2話
うわっまぶしい! ここは……? 転生したという事でいいのか?
「イザーク! 大丈夫か?」
目が覚めて最初に耳に入って来たのは、少し野太い声だった。声からしておじいちゃんや、少年という事はないだろう。
「イザークちゃん、どこか痛い所はないかしら」
次に発言したのは女性だ。あいにく前世では女性とあまり関わってこなかったが、声で女性だという事は分かった。
だんだんと目が慣れてくる。すると目の前に二人の男女がいた。おそらく、さっきの声の主はこの二人だろう。だがいまいち関係がよく分からないな。他人というわけでもなさそうだが。つかむちゃくちゃ身長でかいな。
[親子関係にあります。貴方はイザークという名前をこの二人に名付けられました。それと、貴方が二人を呼ぶときには、父さん、母さんと言えばいいでしょう]
ぅ、なんか頭の中に声がーー少女っぽい声だと思うんだが、無機質な感じが……まぁ、良い、とにかく従ってみるか。
「あぁ、大丈夫だよ父さん、母さん」
それよりも、この声は何だ?
[あぁ、伝えていませんでしたね。私に何か伝えたいときは意識して頭の中で話すようにすれば出来るかと]
その通りにしてみる。
[こ、こうか?]
[上出来です]
ふと気付いたんだが、後頭部が柔らかい。視線を落とすと、胸の辺りに手が回されているのを知った。びっくりして振り返るとメイドがいた。水色の髪に水色の瞳だ。
それで分かったんだが、俺が小さくなっている! 若返ったのか?
「イザーク様? どうかなさいましたか?」
デュフフ……っといかんいかん。それにしても綺麗な人だな。
[こーゆー女性がタイプなんですか?]
[ノーコメントで]
「食事中に突然倒れるんだから心配したぞ? って本当に大丈夫か? クリスの風邪が移ったんじゃないか?」
「うん、そうかも……部屋でもう休むね」
俺は今何も知らない。いつボロが出るか分からないので早めに退場する事にした。
「ちゃんと寝るんだぞ」
俺を抱いていたメイドが一緒に来ると思ったんだが、散らかった片付けをする事になった。くそ、道がわからねぇじゃないか。必殺、具合が悪いから部屋までおんぶ作戦が!
[私が知っていますよ]
[流石俺のメシア!]
なんだが話しづらいと思っていたが原因が分かった。こいつの事をなんて呼べばいいか分からなかったのだ。
[名前は?]
[ありません。そのように設計されていませんので]
名前、ないのか……
よっし、それじゃなんか考えたろか! そもそも声しか聞いた事ないよな。なら声から派生するとして……ドイツ語のシュティンメだろ、抜き出してシュティなんてどうだろうか?
[じゃあシュティなんてどうだ? 元いた世界の言葉で声という意味なんだが]
[シュティ……良いですね、気に入りました。ありがとうございます]
[それとさ、もう少し軽い感じで頼む。なんか距離がある感じがしてな……]
[分かったよむっつりすけべ豚野郎]
こ、こいつ! なかなかやりおる。
[いや、それは無しで]
[分かりました。では少しづつ変えていきたいと思います]
っと、ここか。俺の自室と思わしき前まできた。部屋に入りベッドに倒れ込む。
まずは情報の整理だ。おそらく俺の身体は5.6歳くらいだと考えられる。保育園に通うくらいだ。そこでシュティがこの屋敷の構造を知っているとなると、多分イザークが産まれた時から目覚めている。よってシュティに聞くのが早い。
[なぁシュティ、俺ってイザークなんだよな?
必要と思われる情報を教えてくれ]
[分かりました。私はあるお方に創造され、貴方に尽くすようにと仰せつかりました。必要と思われる知識を少々持っています。それと賢いです。
貴方は現在6歳です。それ以前にも貴方とは別のイザーク様がいた事になります。分かりやすく言えば乗っ取りですね]
そんな……それなら俺が目覚めるまでは本物のイザーク君がいた事になるのか。これが俺の初めの殺人って事になるのか……
イザーク君本当にすまない。
[まぁ気にする必要もないです。元々そうやって消える運命だったのです。管理者が決めた事ですから。悪いのは貴方ではなく、管理者です]
シュティは管理者の事を知っている? この世の真理を知っている? まさか、チートをくれたのは管理者じゃなくて神なのか?
気にしても仕方ないか……俺はこの事については何も出来ないのだから。それならこの人生楽しむに限る。ゆったりとしたい事をする。平和にスローライフといったところか。
よし、決めたぞ。俺がスローライフを送るためにこの世界に住む人々を幸せにしよう。意識の改革をしよう。争いを無くそう。
そうなれば俺も幸せに平和にスローライフを楽しめるはずだ。そう、そのはずだ。まずは世界が一体とならなければ……
[貴方がどう考えようと私は貴方に尽くすだけですが……自分を大切にした方がいいですよ]
狂人目覚める。
どうも!