第27話 VS巨大サソリ
蓑鋤はそのままパンパンと拳銃を連射。 当たる度にサソリの硬そうな甲殻に亀裂が走る。
発砲音に対して命中した時の音が凄いわ。 撃つ時はパンって破裂したみたいな音なのに当たった時はゴキイとかガコーンみたいな感じになるのヤバすぎ。
子サソリが蓑鋤を脅威と認識したのか一斉に襲い掛かるが手から炎を出した蓑鋤が腕の一振りで炎上させる。 炎に呑まれたサソリはそのまま燃え尽き――ない!?
効いてはいるけど燃え尽きないわね。 何だろう? 炎耐性的な物でもあるのかしら?
可能性として考えられるのは蓑鋤自身の攻撃力不足だ。
戦士なので魔法攻撃系のステータスの伸びは悪い。 あの炎がそっちの数値を参照するなら効き目が薄くても仕方のない話ではある。 なら――
「魔法職の私が行く場面だよねぇ!」
うらぁ! 覚えたての火球を喰らえサソリ野郎!
蓑鋤を巻き込まないように火球を発射。
文字通りの火の玉ストレートを喰らったサソリが更なる炎に包まれて次々に燃え尽きる。
おぉ!? 中々に良い感じじゃない?
それでも一部が突破して飛び掛かろうとしていたけど、蓑鋤は冷静に踵を地面に軽く打ち付けると地面が隆起してサソリを串刺しにする。
死んだ子サソリには見向きもせずに蓑鋤はしつこく銃弾を撃ち込み――直ぐに弾が切れた。
サソリは同時に怒りをぶつけるように真っすぐに突っ込む。 地面が隆起するけど、碌に効いてる感じじゃないわね。 私も火球を撃ち込むけどあんまり効いてない。
さっき鑑定した人がレベル50とか言ってたわね。 なら30差かぁ。
確か蓑鋤は20後半ぐらいだからレベル差はほぼ倍。 厳しいなぁ。
前に出ている以上は何かしらの勝算はあると思うけど、何かあるのかしら?
「――って正面から行った!?」
闘牛士のように華麗にいなすのかとも思ったけど、蓑鋤逃げずに正面から突っ込んで殴りに行ったわ。
挟を横薙ぎに振るうけど、腕で受け止める。 うっそー。
さっき死んだ人は漫画みたいに吹っ飛んでいったのに蓑鋤は微動だにしないわ。
サソリは当てた腕を押し込もうとぐいぐいしてたけどピクリとも動かない。
物理攻撃関係のステータス――いや、ダメージがないから防御関係が高いからなのかしら?
戦士ってここまで伸びたかなぁ? それか暴食で私の知らないスキルを取った?
物理無効は流石にないと思うけど、物理軽減とかなら雑魚モンスターでも持ってるのは居るかもしれない。 蓑鋤は受け止めた状態で前に出ると噛みつこうと開いたサソリの顎を掴むとそのまま引き千切った。 ひぇぇ、残虐ファイト!?
何かよく分からない青色をした血っぽいのが噴き出したわ。
左右に開いて閉じるタイプだから片っぽ千切れたらもう噛みつきは使えない。
反射的か下がろうとしたサソリの背に飛び乗ると蓑鋤は拳を振り上げるとボコボコと殴り始める。
ステータスが乗った一撃は単なる拳骨の枠に収まらず、一発当てる度にゴッとかガッみたいな鈍くて大きい音が響く。 何か硬い物で硬い物を砕くような音が一番近いかも。
周りの野次馬も蓑鋤の戦いぶりに圧倒されているのか、遠巻きに見ている。
ぼーっと見てないで支援職は援護ぐらいしろや!
ステータスアップ系のバフを配れる奴いないの?
まぁ、期待はしてないから私が回復するんだけどね。
うーん、やっぱり魔法使いを取ったのは早まったかな?
蓑鋤のステータスが分からないからHP、MPの管理ができない。
喰らってそうなタイミングや、こっちをちらっと見て来た時は欲しいかなと思って回復を飛ばしてるけど本当に必要かどうかが分かんないのよねぇ。
さっきの一撃もあんまり効いてる感じもしないし、もしかして回復要らなかったりする??
そこまで考えてやめておいた。 回復要らないとかになると私の存在価値が半分ぐらい消える。
うん。 大丈夫、蓑鋤には私が絶対に必要。 間違いない。
……ってか目を離している間に蓑鋤がサソリの甲殻みたいなの剥がし始めたわ!?
そんなエビみたいに殻を剥ぎ取らなくても!
サソリは必死に体を振って蓑鋤を振り落とそうとするけど駄目ね。
落ちる気配がまるでない。 無理を悟ったのかサソリは尾の針で刺しに行った。
蓑鋤の背にぶっとい針が刺さるけど、喰らった本人は一切意に介さずに殻がなくなって露出した柔らかそうな部分を掴んで引き千切り始めた。 ひぇぇ、もっとグロくなった!?
「婀唯!」
蓑鋤の叫びに我に返る。 そうそう、サソリの尾には毒があるんだから解毒、解毒!
慌てて解毒スキルを使って蓑鋤を治療。 動き変わってないけど大丈夫なんだよね?
青っぽい血が噴き出し、できた傷口に腕を突っ込むとサソリの体が僅かに膨らみ籠ったような爆発音。
中で何かぶっ放してるわね。 一発二発と喰らうと流石のサソリもどうにもならなかったのかふらふらと力がなくなっていき――三発目で耐え切れずに内側から爆散した。
血やら肉やらが盛大にはじけ飛ぶ。 私は咄嗟に火球を目の前に出して盾にした。
ジュウジュウと肉やらが焼ける音が響き、周りにべちゃべちゃと肉やら血やらが飛び散る。
服もボロボロで全身血やら肉やらに塗れた蓑鋤が小さく息を吐いて天を仰ぐ姿は美しすぎて絵画のようだ。 蓑鋤、格好いい。 しゅきぃ……。
……ってか私もレベル上がったな。
蓑鋤に解毒と回復連打してるだけで上がったぞ。
これは私が知らないだけで支援職って割とレベル上がり易いの? さっぱり分からん。
まぁ、上がる分には楽になるからいいんだけどね。 おっと、細かい確認は後にしてまずはこの場を離れないと……。
「あの――」
「ごめんなさい。 疲れてるんでまた今度で!」
声をかけようとしている連中に割り込んだ後、蓑鋤の腕を掴むと行こうと手を引く。
蓑鋤は分かったと小さく頷くと私を抱えて跳躍。 そのまま公園から離脱する。
「――ねぇ、何で戦おうと思ったの?」
揺られながら尋ねる。 正直、今回の蓑鋤の行動は不可解だったからだ。
目立つ事のリスクに関しては何度も話した。 私よりも頭がいい蓑鋤が理解していない訳がない。
万博記念公園は前の周回でも人が集まる程度にはにぎわっていたのだ。
あの騒ぎに関しても放っておけば勝手に収束するはず。 私達がリスクを冒す必要はなかった。
「別にそこまで深い考えがあった訳じゃない」
蓑鋤は考えを纏めながらなのかゆっくりと話し始める。
「今の俺なら勝てると思ったからリスクは少ないし、別にあの連中も全員が俺達に何かをするって事はないだろう。 お前は潜在的な敵として捉えているのかもしれないが、潜在的であるなら味方になる可能性もある。 なら、一先ず助けておいても損はないだろって思ったんだ」
……やだ、蓑鋤。 心までイケメン。




