地雷系教師 着任
初めての投稿となります。学校の先生の「純文学だけでなく、ライトノベルとかも書いてみなさい」というアドバイスに従い、熱中症の頭の中に降りてきたネタを書いてみました。なろう自体、読むのも投稿するのも初めてですので、お手柔らかにお願いします。
桜の花が少し萎んだ頃だった。四月三日、朝の静かな光の中、高校の入学式が行われる。
「新入生、起立! 校歌斉唱!」
まるで軍隊のように、弾かれたように席を立つ。中学の三年間で染み付いた習慣に嫌気が差した。
朝倉美穂は中学校からこの学校に入った生徒だ。小学生時代のいじめから逃れるように、中学受験をした結果の逃げ場が、この私立の中高一貫だった。ここに逃げれば、きっと楽しい生活が待ってる、なににも脅かされることなどない。と、三年前の淡い期待が懐かしい。
慣れた校歌を口ずさむ。
けれど、入ってみれば髪ゴムの色も統一。靴下は指定のみ、ストッキングも禁止、さらには雨の日はビニール傘も禁止。よく分からない校則と、毎日開催されるテストに身も心も押しつぶされそうな三年間だった。けれど、似たような境遇や、気が合う友達に恵まれて三年通い、エスカレーター式に附属の高校にも上がろうとしている。
校歌を歌い終わり、着席する。ザッと音を立てて、一斉に座る美穂たちに、教員が「それでいい」というように微笑を浮かべた。舌打ちしたくなる。きっと、高校も代わり映えなどしないのだろう。
そう思ってしまえば紅白の垂れ幕も、この日のために服装を揃えた保護者たちも、姿勢を正した自分たちもバカバカしく思えてくる。苦労してこの高校を受験した、身内以外の生徒には悪いが、なんの希望もなかった。
「皆さん、入学おめでとうございます。皆さんをお祝いするように、桜の花も盛りを迎えていますね。ところで先日、理事長の方が変わりまして、ご挨拶の方を頂きたいと思います」
高校からの新入生は真面目に聞いていたが、中学からのエスカレーター組はみんな爪をいじったり、明後日の方向を見上げている。美穂も何度目か分からない欠伸を噛み殺したときだった。
「吉田理事長、お願いします」
「はぁーい!」
女性と見紛うほど、高く細い声にみんな騒めく。
「理事長? お返事の方は結構ですので……」
「あらそうだったの? ごめんなさぁい、ついうっかり! 」
美穂も隣の男子と顔を見合せて、言外の意を交わす。あれが理事長? 信じられる? と首を傾げたら、激しく否定するように首を振られた。高校受験組は呆気に囚われ、保護者席からはさらに大きな騒めきが聞こえる。きっとあんな理事長で不安なのだろう。大丈夫、生徒はもっと不安だ。
校長からマイクをもらって、壇上に上がったのは、ピンクに染めた髪をオールバックにした、そろそろ三十路に届くだろうか? という若い男だった。
「ご紹介いただきました、吉田 雅紀といいます。今回の着任に際し……」
つらつらと挨拶を述べる吉田の話は要約するとこうだった。
我が校は時代錯誤もいいところ、多様性を認めるどころか皆一律の教育を強行している。そこで、生徒の心身の健康を守り、学力を伸ばすために学校の改革を行うという。そのため、若手の新進気鋭の教師を多数起用し、さらに教育の質も向上させるという。
呆然と美穂たち生徒も、保護者たちも、その言葉を聞いていた。ただ、教員はどこか心ここに在らず、というように空を眺めている。さっきとはまるで真逆だ。近くを巡回していた、かつての担任にアイコンタクトを送ると、「何も言うな」というような底の暗い微笑みを返された。
「そんなわけで、新しい先生たちをお迎えしようと思います」
吉田理事長が紙の花で飾られた、ホールの出入口にウィンクを送る。するとゾロゾロと七名の教員が花道を通り、入ってきた。
ハイトーンの髪が三人、ダークトーンの髪が四名。服装はさすがに、全員がスーツだったことが救いだ。席に着いたあと、一人一人が壇上のマイクに立つ。
「初めまして、化学を担当する宇佐美です」
最初の教員は黒髪を七三に分けた男性だった。にこやかに挨拶に、一瞬ホッと胸をなでおろす。なんだ、意外とまともそうだ。
「趣味はイラストを見ること、あとは漫画を読むことかな。どうぞよろしくお願いします」
次は髪の毛をピンクブラウンに染めた女性教師だった。
「初めまして! 音楽担当の澤本です! 」
勢いよく頭を下げる。若々しくて、好感が持てそうな女性だ。
「本当は今日も私服で来たかったの! 私、ピンクが好きでピンクの服しか着たくないから! だから、明日から絶対可愛い服で来るからね! 」
普通それを壇上で言うのか、クスクスと笑い声が混じるが、生徒、保護者共に受けは悪くなさそうだった。
それから数名の教員が挨拶をする。一人一人の紹介をしきるには、あまりに面倒なほど個性が溢れていた。
そして最後の女性教師の番になる。最初、黒髪と思っていたその髪は濃い紫色で、それをツインテールにしていた。前髪は重く、涙袋がまるでパーツを後付けしたのかと思うほど大きい。とろんとアイラインが太く長いタレ目で、ツヤツヤのピンクのリップ。スーツのブラウスのフリルがふわふわと揺れている。
「地雷系……? 」
後ろの友達がそう呟いた。あの見た目で違う、とはならないだろう。ふっと目を細めると、マイクに向かう。
「社会科、歴史担当します。甘野 夢叶です」
意外に落ち着いたその声と、見れば見るほど教師に似つかわしくないその服装。美穂は目を見開いて、上から下へと甘野を眺めた。首まで若干動かしていたからか、整然と座っている中では目立ったのだろう。甘野と美穂の目が合う。にんまりと白い歯を見せて、甘野は美穂に笑いかけてきた。
「ゆめてゃって呼んでいいよ! 」
それは全体に向けられているのは明らかだったが、美穂にはどうも自分だけに向けられたような気がした。
美穂の学校生活はどうなるのでしょうか。理事長の改革は成功するのでしょうか。夢叶以外の教員たちの掘り下げなども行いたい所存です。特に古典教師については、別で大きな作品にしてみたいと思っています。まともな教師など、一人もいません。モデルは母校です。つい最近炎上して謝罪文を出していました。




