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1話

新作(前作のリメイク)です

 

 俺、人外に会う。俺、人外に説得される。俺、人外に殺される。



 ○



「おい! 何をしている!」「あ、今日もサボらず残業よろしく」「これもついでにやっといて」「ここ、間違ってるよ」「真面目にやれよ!」「まったくこれだから若者は」


 俺はいわゆるブラック企業で働いている。今にして思えばちゃんと勉強して、有名大学に入って、大手に入社すればどれだけ楽か。小さい頃から遊び呆けていたのは失敗だったかもしれない。そもそも一般人の生きる目的の一つに大手企業に入社ってのが絶対に入る。いや、まじで。クリーンな企業もあるかもしれないが実態はほとんどがブラック、もしくはそれに近い。

 っと、話が逸れてしまったか? まぁ良い、もう少しで帰れる時間だ。ギリギリ終電には間に合うだろう。そして家に帰れば、寝るまでの時間に、最近の日課をする。


「っち、この展開はそんなに好きじゃないんだよなぁ。って、えええ!? ヒロイン殺すのかよ!」


 そう、小説投稿サイトだ。俺は毎日を機械的に過ごしている。そんな中出会ったのがこのサイトだ。まず衝撃的だったのが異世界が大ブームを巻き起こしていた。そして異世界での無双。そんな日常にはない事が新鮮でついつい趣味になってしまった。何故こんなに考え事をするのか考えてみた。後ろに明らかに誰かいる。怖いので現実逃避だ。あ、考えちゃった……


「おぬし」


 ひぃぃ!? 話しかけられた。不審者怖い。危ない人だったらどうしよう。いや、不法進入している時点で危ない人じゃないわけないか。


「は、はい?」


 声が上擦る。ふざけた感じだが、俺は今真剣だ。考えてもみてほしい、一人暮らしの家に住んでいます。鍵も誰にも渡していません。帰宅して鍵を閉めました。不意に背後に人がいて、話しかけられたらどうよ? 怖いだろ?


「あー、そんなに怖がらなくてもよい」


「一応聞きますが、貴方は?」


 ここは現状の整理だ。危害を加えてこないようなので話に応じる事にした。


「あー儂? 言葉にすると難しいのぉ。分かりやすく言えば神じゃ」


 神!? やべ、やっぱり危ない人だった……なんの宗教かな。


「あ、はい」


「おぬし……絶対によからぬ事を考えておるじゃろ」


 神を自称する危ない人がなにやら言っているようだが、一つ気になった事がある。気になったというよりかは違和感か?


「なんでそんな変な喋り方なんだ?」


 そう、この神を自称してる奴、まだ二十歳そこらで俺と変わらないように見える。


「え、あ、そう? じゃ普通に話すよ」


「切り替え早いな」


「まぁ神っぽく話してただけだし」


 急に馴れ馴れしくなった男。しかも神っぽくって言っちゃってるし。


「神じゃなかったんか」


「んー、難しいなぁ。確かにこの世界を創ったのは神だよ。でもね神はそれしかしてないんだ。その後の調整なんかは全て僕が引き受けた」


 話がぶっ飛びすぎてて頭がいたい。


「あ、はい」


「……続けるね。それで僕たちは管理者と名乗っている。分かりやすく例えると、神が社長だとしたら僕らは社員だね」


「たしかに分かりやすいな」


「それでさ、僕の方からひとつお願いというかね、異世界に興味ある?」


 ホワィ!? 異世界だと。それにこいつの言う事が真実だとした場合、とても面白そうじゃないか。


「異世界っていうと、あの?」


「君が思っているようなので合ってるよ。多分。剣と魔法の世界だよ。もちろんチートも付けてくれるってさ。あ、チートに関してはあっちの管理者の責任だから僕は詳しくは知らないよ?」


 この社畜人生からおさらばしてやる! 異世界、あぁ、良い響きじゃないか! まぁどうせデタラメだろうが今だけは付き合ってやるか。


「良いね! 異世界! 最高だ」


「え、ホント? ありがとう、助かったよ。あっちに適応できる魂のタイプがこの時代に君だけなんて、危なかった……」


 最後にボソっと何か言っていたようだが聞き取れなかった。まぁ些細な事だ。


「それでいつだ? ワープゲートみたいなのが出てくんのか?」


「え? 何言ってんのさ。死ぬんだよ」


 瞬間、管理者の右手が俺の左胸を貫いていた。最後に見た奴の顔はまるで、おもちゃを与えられた子供のように嬉しそうだった。



 ○



「君も運がなかったねぇ」


 気がつくと真っ白な空間にいた。それに気づくと痛みが襲ってくる。


「あ゛」


 痛い。痛い? あれ、なんか違うぞ。まさか、記憶に残ってる死んだ時がフラッシュバックしたのか? この痛みは本当の痛みではない……気がする。


「もしもーし、聞こえてるー?」


 声がしたので振り返ると奴と同じ顔があった。


「ひぃぃ!」


 殺された時のーー俺の胸に腕を突っ込みながら笑っていた男の顔が瞼の裏に映る。


「あー、僕は彼とは違うから安心していいよ」


 少し時間を置き、落ち着いてきた。おれは奴に殺された。つまりここは死後の世界か?


「こ、ここは?」


「んー、ここはね……あ、ガフの間とでも呼ぼうか」


 ガフの間? 生まれてくる魂が与えられる場所ってことか?


「あ、貴方は?」


「僕は管理者。ちなみに彼とは違うよ。世界というものは無数に存在している。その中のひとつを管理しているのが彼であり、僕だ」


「それで、なんで俺を……」


「まぁトレードだね。この世界に来ても問題ない魂を厳選、その中から選んだ筈だから。君の魂はこの世界に合うってことかな」


 トレード、トレードだと。あぁ分かったぞ、奴の嬉しそうな顔の訳が。クソが。


「……」


「世界の進行上、絶対にどこかでマンネリ化が起きて停滞が始まる。それを打破するためにわざと異物を混ぜるんだ。君の元いた世界にも何人か異物がいたはずだよ。だいたいはその使命ゆえに目立って名前も大きくなる。だから君が知ってる過去の偉人とかにいるかもね」


「俺にその使命を与えるってか」


 なるほど、俺たち人間は本物の道具って事だ。世界を円滑に回すための。


「察しが良いね。でも不正解ー! 君は別になんもしなくても良いよ」


「は? それはどういうーー」


 俺が言い終わる前に管理者が被せてくる。


「そもそもさ、今回のは彼が無理やり言ってきたことなんだよ。実際に僕の管理するこの世界では今の所なんの問題もない。っと言っても停滞ぎみではあるけどね。

 問題は彼の世界さ。あれは完全な停滞が起きてるよ。これ以上何も起こらない。ちょこっと覗いたことかあるけせど、平和平和平和。皆がぼちぼち生きて普通に死んでいく。そんな世界になってしまった。あ、悪いとは言ってないよ? 平和、結構な事じゃないか! だけどね、それを快く思わない輩もいるって事さ。そう、彼だ」


 管理者は最後の疑問に答えてくれた。まぁ質問してないんだけど。そして奴の動機も分かった。三回目の世界大戦を起こすつもりか。


「なのになんでーー」


「勘違いしないでほしいんだけどさ、僕たちは僕たちの仕事をしているだけだ。もちろん彼は間違っていない。それと、僕もちょうどあの世界から人材が欲しいと思ってたんだよ。ね? 良い商談でしょ?」


「あ、あぁ」


 文句のひとつでも言ってやろうかと思ったが、無理だった。だって何されるか分かったもんじゃないもん。


「それじゃ、時間も無くなってきたし。君のチートの話でもしようか」


 これだ。ぶっちゃけ世界がどうのこうのだが言われても俺個人じゃ何も出来ない。なら身の程を弁えて、次の人生を楽しむとするか。切り替えが大事だ。そう切り替えだ。


「ち、チート!?」


「そう、でもねぇ、結構突然だったからこっちの準備があんまり出来てないんだ。だから僕が見繕うよ」


 何も言わない方がいいみたいだな。くっそしょぼいようなのは無いだろう。


「分かった。よろしく頼む」


「時間もちょうど良いし、さよならだね」


「あぁ、感謝してる」


 おれが感謝の意を伝えると管理者は驚いたような顔をみせる。


「へぇ、それは何故?」


「俺があのままだったら普通に死んでたかも知れないだろ? それに異世界とか憧れてたし」


「ぷっ、ぷははははは! 良いね君! 本音は期待してなかったけど、君なら何かしてくれそうだ」


 薄っすらとしてきた意識の中、管理者の顔を見た。そこに写るのは楽しそうな笑顔だった。



[ユーザーの認証が完了しました]


どうだったでしょうか?

ちなみにタイトル案はとある読者様のご提案を採用させていただきました


よろしくお願いします。

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