第6話 職には就いた方がいい
「――それにしてもステータスって奴は凄いな。 お前を抱えても多少疲れた程度で済む」
蓑鋤の言う通り、ステータスの補正は非常に強力だ。
数値さえ高ければ私の細腕でもビルを倒せるわ!
まぁ、戦士系のジョブを取ってないから相当レベルを上げないと無理だけど。
「……休憩がてらもう少し話を聞かせてくれ」
「何について聞きたいの?」
「レベルとジョブの関係だ。 ステータスを確認すると俺は戦士レベル4になっている」
あぁ、それね。 レベルとジョブはかなり深い関係にある。
実は初期の無職の場合、経験値は入るけどレベルが上がらない仕様になっているのよ。
だから蓑鋤には真っ先にジョブを取得するように促したし、私もさっさと取った。
総合レベルはこれまでに取ったジョブレベルの合算になる。
仮に戦士レベル20で転職して僧侶になったとするとレベルは20のままで僧侶レベルゼロになるの。
ステータスの基礎数値の伸びも変わって来るからコロコロ転職すると中途半端な仕上がりになる事もあって割と計画的にしないといけない。
「仮に戦士を貫くとして上限はないのか?」
「あるよ。 50で頭打ちになる」
そうなると何かしらのジョブに転職しなければならないけど、その頃には戦士の上位、または派生職の取得条件が満たされている筈なのでステータスのビルドに関してはそのまま伸ばす事は可能よ。
「――ただ、上位職の方がステータスの伸びがいいから早めに乗り換える人も多いって」
「転職はどのタイミングで出来るんだ?」
「レベル20以上か専用のアイテムを使えばできるよ」
「転職しない事によるメリットはあるのか?」
「あるよ。 基本的にジョブは固有のスキルを5レベル毎に取得できるから50まで上げると専用のスキルを10個まで獲得できる。 ただ、上位職に就くと上位互換みたいなのも手に入るから最後まで擦る人は少なかったみたい」
ただ、一部の職業の転職条件が戦士のカンストを含むとかはありそうなので長い目で見ればしっかり上げるのも悪い判断ではないらしいわ。
ただ、効率を考えるなら早めに乗り換えるのも悪くはない。
「5レベル毎にスキルが手に入ると言っていたな。 なら専用のアイテムとやらを使って乗り換えるメリットは何だ?」
「どの職業も就いた瞬間に一つスキルが手に入るのよ。 戦士の場合は攻撃力アップのパッシブ、私が取った僧侶の場合は『回復』スキル」
「あぁ、乗り換えて転職の特典で貰えるスキルだけを取るのか」
「そう、スキルって数持ってるだけでやれる事に幅ができるからアイテムが手に入る環境があるなら取った方がいいって考えた人もいたのよ」
実際、僧侶の「回復」だけでもかなり使える。
特に直接戦闘がメインでMPを余り使わないようなビルドならガンガン使って疲労とダメージを抜いて継戦能力を上げるって使い方もできるのよ。 特に疲労を抜くっていうのがかなりいいらしいわ。
土壇場での判断に影響が出るとか出ないとか。
まぁ、私は殴り合い、斬り合いとかはしないから知らんけど。
「よし、マーマンも追いかけてこないみたいだし、そろそろ行こっか」
「あぁ、急いだ方がいいのならまた担ぐか?」
「そこまではしなくていいよ」
「……あぁ、知ってるのか」
蓑鋤が察したように呟く。
今の私達は家へと向かっており、帰宅以上に蓑鋤のお母さんの安否確認の意味合いが強いと思ってたみたいだけど実の所、そんなに焦らなくても良かったりする。
前回は帰宅できたのはこうなってから一週間後。
レベルアップの仕組みも碌に知らなかった事もあって私達の移動は遅れに遅れた。
特にジョブ変更の仕組みに気付けなかったのが痛い。
――それ以上に私が盛大に足を引っ張っちゃったのよねぇ……。
こんな状況になった何も知らない私は泣いて怯えて蓑鋤の陰に隠れてばかり。
普段はこんな調子で喋っている癖にいざとなると泣き喚くお荷物だったって訳。
お陰で蓑鋤も慎重に動かざるを得なかったのよ。
レベル上げとかのシステムを理解してジョブ変更を行ったのが10日後ぐらい。
何とか江坂まで辿り着いて蓑鋤のお母さんが避難している避難所に辿りついて、他の生存者からステータスシステムの仕組みを聞いてようやくスタート地点に立つ事が出来たのよ。
まぁ、それでも蓑鋤は滅茶苦茶強かったけど。
今回ほどサクサク倒してはいなかったけど、私を庇いながらあの長い距離を一週間かけて踏破したわ。
普通なら歩きでも一日かからない距離なんだけど、特に最初の数日は無抵抗の人がかなりモンスターに殺されてレベルの高い個体があちこちで生まれたのよ。
お陰で逃げて半日、隠れて一日と無駄に時間を浪費したわ。
下手に広い道に出たりすると真っ先に狙われるし、当時はレベル上げの仕方が分からなかったのが特に痛い。 繰り返しになるけど私が足を引っ張りまくったのが最大の原因なんだけどね!
うぅ、ごめんよぉ。 今回は頑張るから許してぇ……。
前回の蓑鋤は本当に私を守る為に頑張ってくれた。
だから私は前に死ぬ時に決めていたのよ。 蓑鋤を絶対に死なせないって。
チート物みたいに世界最強になるのかは分かんないけど、この世界で楽に生きていける程度には強くする。 そうすれば奪われる事なく平穏かつ幸せに過ごせるはず。
そのついでに私も幸せにしてくれるとぉ、嬉しいなって思ってます。 ぐへへ。
ふざけているように見えるけど私は決めた事は絶対にやり遂げる。
蓑鋤は必ず幸せにして見せる。 幸いにも私には記憶遡行がある。
仮に失敗したとしても何度でもやりなおす。 ひひ、愛してるよぉ、蓑鋤ぇ……。
さて、方針は決まっているわ。 レベルを上げながら蓑鋤の家のある江坂を目指す。
その過程でレベル上げね。 目標としては到着までに10、可能なら15ぐらいまでは上げときたいわ。
それだけあったらそう簡単に殺される事はないはず。
最初の一か月ぐらいはゴブリンとかの雑魚モンスターぐらいしかいないから特定の地形で力を発揮するマーマンみたいなのと出くわさない限りはまず負けないと思う。
モンスターもレベリングの関係でそこまで強くないのよ。
――ただ、一か月を過ぎると状況が変わって来る。
理由としてはモンスターとは別種の脅威が現れるからだ。




