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オンボロ橋と逆さ虹

「この森から出ていったのを見ていない以上、狼がこの中の誰かに化けているのは確かだよ」

 赤ずきんは、森の動物たちをグルリと見回しながら、はっきりと断言しました。

「ねえ、赤ずきんさん。どうしたら、狼だと分かるんでしょうね?このままじゃ、お互いに疑いあって、安心できませんよ」

 困り果てながら、クマが言いました。

「そうだ!根っこ広場に行ってみよう!」

 急に、そう提案したのは、知恵者のリスです。

「それだ!根っこ広場だ!」

「♪根っこ広場がいいわ〜」

「シューシュー!」

 動物たちが、いっせいに賛成しました。

「根っこ広場って?」

 と、赤ずきんが尋ねます。

「根っこ広場で嘘をつくと、根っこに捕まってしまうんズラ」

 キツネが説明しました。

「なら、そこに行こう!」

 元気に、赤ずきんも話に乗ったのでした。

 こうして、一同は、この森の端にある根っこ広場の方へと向かったのです。さて、今度こそ、本当に、狼を見つける事ができるのでしょうか。

 根っこ広場へ行くには、この森の西の方へと移動しなくてはいけません。しかし、この森は、中央に大きな川が流れていたのでした。その川を渡らないと、根っこ広場のある西の土地には行けないのです。

 かろうじて、川の上には、一本の木の橋がかかっていました。ところが、その橋は、もうだいぶガタがきていたようで、あちこちに穴が空き、グラグラと揺れ、ボロボロになっていたのでした。もし、うっかり、橋から落ちでもしたら、川の濁流に飲み込まれてしまった事でしょう。

 でも、怖いもの知らずの赤ずきんは、少しも物怖じせず、ピョンピョンと、この橋を渡ってしまったのでした。

 続いて、小柄なリスも、スルスルと橋を通過してしまいます。

 コマドリのお姉さんは、空を飛んで、川を越えました。

 勝気なアライグマも、臆せずに、オンボロ橋を堂々と渡ってみせます。

 ヘビは、欄干に巻きついて、上手に、危なげなく、橋を通過しました。

 こうして、あとは大柄なクマとキツネだけが残ったのでした。

「おおい。あんたたちも早く渡りなよ!」

 赤ずきんが、反対側の岸から、クマとキツネに呼びかけました。

 でも、臆病なクマは、どうも、橋を渡る事を躊躇ためらっているみたいなのです。

「クマどん、早く行くズラ」

 と、呑気なキツネも、クマの心情を察せずに、隣から、けしかけます。

「わ、分かりましたよぉ」

 そう言って、クマも、ようやく、橋に足を乗せたのでした。だけど、なかなか先に進みません。

 大きなクマが乗ると、橋はよけいに激しく揺れてしまい、橋の途中にまでたどり着いた段階で、怖くて、クマは立ちすくんでしまったのであります。

「もう!何やってるのさ」

 イライラしてきた赤ずきんが、小声でヤジりました。

 そこで、リスがまたピンと閃いたのです。

「おおい!キツネくん、大変だあ!後ろから狼が現われたぞ!早く、逃げないとぉ!橋を渡って、こちらに来ないと、食べられちゃうぞお!」

 突然、リスは、そう大声で怒鳴ったのでした。

 これには、のんびり屋のキツネもビックリです。キツネは、悲鳴をあげると、後ろも見ないで、急いで、自分もオンボロ橋へと駆け上がったのでした。前の方では、まだクマが立ち止まっていて、道をふさいでいます。しかし、慌てたキツネは、夢中で走ったものだから、クマのお尻にドスンとぶつかってしまったのでした。

 今度は、クマがビックリする番です。振り向かなかったクマは、自分に衝突したのは、てっきり、狼だと思い込んでしまいました。

 大慌てのクマは、急にエンジンがかかって、一目散に橋を渡り終えてしまったのでした。その後を追って、キツネも橋を通過します。

 冷や汗をかいているクマとキツネの二匹は、ようやく、橋の方を振り返ったのですが、どこにも狼の姿は見当たりませんでした。

「ひどいなあ。リスどん、だましたズラな?」

 キツネが、泣きそうな顔で、リスを睨みました。

「ごめん、ごめん。でも、おかげで、早く橋を渡れたじゃないか」

 そう言って、リスはケタケタと笑いながら、謝ったのでした。

 こうして、一同は無事に川を渡りきり、根っこ広場むけて、再び歩き出したのです。

 途中で、一行は、巨大な虹のそばを通過しました。虹の中央が地面にくっついていて、その両はしは空高くへと伸びていて、先が見えないのです。これこそが、この森の名前の由来となっている逆さ虹なのでした。

「あれは?」

 逆さ虹を目にして、赤ずきんが興味深げに口にしました。

「逆さ虹だよ。もう大昔から、あの状態で、この森にかかっているんだ」

 リスが説明します。

「あの虹を渡ったら、どこへ行けるの?」

 と、さらに赤ずきんが聞きました。

「そんな事、考えたら、いけないズラ。あの虹の向こうは恐ろしい場所に繋がってるズラ」

 慌てて、口を挟んだのはキツネです。

「♪そうよ、そうよ〜。とっても恐ろしい世界よ〜」

「シューシュー」

「動物と人間が話をできない世界らしいぜ」

「動物たちも、仲良くせずに、殺し合っているそうですよ」

「赤ずきんくん。とてもじゃないけど、行くべき所じゃないよ」

 他の動物たちも、口々にそう言い合うのでした。

 よって、赤ずきんも、怪訝そうな表情を浮かべたまま、虹の前を通り過ぎたのです。

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