第2話:森の中
森が光った。
そして、森の静けさはいきなり破られた。
爆発音ともとれる音が鳴り響いた。獣たちが「ギャァギャァ」とわめきたて、逃げていく。
ひとつの樹木の根元付近に一台のシェガー(ホバーつきの2人用オープンカー)が引っかかっていた。
枝の折れる音がしばらく続き、やがて静かになった。
「ホルス」
澄んだ声が森に響きわたる。
「なんでございましょう?キラ様」
さっきとは違う声、おそらく『ホルス』がワザとらしい敬語で言った。
「・・・説明してくれないかな?」
キラが言う。
「そりゃ、見ての通りで」
「はぁ・・・・・」
森は何一つ音を立てない。
完全なる静寂だった。
キラはしばらくその場を動かなかった。
「キラー」
ホルスが言う。静かな森に嫌なほど響き渡った。キラは答えない。
「おーいキラー」
ホルスはめげずに言った。森に虚しく響く。それでもキラは無視した。
「キラ!」
ホルスが大声を出す。
「何?」
キラはやっと返事をした。
「まず、僕の大声返して」
「無理」
「はやく移動しようよ?」
「そろそろ行く?」
「そーしてくれるとありがたいかな」
「それじゃぁ・・・・」
キラが急に黙った。
「ん?キラ?どうしたの?」
「静かに・・・」
キラが小声で言う。
それまでキラとホルスの声以外、この森全てが沈黙を守っていた。しかし、キラには「パキパキ」という微かな音を察知した。そして、それが近づいてきていることも。
「?」
ホルスはなにがなんだか分からない様子だが、おとなしく黙った。
キラは刀に手をかける。
「パキパキ」
音がさらに近づいていた。
ふいに茂みから矢が飛び出す。
キラはそれを体を右に僅かに動かし、よけた。
それを合図かのように何本もの矢が茂みから放たれた。