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水の楓  作者: あまねく
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プロローグ

この物語はフィクションです。人物、団体、地名等はすべて架空のものとなります。ご了承下さい。


少しでもスキューバダイビングの魅力が伝われば幸いです。

 彼女にとって初めて水底から空を見上げたのは2ヶ月前。

 蒼色のカーテンの隙間から白い光がゆらゆらと揺れ、銀色の泡が身体を置いて遠ざかっていく。

 淡い色の世界の中で、ゆっくりと呼吸を繰り返す。

 たった一回の呼吸が、とても尊く、普段感じることの無い(せい)を明確に意識させた。

 水深5m。あたりは一面が白い砂に覆われている。



 たえず訪れる小さなうねりが、水底の砂に波状の模様をつくる。

 透明度は10m。目を凝らすと微細な粒が漂っている。

 今日は2月14日。気温は2度、水温はかろうじて9度を保っているが、海上は深々と牡丹雪が降り注いでいた。



 彼女の視界の中に目立った生き物は居ない。

 かろうじて近くの岩場に赤紫色のアメフラシを見かけたくらいだ。

 もうすこし沖へ向かうと深度も増し、魚の類も増えるが、本来この海域にいるのはアカクラゲだ。

 といっても全長2mを越える大物である。

 数十もの個体が群れを成しゆっくりと漂う姿は、見る者に幻想的で異世界へ迷い込んだような錯覚を与える。



 水中に入りすでに30分が経過した。

 空気の残圧は残り2/3、十分な量だが、あと20分くらいが限界だろう。

 彼女は水を一切通さないドライスーツの下にセーターを含め4枚も着込んでいるが、時間が経つにつれ、少しずつ体が冷えてくるのが判るのだ。

 水遊びをするには過酷な状況の為、ここに居るのは彼女と、そのバディを務めてくれるインストラクターだけ。

 シーズンになると、一度に5人以上を連れて潜ることもあるが、今はまだ冬。しかも雪まで降っている。


 彼女は潜る前のブリーフィングでインストラクターに思い切ってやりたいことを告げた。

 それは10分間水底に寝そべり、空を見上げたいという内容だった。

 それを聞いたインストラクターはすこし呆けた表情をとったが、すぐに柔和な笑顔を見せ要望に応えてくれることを約束してくれた。

 寒くないといえば嘘になるが、震えるほどではない。

 ゆっくりと繰り返される呼吸の音、パチパチという波と岩肌が奏でる音、心地よい重低音が絶えず流れている。



 彼女が時が経つのも忘れて魅入っていると、インストラクターがその視界に入ってきた。

 約束の時間が経過したのだ。

 彼女は名残惜しい気持ちをそのままに、陸を目指す。

 そして時間をかけてじっくり水中観察をしながら蒼の世界を後にした。

初めましてあまねくと申します。またお久しぶりという方いらっしゃるやもしれませんがその方々には心からお詫び申します。他作品の「学園生活は~」の方はもう少し待ってくださいませ。纏めて投下致します。


この度、私生活等等の諸問題も解決へ向かっており、創作活動を再開いたします。稚拙では御座いますが今後とも御贔屓頂ければ嬉しく思いますので、よろしくどうぞお願い申し上げます。

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