お約束の転生をしたはずなのに
横断歩道を転々と転がるボール。
その後を追って、幼い女の子が歩いてくる。
そこへお約束のように、急スピードで突っ込んでくるダンプカー。
ダンプカーのドライバーは、慌てて急ブレーキを踏む。
「あぶない!」
一人の女性が、飛び込んでくる。
女の子を抱えると、ぎゅっと抱きしめる。
しかし間に合わず、ダンプカーと女性は激しくぶつかった……
◆◆◆
「これは、私が死んだときの状況ですか?」
「はい、そうです」
気がついたら私は、見知らぬ広間にいた。
目の前には、古代ギリシャ時代の女神様のような白い服をまとった、美しい金髪の女性が座っていた。
その女性がさっと手を振ると、何もない空間に、ぽんっ、とスクリーンが現れる。
そして、冒頭の映像が流れたのだ。
「そして、何となくわかりました。これは、転生というものですね」
「はい。あなたは不幸な事故で亡くなり、その魂が私の元へとやってきたのです」
そこで初めて、女神様みたいな女性が微笑んでくれた。
わたしは気になることを確認していく。
「あの、女の子は無事でしたか?」
「はい、勇敢な女性のおかげで怪我一つありませんでした」
「よかった。あの、ダンプカーの運転手は?」
「彼も無事です。ただし、ダンプカーは横転して大破、彼も瀕死の重症です」
「それは……」
「いえ、彼は日頃から乱暴な運転で、いつか事故を起こすのではないかと思ってました。自業自得です」
あれ? 意外と女神様って人間みたいな価値観を持っているのね。
そう思っていると、女神様はとんでもないことを、わたしに伝えた。
「そして、勇敢な女性も無事です」
「ええっ!?」
ちょ、ちょっと待って。
わたし、女の子を勇敢に救った、あの女性じゃないの?
だって、さっきの映像に登場していたのは、女の子、ダンプカーのドライバー、そして勇敢な女性の三人でしょ?
「確認ですけど、女性とダンプカーがぶつかったんですよね?」
「はい」
「そして女性は助かったんですよね?」
「傷ひとつありませんでした」
「じゃ、じゃあ誰が亡くなったんですか?」
「あなたですよ」
「わたし?」
ここまでの話を整理すると、私の正体は……
「はい、あなたはダンプカーでした」
何てこったい。




