7話
ラインハルトを従えた夜、俺は部屋で踏ん張っていた。
理由は数分前に遡る。
[今日は、魔法の練習はしないのですか? え、しない? こういうのは反復が大切だというのに……まったく、そんなんじゃ先が思いやられますね。前世はニートだったのですか?]
なんでニートなんて単語知ってんだよ。つかめっちゃ傷ついたわ。
[ならコツを教えてくれよ]
[コツも何も……魔法は感覚的なところがありますからね。
前回心臓付近の動脈をイメージしたなら今回は毛細血管をイメージしたらどうです?]
現在に戻る。魔法はちゃんと使えてる。とても小規模で。ま、そろそろ良いかと思っていたところ、またもやピコリンとシュティの音が聞こえた。
[本には載っていなかった重大な事があるのですが。裏技というやつです」
ふむ、なるほど? 是非教えてくれ!
[無駄口を叩く暇があったらどんどん魔力を使いなさい。
魔法を構成するのは魔力だけされていますが、精神というのも必要になってきます。魂などではなく、単に集中力といったところでしょうか。これを鍛えて下さい、と言いたいのですが、これはある意味クリアしてます]
うん?
……あ! シュティだな。シュティのおかげか。
[その通りです。私はいわばもう一つの思考、頭脳です。集中力なんてものも二つが同時に成り立っていると考えてください。イザークが部屋を破壊した時に何故あれほどの威力が出たと思いますか? 使用した魔法に使った分の魔力をそのまま利用出来たからです]
なるほどな。魔法は魔力を使うが、使った分がそのまま反映させる訳ではなくて、減っているのか。
[平均的に、魔法は使った魔力の半分ほどの力だと考えればいいです。復習ですが、魔素が本来変換される魔力は半分くらいです。皆、魔力を限界まで使ってこなかったからかと]
んんん?
今ヤバイ事を聞いた気がするぞ。魔素を魔力に変換するゲートで1/2、その魔力で発動する魔法が1/2って事か。
つまり魔法とは1の魔素に対して発動される魔法は1/4か。鍛えれば一般人の四倍の質の魔法が使える事になる。
さらに総魔力量も増える。それが約1.5倍。計6倍の魔法を使う事が出来る? 小さな島の一つや二つくらい壊せるか……?
「ようし! これから毎日気絶するまで修行だ!」
[ちなみに
魔法を使える大多数が貴族なので、気絶するまで使う事が少ないので、一般的に魔法の腕は横に並ぶのです。
ああ、それと伸びるのは十一歳までです]
俺はちびちびと出していた所為で夜深くまで魔法を使い続けた。
翌朝、セバスチャンとラインハルトを連れて少し遠出する。幾つかの農地を見に行くためだ。農業は食べる為に必要不可欠だ。そこを強化出来れば、今の状況もマシになると思う。昨日その事について聞いたら、シュティも同意してくれた。
「おぉ、流石はイザーク様! 自ら足を運ぶとは」
「私はまだ仕事が少し残っているのですが……」
「長くは拘束しない。昼までには終わる予定だ」
さて、野郎三人で遠足に出発だいっ! 出来る事なら見たくないが、視察しない事には手の内ようがない。
街を出て目的地の一つ目に到着した。テンプレっちゃテンプレだが、途中魔物が襲ってきた。それらをラインハルトがぶっ殺した。ぶっ殺した。大切な事だから二回言いました。いやなに、結構グロいんだ……
一人で全ての魔物を倒しきっていた。巨大豚人間のオークなんかもいたようだが難なく処理していた。
「こ、これはこれは! 私共何かいたしましたでしょうか」
村長の家を訪ねたら、バイヤー家の者だと瞬時に判断されてしまった。まぁ普通に、白を基調とした良い服を着て、騎士を侍らせ、執事がいたらそう思うよな。
ちなみに、面積の半分以上が白の布の着用は貴族にしか認められていない。いくら金を持っている商人などでも白が半分いや、3割も白が使われていない布しか着用していない。まぁそれでも半分ギリギリまでのを着ける奴もいるが。
それがこの王国のルールだ。白とは貴族を象徴する色なのだ。
「いえ、こちらの都合でございます。農地を見せてもらえますか? イザーク様が気になっているそうで」
「そうでしたか、ではこちらへ。案内いたします」
案内といってもすぐそこだった。見たところ収穫時期が近いのか野菜の身が付いていたの、だが……
[あちゃ〜、これはまずいですね]
「おい、ここは毎年同じ物を同じ畑で栽培しているのか?」
「え、えぇ。何年かするとすぐにダメになってしまいまして、そこに家を建てて近くの土地を耕します」
やはりな、どおりで小ぶりだと思っていたんだ。たしか、連作障害だっけか。
「なるほどな。参考になった、礼を言う」
まだ一つ目の村だったが他を回る必要な無さそうだ。さっそく帰ってレポートを作るか。
どうも!