リアルがサブになったとき(1)
SFじゃないです。たぶん。。。
さて21世紀もたけなわ。
今世紀最大の偉業とはなんだろう。最高の発明とはなんだろう。
きっとみんな笑顔で口を揃えて言うだろう。
「NEFSに違いない」・・と。
今日も僕は、その21世紀最高の発明のお世話になっていた。
NEFSの意味とは、にゅーふぁいぶせんす...なんだったか。
このバイザー型のマシンのほうにも、VRマシンとか全感覚投入機とか感覚意識相転移式伝達装置とか、ややこしい名前はいくらかついていたけど。
要は意識と五感を持ち込める電脳世界が『NEFS』。
持ち込む為のマシンがNEFSギアであり、こと仮想世界の中においてはどんな事でも実現できるし、仮に現実世界の月に用事があるのなら、NEFSを経由して月の観光用の機械人形にでも意識を飛ばすだけ。
NEFSとは文字通りのなんでもマシン。なんでも世界なのだ。
これによって人類のすべてが変わった。
月に行きたい?なら行けばいい。
仕事も学業も趣味も競技も、全ては仮想世界の中で完結する。
現代の一般的な家庭はリビングで朝食をとった後は、それぞれ寝室でNEFSギアへと繋がるのだ。
いや、その光景もまだ随分健康的なほうで、本格的な依存者は食事・排泄・洗浄などをNEFSギアに繋がったままドールや専門の機械で済ませてしまう。
前後して高齢化社会による介護技術の発展もあり、自身が動かずとも生活する為の補助というのはさして難しい事ではなくなっていた。
むしろ身体が不自由な者などでも思考制御さえできれば仮想世界内や遠隔人形で自由に動き回れるのだ。
歩くのもままならない風体の老人が、戯れに孫と短距離走で競い合い、終いには老人のほうが勝利してしまう。
こんな事を実際にやろうものなら息切れでは済まず、下手をすれば老人の息が止まってしまうのだが、意識だけで成り立つNEFS内では大した事でもない。
さて。そんな世界で今流行りの職業がある。
まだ社会的にNEFSが普及していなかった頃、それでもNEFSギアが発表された直後から、早く導入へと動いた業界。
電子娯楽産業は数ある産業の中で今や不動の地位を手にしていた。
そしてネットゲームにおける個人のランキングも今やただの廃人度の指標などではなく、トップランカーであるプロゲーマー達はまるで過去のスポーツ競技の世界ランキング上位者のように、人々から憧れと賞賛と、あと結構な額の賞金をほしいままにできる、皆が目標としする職業となっているのだ。
そしてそのプロゲーマーにただ一人。様々なジャンルにおいて圧倒的1位を誇示するゲーマーが居た。
「ヤツが昨日新しいゲーム登録してた。今日見たら世界1位だった。」
「ヤツを目にしたMOBキャラがAIなのにガクガク震えて土下座してた。」
「ヤツがログインした、つまりはこっちの負け。」
「ヤツの攻撃を食らったらNEFSギアが粉々に弾け飛んだ。」
「ヤツは敵と遭遇しない、敵は自ら報酬に変化して落ちてる。」
「ヤツがログインしない日はラスボスが本当に嬉しそうな笑顔になる。」
「ヤツが怒ると、サーバーが落ちる。ついでに運営も命を落とす。」
...最早、賞賛なのか狂言であるのか区別の難しいそれらの伝説は、かつて1位を目指し挑んだ他のプレイヤー達が味わった理不尽に対しての率直な感想であった。
その圧倒的な伝説とプレイングはあまりにも現実離れしていたせいか、
戦績を見ても真実だと思いたくない者や、実力差を理屈では理解しつつも、運良く勝てれば俺も有名になれるのではと、欲に目がくらませて挑む者は後を絶たず、新たに返り討ちにあった者がまた新たな伝説を流布していくのである。
そんなヤツがあるゲームにハマったという噂は瞬く間に世間へと流れた。
ある者は頂点へと挑む為に、ある者は野次馬根性でそのゲームに登録する。
そのタイトルはクィヴァリ・ヒーロー・オンライン。
職業勇者呼ばれる事になるVRMMOである。




