5話
魔法の修行と、この世界の知識を詰め込む作業を開始してから3日が経とうとしている。知識は頭に蓄積されていくが、魔法がどうにも上手くいかないので少し放置気味だ。
まず魔法の使い方が分からないのだ。魔法とは感覚的なものに左右される。魔法を習得するには人に教えて貰わなければならない。そのため、本では魔法に関する知識はあっても、使い方が分からない。
[人から人へ、それが魔法が生き残ってきた手段である、ということですか]
[その通りだなシュティ]
だから難航しているのだ。魔法の家庭教師でもいればな……まぁ無い物ねだりしてもしょうがないな。
基本的に魔法は貴族にしか使えない。それは血が関係しているらしい。だがマジックというものが存在し、これは平民でも使う事が出来る。マジックとは、魔法の下位互換として認識出来る。ライトと呼ばれる明かりを点けるものや、魔素を活性化させ身体強化をしたりする事が出来る。つまり平民には、魔素を魔力に変えるゲートになんらかの不具合があるようなものだ。
「貴族でよかった……平民とか人生バッドエンド待った無し」
魔法はシュティの言う通り極めておいて損がないから、いや、良いことしかない。先ほどシュティに魔法をサボり気味なのを怒られ、チャレンジする事にした。のだがーー
まったく分からん。魔素をゲートに通すってのがよく分からない。イメージが出来ないんだな。コツが分からないとも言う。そんな時、俺に助言をくださる偉大なお方がいた。
[心臓に注目してみてはどうですか? 血管が関係あるならそこが注目点だと思うのですが。動脈に門を置き、そこを通過した血液が魔力に変換させるというようイメージしたらどうでしょう]
なるほど! つか、考え方に人間味がありすぎて怖い笑。
よし、やってみよう。
「ふんっ!」
物凄く大きな音を聞いた瞬間に壁が吹っ飛び、太陽と顔を合わせた。やっちまったと思うと同時に、身体中の力が抜けて視界が真っ暗になる。慌てて部屋に入ってくる使用人が気絶する前に見た最後の光景だった。
○
結果からいうと、さっそく魔法が使えた。それも強力な。原因は2つだとシュティは言った。
まず、発動した魔法が中級魔法だった事。中級魔法というのは魔法が得意な者が使う事の出来る魔法だ。貴族全体で見てみると、およそ半分ほどが戦闘で中級魔法を使うことができる。
もうひとつは、魔力を使い過ぎたという事である。イメージが端的過ぎた。心臓付近の動脈から云々のイメージをしたせいか、魔素のほとんどを使ってしまったらしい。
部屋の壁をぶっ壊した事により両親には怒られたが、これだけ強力な魔法をこの歳で使えるなんて凄いと、それ以上に褒められた。
「ふぅ、なんか疲れたな」
そう、今俺に疲労感が襲い掛かってきている。魔素の大量消費、魔素が減ると身体が重くなりどこか長い距離を歩いてきたような重く暗い疲労感を感じる。
[どうよ? 良い感じか?]
[えぇ、1日に一度はこのように魔力を使い切っていくといいでしょう]
よし、まずは基礎の基礎からだ。やってみたいことはたくさんあるのだが、まずは土台を作る事に専念しよう。
……やばい、寝る前にもう一度魔力を使い切ってみようとおもったのだが使った結果、脱力感がやばい。自慰行為を限界までぶっとうしでやり続けた後みたいだ。
その日はすぐに眠りにつけた。次の日、思いっきり寝坊した。
どうも!
え、少ないって? えぇ、少し忙しいのです!