第5話 私は癒し系ヒロイン
私と蓑鋤が住んでいるのは江坂、現在地は難波。
位置関係が分かんないって? 簡単に言うと結構、北の方に歩く事になるって事。
本来ならなんば駅から地下鉄で一本なんだけど、電車が動かない以上は徒歩での移動になる。
JR難波駅から真っすぐ北に歩く。 先頭は蓑鋤で私はその後ろ。
普段は通らない道だった事もあって少し迷いながら細い道を通って道頓堀へ。
アパートなどもちらほらあってゴブリンなどのモンスターと誰かが争うような音や声があちこちから聞こえてくる。
あいつ等、普通に家のドアを破って入って来るから迷惑この上ないのよね……。
ゴブリンは比較的、非力だからそこまで怖くないんだけど、オークとかコボルトとかになるとあんまり意味がない。 前者は壊してくるし、後者はベランダから窓を割って入る。
そんな理由で初期対応としては大人数で立て籠もるが割と賢かったりする。
モンスターにも知能はあるから人数が多いと警戒して寄ってこないのよ。
さっき襲ってきたのも五体だったでしょ? ゴブリンは基本的に自分達より少数しか襲わないから大人数だと相手以上の数か強力な用心棒を用意するかしないと来ないのよ。
「用心棒?」
「そ、基本的にオークとかトロールとかのおっきいのを連れて来る感じ」
「強いのか?」
「今の蓑鋤だと同レベル以下じゃないと厳しいかも」
途中、いくつかの死体が転がっているのを努めて見ないようにしつつ進み、遭遇したゴブリンを蓑鋤が蹴散らす。
前回は私が鑑定スキルを持っているから相手のレベルとかを参照できた事もあって、割と積極的に狩りに行ったんだけど今回はそれができないから慎重に行きたい。
ちなみに前回も蓑鋤が敵のほとんどを片付けてくれました。 守ってれる蓑鋤しゅきぃ……。
ただ、回復役がいなかった事もあって、かなり無理をさせてしまった。
だから今回は回復職を取ったのよ! 蓑鋤が疲れた様子を見せると「回復」スキルを使う。
これは単純にHPを回復するだけでなく、疲労も抜いてくれるから割と便利なのよ!
自分に使っても良しだし、コンディションを維持しつつ安全に進める。
ついでに私も経験値を稼げてお得! ちなみにMPだけど自然回復だから緊急時に備えてある程度残して後は気軽に使っていく感じで大丈夫! 私ってMP多いし対象が蓑鋤だけだから割と気軽に撃てるぜ!
これぞ癒し系ヒロインってね! 癒し系、いい響きだぁ。 こう、愛される感が良いのよねぇ……。
自販機の陰に隠れていたゴブリンを蓑鋤が躊躇なく殴り殺す。
「多分、もう二、三体は要るから気を付けて!」
明らかに待ち伏せてたから他が居るはず!
取り敢えず一匹見つけたら五匹は居ると思えはゴブリン退治の基本!
知能はあるけど突き抜けて高い訳じゃないから隠れる場所は割と安易なのよ。
直ぐに襲える位置だから、車があればその陰、ないなら建物の角や中。
大抵は角かな? 視界に入るようにしているから中の場合はコンビニとか外が見える店舗になる。
「車の陰! 後、電柱の後ろ!」
蓑鋤は分かったと近い順に殴り倒す。
車の陰、電柱の裏、建物の角と飛び出したゴブリンを即座に殴り倒していく。
レベルも上がっているお陰で攻撃の威力も上がっている。
フルスイングでゴブリンの頭がスイカみたいに弾け飛んでるわ!
文字通りぽっと出て来るモンスターの癖に中身はしっかり生き物なのよね。
脳ミソっぽいのが飛び散ってる。 うーん、エグい。
前回は吐きそうになった――っていうか一回吐いたけど、慣れとは怖い物で今は大丈夫よ。
そうこうしている内に道頓堀へと到着。
昔に比べるとかなり綺麗になった川には死体がいくつか流れていくのが見えた。
水棲系のモンスターの仕業ね。
あいつ等もゴブリンとかと一緒で川の近くで待機して近寄った人を突き落としたり、引きずり込んだりする。 対策としてはそもそも近寄らない事、モンスターを殺したいのなら大人数で行くぐらいかな?
水中に引っ張り込まれるとレベル差があってもどうにもならない。
そこそこ高レベルの腕自慢が飛び込んで浮く事すら許されずに死んだなんて話も何度か聞いた事もあって要警戒のスポットだ。
「歩くのは橋の真ん中で進む時は早歩き、渡っている途中は左右からしか来ないから前後よりは左右を警戒。 渡り切ったら急いで離れる!」
「水棲のモンスターというのはどういうのがいるんだ?」
「人と魚を混ぜたようなサハギンとか上半身だけ人間のマーマンとかかなぁ」
「あんなのか?」
そうそう、橋の手擦りを掴んでこちらを魚のような眼差しで窺っている正しくサカナって感じの――
「ダメじゃん!!」
走ろうという前に蓑鋤はバットをフルスイング。
べチャって感じの音が響いて魚――マーマンの頭部が抉れて川へと落下。
反応早いな!? やだ、私の彼氏(予定)頼もしすぎぃ。
僅かに遅れえてバシャバシャと水面を掻く音が無数に響く。
道頓堀には流れがあるのでそれに逆らってマーマンの群れが上がってきているのだ。
半分サカナでも群れで狩りをするぐらいの知能はあるらしく、私達を引きずり込もうとしてくるはずだった。
「走って!」
私は蓑鋤の手を引いて走ろうとするけど、逆に手を引かれて体が持ち上がる。
蓑鋤が私を荷物のように肩に担いだのだ。 いやん、蓑鋤ってばいきなり大胆!?
できればお姫様抱っこで頼みたい所だけど流石に両手が塞がるのは不味い。
蓑鋤は私を抱えたまま全力疾走。 速い。
ステータスによって補正がかかった事によって身体能力も上がったのだ。
あっという間に橋を渡り切ると道頓堀からぐんぐんと離れていく。
少し離れた場所にあったコンビニに飛び込んだ所で下ろされる。
流石に疲れたのか蓑鋤はふぅと大きく息を吐いた。 私は回復スキルを使いながら周囲を警戒。
ゴブリンとかは居ないみたいねー。 ついでに店員も逃げたらしくていない、と。
スキルで呼吸が整った蓑鋤にペットボトルの水を差しだす。
「万引きにならないのか?」
「ん~? 気になるならお金置いとくよ」
言いながら財布から小銭を取り出してカウンターに置く。
どうせこの先、現金は役に立たなくなるからそんなに惜しくはないのよね。
なら何が通貨の代わりになるのかというとステータス画面から操作できる通貨――ゴールドだ。
生き物を殺すと経験値と一緒に手に入る。
このゲームに於ける仮想通貨みたいなものでステータス経由で取引できるからお金としては信頼度は高い。
この先、かなり需要が上がるから可能であれば手に入れておきたいお金ね!




