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14話

 

 身体強化とは文字の通り体を強化する技だ。これには二つのタイプがある。

 まずは平民でも使えるタイプ。これは魔素を活性化させる事により、ドーピングのような効果を出す方法。これのメリットは平民でも使えること。デメリットは体に負荷が掛かるのと、強化のレベルだ。あくまでドーピング、たかが知れているという事だ。

 逆に貴族にしか使えないタイプ。これは魔力を体の周りに纏わせる方法。これはたとえ子供でも身体強化をしていれば大人にだって負けない。強化してない拳で殴り掛かれば、某セロリさんみたいになるだろう。メリットは効果が大きい事。デメリットは魔力を消費する事、そして習得するのに時間が掛かるのだ。


 と、まぁそんなわけで移動中は修行する事にした。やぁ、それにしても尻が痛い。ガタガタな道にゴムでは無く、ただの木の車輪。こりゃあアカンわ。まさにテロだわ。尻が痛いし、酔う。


「ラインハルト、ストップ……」


「……大丈夫ですか? 休憩するなら小川がもうすぐあるのでそこにしようと考えていたのですが」


 くっ、なら仕方ないか。早く冷たい水で顔を洗ったり、喉を潤したい。酔った時には冷たい水が一番の薬だ。多分。


「なら仕方ないか、そこまでガマンするからなるべく揺らさないように頼むぞ」


 この旅、早くも挫折しそうである。初っ端から躓くなんて、そんな事があってはならない! あっ、でもしょうがないかなぁ? ほら、体調の事だし。

 と、まぁこんな感じで出だしから躓く事になったが案外どうにかなることになる。そう! シュティ皇帝である。あの空間に行けば酔う事はないし、お尻のガタガタもない! まさにヘヴンだ!



 ○



 なんて思っていた時期もありましたさ。


[おえぇ、オロロ〜、ギブです、交代を要請します]


 俺はシュティがゲロを吐きながら訴えてくるのを真っ白になって聞いていた。これはいかんな。いっそ御者席にでも行くかな?


「ん? これは……」


 なんて考えていた時に出来てしまった。身体強化だ。あえて尻に意識を集中させていたらフワッと感じた。魔力で尻と座席を離し、衝撃を魔力によって大幅に緩和する事に成功した。今俺は座席から少し浮いて存在している。


[シュティ、これって]


[よく分かりませんが、身体強化の一瞬でしょうか? 貴方はずって緻密な魔力コントロールをしていたために出来た芸当かもしれません。普通の魔法使いにはそこまで安定させるのは至難の技でしょう]


 俺が身体強化すげー! さいつよじゃんという事を言っているのではない。常に地面と平行な状態で浮いている事がすごいらしい。


「イザーク様、もうすぐ集落ですよ」


 無事?身体強化を習得すると、ラインハルトから報告が入る。目的地だ。無論こんな小さな集落ではチルドレンは見つけられないかもしれないが。




「ふむ、なかなか良いところだな」


 自然自然自然だ。この自然とうまく共生しているかのようは街並みだ。前世は首都、今世も自然とは少し通りものだったために、新鮮に感じられる。の、だが……


「ははー!」


 歩く度にこうして、住民は地面に頭を擦り付ける。あぁ、これが封建社会なんだなと何処か他人事に思った。それに住民の顔色を見てみると、痩せこけているのが見て取れる。俺が提案した農地栽培方だって効果が出るには数年かかるだろう。それまで 持つ かね?


 ここでは子供時代が少ないために青年にもテストを行う。親が居ても実行した。もちろん同意を得た上でだが。こういう時代だと、子供は財産という認識がある。それを高値で売れたなら万々歳であろう。もちろん子供が少ない家庭などではそうなならないが。

 一人を除いて全ての対象者たちは銀貨一枚を拾った。だが一人いたのだ! 勇気ある勇者が。


「ラインハルト離していいぞ」


「かしこまりました」


 拘束を解かれた子供に恵みを与える。


「ほら、これをやる」


 ナイフを取り上げられた子供に飴玉を渡す。飴玉といっても普段見るようなものではなく、べっこう飴のようなものだ。この世界に化学調味料はない。ので、砂糖と水を熱して固めた物を飴玉と呼ぶ。もちろん砂糖はそこそこ貴重とされているため貴族でも毎日のようには食す事は出来ない。


「?」


「俺に付いて来る気はないか? 俺と協力して、この現実を変えたいと思うか? 誰もがお腹のすかない世界にしてみたくはないか!?」


 訴えかける。俺に演説スキルはない。だから相手の心に訴えかけるしかない。シュティに代わってもらうのは簡単だろう、でもそれは俺じゃない。これは俺が成し遂げなければならない事なのだ。


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