必要なの?ライオネルと私は友人でしょ。それに、あなた婚約者とはうまくいっていないと噂で聞いたのよ。だから、私はあなたのことを思って。あなたこそ意味のわからないことを言わないで」


「はぁ…あなたは、私が思っていた以上に救いようのない方だ。まず、私は学生ではなく殿下の側近として学園に居ただけだ。そして、あなたとは友人になったつもりはない。また、ここは職場であり私に与えられた執務室だ。その意味がわからないほど愚かではないだろう。

うまくいってないだと?そもそも私の婚約者がヴィアンカ様であるのは周知されているはずだ。デビュタントもまだの方をエスコートすることが叶わないことと、王族である方を簡単にどこかへ連れていくなど出来るはずがないだろう。何故、わからない。君の身勝手な言動がヴィアンカ様を傷付け誤解を与えたのだ。その責任は何で支払うつもりだ」



そこまで言い切れば、もう関わってくることはないだろう。

それでも、ズカズカと部屋の中に入り込み私の目の前まで来る。

「私はあなたを愛しているの」とでも言いたそうな視線が迷惑極まりない。

何故、涙を浮かべながらも媚びた瞳をするのだろう。君は王太子妃になりたくて殿下に近づいたのだろう。そして、この国にその思想を布教するために。



「失礼する」勢いよく開く扉から、渦中の人物であるエリック殿下が近衛騎士を引き連れてやってくる。今日は思わぬ来客が多いな。

殿下の訪れに彼女は驚きを隠せないようだ。まるで、不貞を夫に暴かれた妻だな。今度は縋るような瞳をするものだから、うんざりする。

エリック殿下に視線だけ向ければ、毅然とした態度で「シェリア・リボルト嬢、貴殿には王宮への不法侵入及び国家転覆を企てた罪を持って、リボルト家の国外退去を命じる。学園で貴族に言いより、『自由・友愛・平等』を説く姿は目に余るものだったよ。これは、王命であるため撤回はないと思え」と、この度の騒動に終止符を打ってくれた。

彼女は殿下の引き連れて来た近衛騎士に捕えられ、「何故なの、エリック様。ライオネル。嘘よね、嘘って言って」騒ぎ出した彼女に連行する騎士の顔が歪む。

癇癪を起こす子供のようだな。静かに扉が閉まるのを待てば、エリック殿下が当然のように椅子に腰かける。

やっと落ち着けると思ったのに、どういうことだ。



「これで、ようやく問題が片付いたな」


「ええ、本当ですよ。もう道化を演じることもなくなりましたね。これで、婚約者さえ決まれば問題もありません」



そう、やっと問題は片付いたのだ。

シェリア・リボルト嬢――彼女の家は裕福な商家である。家族構成も父と母、兄ひとりという普通の家族にみえたが、実情は隣国の政治思想を我が国に普及させる為の工作員だった。

それを直接陛下と殿下から聞いたのが半年前。もっと、はやくから相談されていれば対策もとれたというのに。殿下が本当にバカになられたのかと思い悩んだこともあった。あの悩んだ日々を返していただきたい。

そのため、皮肉を込めるが大目に見てもらいたい。



「それは…当分いいかな。それよりも、妹との婚約解消についてだが、申し訳ないとは思っている。だが、ライオネルが婚約してから何年経ったと思っている。それほどまでに距離が近づいてないとは思ってもいなかったぞ」


「あなたが、それを言いますか!姫から誘われたお茶会の参加を何度も妨害していたくせに。それと、姫に会わせないようにしていたことも知っています。妹溺愛もいいですが、程々にしないと嫌われますよ」


「今回の件で、愚兄と思われているだろう。ティエラ嬢を姉のように慕っているからな」



にやけながら話題をヴィアンカ様と私の婚約解消にすり替えてくるあたり性格が悪い。

散々、人の邪魔をしておきながら心配されても困る。

「此方は了承しない旨を既に伝えてあります。そのため、信頼の回復をはかるため殿下にはお力添えしていただきますよ」

告げるだけ告げれば、満更でもないようで「お前と義兄弟になるのを楽しみにしている」と言われてしまえば、頑張るしかない。

どうやら私は殿下に甘いらしいな。



───では、殿下早速計画を練りましょうか。


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