15話
この少年、なかなかにセンスがある。まず俺たちに付いて来てるが、俺たちの服や、馬車を観察していた。情報を得えているのだろう。自発的にそんな事が出来ているのはプラスポイントだ。後に仕事を振り分ける時でも参考になる。
「ラインハルト勝負だ」
この集落を出発するまで少し時間がある。予定では昼を済ませてからだ。それまで何をするかというとラインハルトに特訓をしてもらう。実際はラインハルトも御者をしてれば身体が鈍ると思った、というのが一番の理由だ。
「では木刀でよろしいですか?」
「いや、これから先の戦いでは剣は主役ではなくなる。接近戦闘は棒が基本となるだろう」
「……はい? それはどういうーー」
そう、これからの戦争から剣は消え去る。いや、もっと正確にいうなれば俺が消す。主役は銃に取り変わる。銃は強いが、地球の歴史上で銃が誕生したばかりの頃は銃は主役とはなりえなかったのだ。それは火薬の問題であったりライフリングの問題であったり、接近されたら? という問題があった。だが、それだけでも解決したら?
だからこそ棒なのだ。銃身を長めに取りライフリング施す。その先端に刃を付ける。いわゆる銃剣だ。そして火薬の問題だが、これは容器につめて、その容器詰めればいい。平民でも着火くらいなら出来るのだ。もちろん不安定だが、火薬に火をつける事くらいなら少し訓練すれば出来るだろう。はい、これで銃が主役の戦争が出来上がり。もちろん、槍兵はもちろんの事、盾兵を用いる事によってまず突破されないであろう。
そのような事を説明した。
「な……剣が戦場から消えると。つまり私たち騎士や、熟練の傭兵がそこら辺の雑色と変わらなくなると……?」
ラインハルトは騎士だ。それ相応の努力をしてきたのだろう。それこそ小さな頃から血の滲むような努力をだ。銃はそれを嘲笑うかのように無視する。重装兵の鎧も容易に撃ち抜けるだけの力がある。
騎士の側からすると、これほど騎士を侮辱する武器はないだろう。それでも、それが戦争というものだ。
と、話が逸れてきたがようはラインハルトの身体を鈍らせない事、そして俺の体力作りをしようって事だ。
「おいジャン、よく見ておけ。その内お前もやる事になるんだ。俺は手本にはならないだろうがラインハルトは強いぞ?」
ちなみにジャンとはこの集落で拾ったチルドレンの名前だ。まぁ屋敷につくまでがジャンという名前の命だ。