第37話 下へ行く事になりそう
スラッシュマンティスが力尽きて崩れ落ちる。
よし。 今の所は対策がしっかりと嵌まってるわね。
攻撃力があるからまともに貰ったらヤバいけど、防御力も高くないし関節部分を狙えばダメージも通り易く、そこまでしぶとくないから変に油断しなければ問題ないわ。
全部仕留めた事を確認した後、罠の有無のチェック。
基本的に部屋の中には罠はあんまりないから警戒はそこまでしなくていいけど、全くない訳じゃないから確認作業は絶対に必要よ。
配信者の受け売りだけどダンジョン探索は可能な限り丁寧に進める事が重要。
変に先走る奴から死ぬ。 私としては先走って自身の死亡配信をぶちかました奴を何人も見て来たからこれは絶対に必要だと思っていた。
あんまり楽に仕留める物だから他のメンバーがもっと行けそうだとか楽勝だとか口々に言い出したのは正直不味いと思っていた。 正直、ダンジョンや罠よりもこの空気感の方が厄介ね。
可能な限り死なせないように立ち回るつもりだし、それを徹底させるつもりではあるけどこの調子だと調子に乗って死ぬ奴が絶対出て来るわね。 特に下層に下りようとか言い出すと黄色信号だわ。
そんな事を考えていると部屋の奥に宝箱でございと言った感じの箱が鎮座している。
お、今回は当たりだったみたいね。 私は慎重に罠を警戒しながら箱に近づく。
流石に罠看破や解除系のスキルは持っていないので分かり易い方法で安全に行くわ。
後ろに回り込んでから箱の上部を掴んで持ち上げる。
正面には立たない。 浅い層では可能性は低いけど、モンスターが化けている場合――所謂ミミックの可能性や開けた瞬間に箱から爆風が噴き出すなんて事も充分にあるから宝箱の取り扱いもなるべく慎重に、だ。
……よし、罠はないみたいね。
さーて、中身は何だろうなっと。 覗き込むと金属の塊が入っていた。
装備なら助かったけどインゴットかぁ。 触って確認すると「??のインゴット」と表記される。
鑑定しないと正体が分からないようになってるけど感じから鉄か何かでしょ。
生産設備もないからぶっちゃけ要らない。 後で売ろう。
確か迷宮のアイテムに関してはこっちに権利があるから三上達に買わせればいいわ。
「宝箱の中身は何だったんですか?」
初の宝箱だった事もあって興味があるのか覗き込むようにこちらを見る奴が多い。
「インゴット。 詳しくは鑑定しないと分からないけど、たぶん鉄か何かだと思う。 どうしても知りたいなら誰か鑑定の石をドロップした人が居るなら調べられるけど?」
ぐるりと見回すけど誰も何も言わない。 持っていないか出したくないか。
まぁ、どっちでもいいわ。 二部屋でビッグアント10体、スラッシュマンティスが5体。
何を作るつもりかは知らないけど、三上の様子からあればあるだけ良さそうね。
「取りあえず取る物取ったし次行きましょうか」
次の部屋はまたビッグアントだった。 前衛に抑えつけさせて魔法で滅多打ち。
楽勝だったわ。 宝箱はなかったから次ー。
今度はラッシュビートル。 スキルによる突進攻撃で動きとしてはビッグアントと変わらないけど今のメンバーで受け止めるのは難しそうだから躱して壁に突っ込ませた所を魔法の集中砲火で処理。
ポイントはターゲットを絞り易いように固まらずにばらけた状態で囮を送り出す事。
基本的に近くにいる敵を狙って真っすぐに突っ込むだけだからフィジカルの強い前衛職なら躱すのは楽勝ね! 五体出たけど前衛に走り回らせてひたすらに壁に突っ込ませた結果、囮役はお疲れみたいだけどけが人はなし。 うーん、我ながら上手くやってるわ。 ありがとう配信者の人!
宝箱は出たけどまたインゴット。 これも鑑定しないと分かんないから保留。
次の部屋はウォールセンチピード。 このフロアだと一番厄介な奴ね。
名前の通り壁に張り付いて襲って来るムカデよ。 こいつの場合は狭い所におびき寄せるのは悪手だから出くわしたら全員で部屋の中央へ。 とにかく壁から離れるのがベストよ。
そうすると得意技の壁に張り付いた状態からの強襲を使ってこないから比較的ではあるけど楽。
こいつ等の真髄は高速で壁を這いまわる事だから壁から離したら脅威度は大きく落ちる。
ただ、それでも割と厄介なので正攻法で倒すしかない。
前衛が止めている間に後衛が魔法を撃ちまくる。
こっちの手札はそんなに多くないから基本的に抑えて魔法で滅多打ちしかできないのよね。
一応、死者ゼロで勝てはしたけど何人かが軽く死にかけた。 毒も貰ってたから少し危なかったわね。
楽勝とは行かないけど順調に勝って素材も集まってきている。
基本的にここの第一階層は枝分かれした通路から小部屋に入ってそこでモンスターを狩るだけだから戦い方の組み立ては割と複雑じゃないのよ。
他のメンバーも処理に慣れてくれると指示を出さなくていいから楽ちんね!
このまま蟻とカマキリをメインに狩って満足してくれれば良かったんだけどそうも行かないのよねぇ。
正直、永遠に見つからなくても良い物が見つかってしまった。 何かというと下へと通路だ。
下りの坂道がぽっかりと口を開けている。
前衛は顔を見合わせているが困惑よりも多い割合の感情が手に取るように分かった。
自信だ。 俺達、私達はここまでやれたんだからもっと行けるはず。
そんな感じの考えが表情から透けて見える。 やべぇ。
絶対にこいつ等はこのまま下へ行こうとか言い出す。 もう確定的に明らかだ。
突っぱねられるかなと脳内でシミュレートしたけど、結構な確率で失敗している。
……ってか説得に成功する未来が見えない。
「三ノ婀さん」
ほら来た。 どうせ下に行きましょうとかそんな感じの事を言いだすぞー。
「ここまで大きな怪我もなく、全員が無事に辿り着けました。 そこはあなたのお陰だと思ってます」
私は三上のくどい前置きにはぁと生返事。 回りくどいのはいいからさっさと言えよめんどくさい。
「下が危険だという事は重々承知しております。 ですが、我々もレベルアップして強くなっています」
「そうですね」
ダンジョンのモンスターは外のゴブリンやらに比べると経験値的には美味しい。
図体がデカいからか経験値も多い。
恐らく戦闘に参加したメンバー全員がそこそこレベルが上がっている可能性が高い。
早かったら10代後半って所かしら? 私もそこそこ上がっており、さっき25になった。
お陰で新しいスキルを覚えたわ。 ウォーターボールっていう水の球を投げつける魔法ね。
新しいスキルを覚えるのは良い事だけど、変に自信が付いちゃうのよねぇ……。
……どうしたものか……




