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6話

 

 どこの世界でもお勉強は必須のようです。と思った今日この頃。僕は今屋敷でお勉強中でございます。僕に付いている家庭教師の性別は女性、お姉さんタイプです。美人ですね。まったく、こんなお姉さんを雇う金もったいないです。


[その方はイザーク様が選んだのですが……]


 おぅ、イザーク君よぉ。たしかに美人だと思うが君とは趣味が反対のようだ。っと、そこ! ロリコンとか言わない!


「はい、それじゃ今日はまず前回の確認テストからしましょうか」


 そう言って差し出して来たのは中学生レベルの数学だ。この歳でこのレベルは難しいと思ったけど、正直言って俺にしてみれば簡単すぎる。ここでわざと少し間違えた方が良いのかと迷ったが、素直に解いてみることにした。


[上から1、47、51/97、7/9、1219、9、0、-1、-17です]


 解こうと思った時、答えを知らされた。なんだかやるせない気持ちになった。ま、シュティが居ればこれからずっとこんな感じだろうと、俺はその通りの解答を書いた。

 書いてから、お姉さんの顔を見て失敗したなと思った。

 回答する時間が短すぎた。紙を見て、シュティの声を聞いて速攻で答えたからなぁ。


「え、え、え? あ、合ってるかな?」


 お姉さんが確認の為に問題を解く。その時間十五分! この世界は学問が遅れてるのかな。


[失敗したようですねイザーク、書くのが早すぎです]


 しっとるわ!! くっ、ペースを持って行かれる。


「合っているだろう? わざわざ目の前で解き直すとは俺を馬鹿にしているのか?」


「いっ、いえ! 申し訳ありません! イザーク様は6歳ですよね、天才ですかっ! 」


[天才って言われました、うれしいです]


 シュティ、お前絶対そんな事思ってないだろ。しかも褒められたの俺だからな? なんだか、だんだん人間味が出てきたと思う。


「このくらい普通だろ」


 お姉さんは首をぶんぶんと横にふる。


「貴族でもこんなに早く解ける方はいらっしゃいませんよ! それこそ学者クラスです」


 ふむ、数学はこれ以上学ぶ事は意味が無さそうだな。せっかく異世界なのだから、数学はやめよう。どうせなら異世界にしかないようなーー


「おいお前、名前はなんという?」


「はい? ……リサですけど」


「出掛けるぞ支度しろ」


 異世界について教えて貰うとしますか! 俺は初めてこの屋敷から出た。




「イザーク様、実力不足であるかとおもいますがこのラインハルト、お供させてください」


 イザークパーティは三人になった。屋敷を出た時、女子供だけではと、騎士の一人が護衛について来た。


[ラインハルトはこの領地一の腕の持ち主です。安心してよろしいかと]


 この一言で安心したよ。シュティの意見は正しい。外の状況を知る方法は俺を通してなので、完全に信頼する事は出来ないのだが……シュティは信じるが自分は信じないようにする。


「ふむ、仕方ない、ついて来い」


「ありがとうございます」


 俺は知っている。この家に忠誠を尽くしている者がいない事に。だからラインハルトも仕方なくついて来るのだと。それも契約内容の一つか。



 ○



 この世界には魔物がいる。そのため、ほとんどの大きな街には壁が存在する。大きな街には基本的に辺り一帯を治める領主がいる。バイヤー家も例外にならずに街の中に屋敷があった。

 賑わっている場所から少し離れた所だ。これには理由があり、少しでも危険から遠ざけるためだ。

 つまり、屋敷からメインストリートとの距離は近い。大通りは人が集まる、という事は必然的によからぬ輩も多くなる。

 どっ、と薄汚い格好の男とぶつかった。幸い倒れこむ事は無かったが。


「す、すいやせん」


 一言謝っていそいそと遠ざかろうとする。だが、騎士ラインハルトが男を組み伏せる。うわ、手際良っ!


[なるほど……]


「ラインハルト、放してやれ」


「は!」


 ラインハルトは何故? と、不思議そうな顔をしている。蹲っている男に近づき懐から、俺の物である金貨や銀貨の入った袋を取り上げる。


「ひぃっ、すいやせん! すいやせん!」


「ふむ、この街を治めている貴族から金を盗むか……」


 袋から金貨を一枚取り出して男に投げた。リサとラインハルト、そして男の全員が唖然とする。


「どうした? 拾わないのか?

 俺に、此処を治める領主の息子に盗みを働くなんて中々出来たものじゃない。その勇気に敬意を払いその金貨を贈るよ。悪いが全部はあげられないがな。

 あぁ、それと明日辺り宣伝しておいてやるから。バイヤー家の息子に盗みを働いた英雄、金貨を獲得すって感じでどうだ?」


 しゃがんで男と目線を合わせ、笑いながら促す。今俺は意外とイラついている。道端で人にぶつかられるとなんかイラッとこないだろうか? あ、もちろん金も大事だが。


[あなたも人が悪いですね]


「ひっ、すいやせん!」


 男は金貨を拾わずに走って行ってしまった。すぐに見えなくなった。


「イザーク様、どういうおつもりで?」


 ラインハルトが問いかけてくる。探られている気がするが……


「何が言いたい」


「何故金貨をーー」


「簡単だ、チャンスだ。本来俺のような貴族にあんなことをすれば極刑は免れない。その辺の奴らとは違うからな。つまり、死を覚悟で犯行に及んだんだろ? そこまでしなきゃ生きて行けない環境が出来てしまっているんだ。もちろんタダで助けてやるつもりもないが」


 そう、街にいるという事は辺境の民とは少し違う。いくばくかは裕福だ。街の住人があそこまで追い詰められてるということは。考えたくもないな。


「なるほど……そのようなお深い考えがあったとは」


「そうだ。金貨1枚あれば人生を変えられるチャンスはあったはずだ。それを棒にふった。あの男はこのようでは一生あのままだ」





「あーこれとこれ、あとこれを貰おう」


 街を巡り、食料品を買い込む。だいたいこんなもんかな?


[それだけあれば足りるかと]


 ラインハルトに全ての荷物を持たせてとある場所に向かう。


「イザーク様、何処へ向かっておられるのですか?」


「裏路地だ」


 配給のようなものをおこなう。まぁこれは本来の目的ではない。話を聞く事が目的なのだ。手ぶらでは寂しいから、炊き出しをするのだ。




 ラインハルトには止められたが実行に移した。食事を配り、一人一人に話をしに回る。やはりほとんどが苦しいと言っていた。中には襲って来る者もいて、ラインハルトが斬ろうとした事もあったが、逃がした。

 もちろん全ての民を幸せにする事は出来ない。だがこれも解決出来たら良いな、と思った。帰り道、


「俺はな、今のような現状が悪い事だと考えている。この現状を変えたい。貴族と平民、まるで人と家畜程の格差がある。俺は本来あるべき関係を築きたい。だが俺一人ではどうしようもない。幸いお前は信頼に値するようだ。協力してくれるか?」


「このラインハルト感服いたしました。私はイザークに忠誠を誓います」


 ラインハルトが地面に膝を付き、頭を下げる。


「父上よりも俺の命令に従うという事か?」


 念を押すように質問する。これが一番大事な事だからだ。


「その通りでございます」


 ラインハルトは即答した。


[テッテッテー、騎士ラインハルトが仲間になった]

どうも!

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