最強
「それにしても、いろいろ不自然じゃないですか?」
「何がですか?」
とりあえず状況は把握した。
しかし突っ込みたいところが満載なので、女神さまに色々聞いておきたい。
「まず、その勇敢な女性は、ダンプカーにぶつかって何で無傷なんですか?」
「彼女は、霊長類最強の女性ですので」
出た、霊長類最強。
確かに彼女ならダンプカーの二台や三台は吹っ飛ばしてしまうかも。
それよりも聞きたいことは、私のことだ。
「そして、何でわたしはわたしなんですか?」
「?」
女神さまの目が点になっているけど、これは確かに自分の聞き方が悪い。
「えっと、わたしダンプカーだったんですよね」
「そうです。そして今もダンプカーです」
「ダンプカーって、生き物じゃないと思うんですけど、何でわたし、女神さまとお話しできる自我が、あるんですか?」
「ああ、そういうことですね。結構哲学的な質問をされたのかと思って、つい身構えてしまいました」
女神さまは、ほっと安堵するような表情を見せた。
この女神さま、何だか煩悩がいっぱいありそうだなあ。
「日本という国は八百万の神さまがいると言われています。長く使われてきた道具には、九十九神が宿ることがあります。きっとあなたもそうなのでしょう」
「えっ、わたし神様なの?」
「神様と言っていいかどうかは、怪しいところです。別の教義流にいうならば、ゴーストが宿った、ということかもしれません」
なぜかその言葉を聞いた時に、愛らしい言葉で喋る多脚思考戦車が、頭の中をよぎった。
て、わたしの頭ってどこなんだろう。
「九十九神になれるのは、普通は長い期間かけて愛情注ぎ込まれた道具だけです」
「え、でもさっきの話だと」
「そうです。前世のあなたの所有者は、控えめに言って最低の人間でした」
控えめで、最低人間かよ。
一体どんだけ。
「しかしあなたは、あまりにもあの運転手に粗雑に扱われました。まともに綺麗にもされず、積んではいけない量をはるかに超える積荷を積まされ、挙げ句の果ては乱暴運転」
「はあ」
「そんなあなたを見ていたので、先ほどのような事故現場を見て、思わず助けてしまいたくなったのです」
なるほど。
「そこで、九十九神になる制度を流用して、この地に転生させたのです」




