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二周目の彼女と三周目の彼。  作者: kawa.kei


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第39話 思ったよりも苛ついていたと自覚した

 私がそう言うと三上は驚愕に目を見開く。

 

 「か、彼を見捨てろっていうんですか!?」

 「はい。 足が吹っ飛んでるんでどうにもなりません。 担いで逃げたいならどうぞご自由に」


 その分、逃げるの遅くなるから追いつかれて餌になるけどそれでもいいならやれば?

 私は無理かな。 可哀そうだけど罠の確認を怠った自分を恨んでね。

 

 「ち、治癒魔法は――」 

 「HPは戻りますけど、部位欠損は状態異常扱いなので治せませんよ」


 スキルで治せるならとっくにやってるってば。 

 部位欠損を直したいなら僧侶系の上位職に就く必要があるでしょうね。 

 

 つまり足が吹っ飛んでいるあの男を助けたいなら担ぐ以外の手段がない。

 言ってる間に棒立ちになってた連中が蟻にぶっ飛ばされてるわ。 

 それにしても動揺で頭が真っ白になった人間って本当に目の前の危機に対して何にも反応しないのね。


 うーん、やっぱり非日常的なシチュエーションって自己を客観視できないから怖いわー。


 「な、なぁ、たす、助けて、助けてくれよぉ」


 情けない声を上げてるけど無理ね。 あ、でもスキルでHPは回復しておいてあげる。

 その方が長生きできるでしょ? じゃあ、頑張ってねー。

 スキルを使用して倒れている男を回復させると私はなんの躊躇もなく踵を返してダッシュした。 


 ステータスでそこそこ素早さが上がってるから割と早いわよー。

 助けたいなら止めないからお好きになさいな。 私は無理だからさよならー。

 三上達を置き去りにしたんだけど、僅かな間を置いて無数の足音が追いかけて来た。


 そして悲鳴。 ほらー、やっぱり私の判断が正しかったんじゃなーい。

 元来た道を戻るだけだから迷う心配はなく、少し進むと上り坂が見えて来る。

 そのまま第一層へとカムバック! ふぅ、危ない所だったゼ☆


 やっぱり蓑鋤抜きだと第一層が限界か。 

 振り返ると三上と前川、後衛のメンバーと前衛の順で上がって来たけど――うーん、足りないわね。

 餌役プラス三人いなくなってる。 


 助けに行ったか、焦りで脇道に入ったかのどっちかかな。

 どっちにしろ助けに行くのは無理だから死んだって判断していいでしょ。


 「――とまぁ、あんなんばっかりしかいないから下へ行くのはお勧めしないわ」

 「ふ、ふざけるな! 四人も脱落したんだぞ! 岡林に至っては囮にするなんて何を考えてるんだ!」


 声を上げたのは三上じゃなくて前衛の一人ね。 私の指示に従わずに棒立ちになってた奴だ。


 「いや、しょうがないじゃないですか。 あの状況じゃ誰か一人置いて行かないと前の時みたいに外まで連れ出す事になりますよ?」

 「だ、だからってあんな真似――」

 「そうですか? なら戻ったら? もしかしたらまだ生きてるかもしれないし助けられるかもね」


 私の見立てだと100%死んでるけど。 


 「ふざけないで! あんたが真っ先に逃げ出すからこんな事になったんじゃない! 責任取りなさいよ!」 


 後衛のおばさんがヒスを起こしてキーキーと猿みたいに喚き散らす。 

 正直、見えてた展開だったの驚きも何もない。 精々、来たかーってかんじね。

 

 「ところで降りる前に私が言った事、覚えてます?」

 

 おばさんは知らないわよと元気いっぱいだ。 

 だから比較的、冷静な三上に視線を向けると目を逸らされた。 

 おいおい、フォローを期待したんだけど駄目そうね。 


 「自己責任。 そもそも散々止めたでしょーが、下のモンスターはこっちとはレベルが違うんだから。 このダンジョンで一番雑魚い蟻やカマキリ殺れたからっていい気になりすぎ」


 三上にはちゃーんと説明したんだけどなー。 

 まぁ、最大限、上手くいった所で誰かしら死んだと思うけど。 

 こいつらだと一人か二人死なねーとヤバさを認識しないからいいんじゃない?


 前に結構な人数死んだけど降りるまで上手く行き過ぎたせいかね? 勢い凄かったわー。

 私の物言いが気に入らなかったのかおばさんが持っていた杖をこちらに向け、前衛二人が持っていた武器を同様に構える。


 おやおや、武器が向いちゃいけない方向に向いてるぜ? 

 追いついてきたタイミング的に早い段階で逃げ出したババアと蟻相手に棒立ちになってた間抜けに何かできるの? 前にも散々見て来たけど、この手の連中は土壇場でクソの役にも立たねぇくせにこういった場面ではやたらと声がデカい。


 何故か? 自分が安全であると思っているからだ。

 だから無責任な事も言えるし、好き勝手いえる。 置いてあるゴミ箱に紙屑を投げるような物だ。

 反撃されない相手に文句言うぐらいしか能のないような主体性皆無のカスは最低限、自分の「無さ」を自覚しろ。 


 ――面倒くさいなぁ。 もう、力で黙らせようかな?


 レベル差もあるし、スペックもスキルも散々見た。 まぁ、こいつらぐらいなら行けるかな?

 どうしようかと考えていると――ふと自分が苛立っている事を自覚した。 

 あぁ、選択肢に暴力が上がるのは蓑鋤と引き剥がされて苛ついてたからか。


 

 ――婀唯と引き離されたか。


 蓑鋤は現在地を確認する。 少なくとも第一層ではない。

 周囲は壁がぼんやり光っている事もあって視界は明瞭だ。 特徴的なのはあちこちで流れている川。

 水の音が常に聞こえてくる。 小さく流れるだけの音なら心地よく聞こえるが、ザアザアと叩きつけるような暴力的な流れが生み出す音は余り好きではなかった。


 ぐるりと見回すがモンスターは居ない。 

 一先ずは安全なのだろうが、現在地が不明な以上はさっさと戻る事を目的にした方がいい。

 移動に関しては暗視があるので光源がなかったとしてもそこまで大きな問題はないが、明るいのは蓑鋤からすればありがたい。 見易いに越した事はないからだ。


 何層かを測るにはモンスターと遭遇するのが一番分かり易い。 

 レベル、種類、それが分かれば戻る際の目安にもなる。 

 婀唯の事は実の所、あまり心配していなかった。 彼女はダンジョンに対してはかなり慎重だ。


 無茶はしない。 

 そうでもなければ転移トラップを踏んで平常心でいられないだろう。

 そんな事よりも折角一人になったのだ。 スキル探しを再開しよう。

 

 可能であれば任意でステータスを変換できる上位のスキルがあれば言う事はないのだが、どんなモンスターが持っているのか見当もつかない。 

 

 「取りあえずここがどの当たりかはすぐに分かりそうだな」

 

 振り返ると黄色っぽい配色の巨大な蛇が川からゆっくりと顔を出していた。

 

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― 新着の感想 ―
今回の作品も興味深く、更新楽しみに読ませていただいてます。ありがとうございます。主人公の2人がクセのある性格で好ましいです。特に女の子が現実主義的で共感できて応援しちゃいますw
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