第7話 魔獣とモンスターの違い。
――魔獣。
正式な呼称じゃないけどこの呼び方で定着したわ。
さて、この魔獣が何なのかというとプレイヤー化した動植物よ。
基本的にステータスシステムは地球上の大半の生物に根付いており、犬などのペットも例外ではないのだけれど、動物園の動物や凶暴な野生動物がスキルを使ってモンスターだけではなく人間を襲ってレベリングした結果、凄い事になるの。
どうやってるのかあいつ等普通にジョブにも就いて魔法とかスキルも使って来るからヤバいのよ。
モンスターと明確に区別されている理由は魔獣はポップした訳じゃなく、この世界に元々いた生物がステータスシステムによって凶暴化した結果に発生する。
だからシステム的にはプレイヤーと同じ扱いになる上、個体ごとに固有のスキルも持ってるし、その中身によっては見た目やレベル以上にヤバい。
こうなってから大体一か月ぐらいで人里に下りて来て人を襲うようになるわ。
私が遭遇した訳じゃないけど、滅茶苦茶強い熊が人を殺しまくってたって話を聞いた事があった。
野犬とかは見た事あってけどステータスもレベルもえぐかったわ。
普通に20レベル越えてるのは何の冗談よ。 まぁ、蓑鋤が追い払ってくれたけど。
やだ、私の好きピかっこいい。 しゅきぃ……。
そんな理由で簡単な相手しかいない今の内にレベルは上げられるだけ上げて置くのがいい。
――と、いう訳で移動しながらゴブリンやらコボルトやらをぶち殺しまくりよ!
蓑鋤がだけど! そんで私は疲れた彼を優しく、やさーしく癒してあげるのよ。
プランとしては蓑鋤にモンスターを処理させて私が回復。
経験値効率としては私のレベルアップは遅れるけど、スキル使用は敵の撃破の次ぐらいに経験値を稼げるから上がりはするのよ。 進みとしては蓑鋤の半分ぐらいかなー?
「レベルが5になった。 確かにスキルが増えたな」
蓑鋤は殴り過ぎてボコボコになった金属バットを捨ててステータスを確認していた。
戦士はレベル1でパッシブの身体能力強化(小)でレベル5で腕力強化(小)が入るわ。
前者は物理関係のステータス補正10%、後者が力に10%の補正が入る。
どっちも相手を殴り殺すには中々に便利よ。
戦士は基本的に覚えるスキルは能力強化系のパッシブばかりで派手さはないけど、ステータスの伸びの良さと併せると馬鹿にできないぐらい強くなる。
蓑鋤に「回復」を使用して疲労を抜くと私もレベルが上がった。
これで私のレベルは3。 僧侶は5で解毒、10で知力強化(小)が手に入る。
可能なら15の回復強化(小)っていう回復系のスキルの強化ができるパッシブが欲しいけど多分到着までに取るのは難しいかな?
ゴブリンとコボルト相手じゃ10を超えるときつくなってくるわ。
それに移動と並行している事もあって、レベルアップの速度も遅くなる。
このペースなら遅くても明日には家には帰れるけど、どこか広い所で軽くレベリングをしておくべきかしら? 現在地は道頓堀から少し北に向かいアメリカ村を通過した所。
このまま真っすぐ本町を抜けて梅田まで行ければ江坂に辿り着くのは問題ないはず。
……うーん。 モンスターは開けた場所に出やすいから梅田で稼ぐ?
今の蓑鋤ならそう簡単に負ける事はないけど囲まれると厄介ね。 私が。
いや、蓑鋤は元々体の動かし方を分かっているだけあってステータスをしっかりと使いこなしている。
対する私はほら、支援職だし。
回復しかできないクソ雑魚ナメクジだから、ゴブリンに殴られると秒で死ぬわ!
一番いいのは群れを挑発して袋小路に誘い込む事かしら? 私が後ろで回復して蓑鋤が戦うのが一番いい形なんだけど、モンスターにも知能はあるからゲーム感覚でやってると簡単に死ぬのよねぇ……。
特にダンジョンではよくある事で――
「そう言えばちゃんと聞いていなかったが、クリア条件のダンジョンとやらはどうなんだ?」
私の思考を読んだかのように蓑鋤がそんな事を訊ねて来る。
「んー? どうって、クリアできる感じかって事?」
「そうだ」
「うん。 ぶっちゃけ無理ゲーよ」
大体、一週間ぐらいでこの混乱はある程度の収束を見せ、事態を受け入れ始める。
半月でステータスの概要が広まり、一か月半ぐらいでダンジョンの調査が始まったわ。
日本にあるのは合計で10。 内、ここから一番近い万博記念公園に出現したダンジョンに関しては私の耳にもある程度の情報が入った事もあって少しは話せる。
何でかって言うと前の時は鑑定士っていう割と貴重なジョブに就いていたからなのよ。
よく分からん物が出て来ても鑑定すれば正体が分かるから一緒に来てくれとか言われたんだけど――
「行ったのか?」
「怖いから断っちゃった。 でも、持ち帰った物を調べるバイトはしてたよ」
「何が出たんだ?」
「色々あったよ。 武器とかアイテムとか」
「武器は分かるがアイテムっていうのは具体的にどんな物なんだ?」
お約束の回復ポーション、魔法石、魔導石、アーティファクト等々。
「その二種類の石の違いは?」
「魔法石はスキルが封入されている使い捨てアイテムで一回だけ本来なら使えないスキルを使う事ができるのよ。 ちなみに鑑定の魔法石は結構出るから早々に私はお役御免になっちゃったよ」
私は肩を竦めたあとにがっくりと落とす。
せっせと鑑定していたら鑑定の魔法石いっぱい出たからもういいってとか言われてバイトをクビになったのは悲しい思い出だ。
あの須崎とかいう人を見下したようなムカつくババア。 鼻で笑って追い出しやがって!
忘れてねぇからな! 今回、見かけたら思いっきり冷たくしてやる!
「なら魔導石は?」
「経験値アップアイテムだよ。 使うと経験値が手に入る使い捨てで手っ取り早くレベルを上げるのに便利だけど最下級の奴でもあんまり出なかったみたい」
一応、その辺のゴブリンを仕留めても出るらしいけど、ドロップ率はかなり渋い。
噂によると0.1%以下だとか。 出たらラッキー程度に考えればいいよ。
「どの程度の経験値アップが見込めるんだ?」
「うーん。 触った事ないからよく分かんないけど10~20だと最下級の1個か2個でレベルが上がったはず。 それ以上となるともうちょっと要るとか要らないとか」
「はっきりしないな」
「だって使った事ないし……」
そんな話をしている間に本町を通り過ぎ、大きな道路――阪神高速道路を伝って進む。
もうぼちぼち梅田が見えてくる頃だ。




