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4話

 

 本の内容は俺にとって非常に興味深かった。魔法を発動するには魔力を使用する。身体の中の血管、そこを血液などと一緒に魔素というものが流れている。その魔素はゲートを通して魔力に変換される。ゲートについては細かい事は何も分かっていないらしい。ただ、そういう機関があるはずだという事は分かっている。ゲートは身体のいたるところにあるとされ、魔素と同じ様に血管を流れているとも考察されている。


「ふむ……これはこれは」


 俺が考えるに、飛び抜けて強い奴はいないんじゃないか、という結論に至った。魔素が血管の中を流れているのなら、血液中の魔素濃度のようなものも上限があるはずだ。よって、とてつもない魔力量を秘めている、なんて事はないはずだ。

 あるとすれば魔素から魔力に変換する際の効率だ。一の魔素が一の魔力になるなんて事はないだろう。どこかでかならず漏れが生じる。これをどれだけ減らせるかが鍵だ。

 それと、もう一つ重要なのが限られた魔力の中でどれだけ完成度の高い魔法を使うかという点だ。同じ魔法でも様々だ。大きさや威力、発動までの時間、初速、速さ、連射生、他にも色々と思いつくがこんな所だろう。


[……魔法って意外とシビアなんですね]


[ええ、そうみたいですね。ですが、今その事に気付いたのなら特訓すれば良い話でしょう]


 はい? ……っは、そうか! 筋肉とかと同じで鍛えれば伸びるのか。もしそうじゃなかったら30歳の人の総魔力量と、1歳児の総魔力が変わらないって事になるしな。


[なるほどなぁ]


[あぁ、もちろん総魔力量というものも増えます。鍛えればだいたい常人の1.5倍くらいには増やせるでしょう。

 が、問題はそこではなく、変換効率の事ですよ? だいたいの人は魔素から魔力に変換される場合、本来の半分ほどしか出来ていません。半分ほどの魔素が無駄なエネルギーになって霧散してしまっているといえます。魔力から魔法までの流れは、不思議とほとんどの人が本来の力を引き出せています]


 ほう、つまり鍛えれば総魔力量の1.5倍に変換効率の2倍、全体で考えれば常人の3倍の質の魔法が使える事になる。

 例えば喧嘩をするとして、相手の3倍の筋肉があれば勝てる可能性の方が高い。つまり、すげー強くなる。もちろん俺一人でのTUEEEEは期待出来ないが、他の人より上手ければ問題ないだろう。


[さっそく始めてみたらどうでしょう]


[そうだな、そうするか]


 さっさと部屋に戻って魔法の特訓をする。が、魔法なんて今さっき初めて知った俺が何か出来るわけでも無く時間が無駄に過ぎていった。たしか父上に書庫の鍵を返した時に魔法について聞いたんだが、10歳になる時に普通は魔法の家庭教師を雇うようだ。

 そうやって膝を抱えていると、ノックの音が響いた。


「失礼しますイザーク様、セバスチャンです。開けてもよろしいでしょうか?」


 セバスチャンとはバイヤー家の執事だ。しかしこんな時間に訪ねてくるなんてどうしたんだ?


「入れ」


「夜遅くに申し訳御座いません。私、どうしてもイザーク様にお礼を申し上げたかったのです」


 ガチャリと部屋に入ってきての第一声がこれである。っとっとっと、危うく流す所だったけどお礼ってなんだよ。


「何のことだ」


「メイドのセフィールの事でございます。イザーク様がお見逃しになられたとか……」


 ふぅむ、なるほどなぁ。つまりセバスチャンはあのメイドを気にかけていると。うん? つまりどんな関係か掴めないな……


「何故お前があのメイドの事を気にかけている」


 少し間を置いてセバスチャンが答える。


「セフィールは私の娘なのです……」


 ほぅ娘か……って、えええ! おいおい全く似てないじゃないか。


「ほぅ? 悪いが俺の感覚だと似ているようには見えないが?」


 セバスチャンが目を伏せる。だいたいこういう場合は言いたくない事なのだろう。


「彼女は今は亡きとある貴族の家の者でございます。家が潰れた事により、匿うように私がひろったのです。あぁ、ひろったというのは文字通りひろったのです」


[どう思うよシュティ]


 [ひろったですか……おそらく彼女を邪魔に思う何者かが刺客を送ったのでしょう。逃げてきた所をたまたまセバスチャンがひろったと、彼の頼みで此処で雇わせてもらっている。まぁこんなところでしょうか]


 シュティも今知った風だったしな。セフィールの扱いを見てもその辺のメイドと同じように感じられた。つまり、父上はこの事を知らない? これは利用出来そうだな。


「父上や母上はこの事を知らないのか?」


「その通りでございます。この家の中ではイザーク様に話したのが初めてです」


 この家の中では……? まぁ今は置いておこう。ここで最後に、やらなければならない事がある。

 ふむ……と呟いたあとに言葉を続ける。


「俺は今の状況を良しとしない。最近になりたびたび思うのだ。貴族とは何かと。考えた結果、公に動けば父上や母上と敵対してしまう事になるだろう。今それはまずい、よって俺は部下を欲している。幸いお前は優秀だ。俺に仕える気はないか」


「それは! いえ、しかし……私はすでにイザーク様に仕えておりますが?」


「いいや違うな。お前が仕えているのは俺ではなくバイヤー伯爵家だ。すなわち父上という事になる 」


「なるほど、たしかにそうでございます。イザーク様がここまで聡明なお方なのでしたか。

 ええ、分かりました。イザーク様に忠誠を誓いましょう」


 初めての部下を手に入れた。まだまだ初めの一歩すら踏み出せていないが、確実に準備は整い始めている。初めの一歩を踏み出す時は、このバイヤー領を自由に動かせるようになった時だ。

 つまりは父上と母上の排除、そこに収束する。もちろん二人がいなくなっても、領地を回せるように家臣の確保が先だが。

どうも!

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