第13話 お巡りさんに呼び止められた
最初のチェックポイントであるスカイビルには簡単に辿り着けた。
最も大きな理由はあちこちでプレイヤーが戦闘を行っているからね。
実際、ジョブと経験値の関係を理解すればステータスの恩恵を受けられるので大抵の人はそこそこ戦えるのよ。
中でも特定の職業に就いている人はかなり有利に戦えるからねぇ……。
そんな事を考えているとホブゴブリンが建物の陰から飛び出して来た。
奇襲ではなく、何かから逃げて来た様子だ。
その証拠に腹には穴が開いており、腸っぽい物がぶらぶらしている。
うーん、グロい。 ホブゴブリンが振り返るとパンと乾いた音がして頭部が弾けとんだ。
それを追いかけるように警察官が二人、拳銃を構えながら姿を現した。
「君達! 大丈夫か!?」
お巡りさんは私達の姿を認めると駆け寄って来るが私の視線が拳銃に向いているのを察して慌てて引っ込める。
蓑鋤が庇うように前に出てくれるけど私が大丈夫と手で制すると大人しくなった。
反射的に庇ってくれるなんて優しい。 しゅき♡
「あ、はい、私達は大丈夫です」
「――という事はジョブに就いているという事だね?」
「はい、ゲームっぽいなって思って色々弄ってたら、行けました」
私の返しに警官二人は苦笑。
片方は油断なく周囲を警戒し、話しかけて来た方は慣れた手付きで弾を交換していた。
さっきのホブゴブリンを仕留めたのは拳銃によるものだ。
警察官や自衛官等、変わった所で言うと反社会的な人達は就けるジョブに「射手」や「拳銃使い《ガンスリンガー》」が含まれている事が多い。
このジョブは序盤では特に強力で最大の強みは拳銃を使える点にある。
モンスターにはあんまり効かないんじゃない?って思うじゃん?
ところがどっこいそうでもないのよ。 拳銃をはじめとする重火器にはシステム的な攻撃力が設定されており、それプラス弾の攻撃力、本人の攻撃力――要は武器、弾丸、使い手の攻撃力の合算が最終的な破壊力になるわ。
それがどういう事かというとあんなちっちゃな拳銃でも持つ人が持つとビルに風穴を開けられるのよ。
ヤベぇわ。 当然ながら弾を消費するけど、銃使い系のジョブは習得スキルに弾丸の精製があるらしいのよ。 つまり最終的には撃ち放題って訳。 ヤバいでしょ??
まぁ、今の段階だとそんなにバカスカ撃てないだろうからそのレベルじゃないけど。
「我々は現在、スカイビルに避難するように呼び掛けているのだが、君達も――」
言いかけているお巡りさんに小さく首を振る。
「お気遣いありがとうございます。 でも、家族が江坂に居まして、避難するにしても無事を確認しておきたいんです」
「……そうだったのか。 これから帰る所なのかい?」
お巡りさんは少し考えるような表情を浮かべている。
何だろう? 怪しんでいる感じじゃないけど何か気になる事があるのかな?
「引き留めようってつもりじゃないんだ。 本当なら危ないから止めなさいと言いたいんだけど、こっちもあまり余裕がなくてね」
当然だろう。 特に通信機器が軒並み使い物にならなくなったのだ。
指揮系統がまともに機能していないはずだ。
大きな警察署などは直接人を走らせて情報の伝達を行ったと聞いた事がある。
その為、交番などの離れた位置に居る警察官達は指示を受けられず、独自の判断で動く事を強いられる。 中には指示を求めて合流に向かった者もいたらしいけどモンスターが徘徊している以上は長距離の移動は困難だ。
特にジョブとステータスシステムを理解していないのなら猶更でしょうね。
他に懸念があるとするなら――アレかな?
正直、もうちょっと後だと思ってたんだけどもう出たのか。
「えっーっとまさかとは思いますけど、強くなったとか言って好き勝手する変なのが暴れてるとかですか?」
お巡りさんたちは顔を見合わせるとややあって頷いた。 マジかー。
前の時も一定数居たのよ。 ゲーム脳を全開にして好き勝手する馬鹿な連中。
レベル上げを急いだ理由の一つがその手の輩に対抗する為でもあったりする。
ただ、ステータスシステムの運用が知れ渡ると徐々に淘汰されていったけどね。
全員がランダムなスキルを与えられているから完全に平等とは行かないけどそこまで極端な差は出ないのよ。 つまり、個人であっても組織に勝つのは非常に難しいって話。
……まぁ、例外は居るけどね。
「そんな訳で出歩くのはあまりお勧めできないんだ」
危ないから指示に従いなさいと頭ごなしに言わないのは場合によっては攻撃される事を警戒してだと思う。
今は全員がどんな武器を持っているか分からない状況なので刺激するのは不味い。
そんな考えでやんわりとした提案を行っているんでしょうね。
反応から既にその手のプレイヤーと戦ったか揉めたかのどちらかを経験済みって感じかな?
いやー、本当にヤベー奴は秒で襲い掛かって来るからまさに世紀末だゼ!
イカれた世界にようこそって感じ。 うーん、この分かってる感じ、この二人は長生きしそう。
「大丈夫です。 彼女は俺が守るんで」
不意に蓑鋤がそんな事を言いだした。 トゥンク。
やだ、蓑鋤。 私と結婚したいって?? 一生守る??
私もウエルカムだけどいきなりは止めてくれませんかね!? ちょっと恥ずかしいじゃない。
「そ、そうか。 気を付けてな」
「はい、ありがとうございました」
蓑鋤はそう言ってお巡りさんに小さく会釈すると私の手を引いて歩き出した。
やだ、強引。 あんまりぐいぐい来るとちょっとエッチな気持ちになるから止めて!?
私がくねくねしている間にしばらくの間、無言で歩き続ける。
完全に二人の姿が見えなくなった所で足を止めた。
「どう思う?」
主語はないけど、蓑鋤の言いたい事は100%理解している私にはそれで充分。
要はさっきの二人が信用できるか否かって話でしょ?
「んー? まぁ、嘘は言ってないと思う。 あの二人がおかしくなってるなら普通に銃使って脅してくるだろうし、今の段階だと銃使い系のジョブって滅茶苦茶強いからね!」
「つまり避難云々は事実か」
「多分ね。 騙して罠に嵌めようって可能性もなくはないけど、ちょっと低めかな?」
ただ、警戒しているなら拠点に鑑定系のスキルを持った人は間違いなく居るからステータスを調べられるとは思う。
正直、記憶遡行って持ってるのをバレるとあんまり良い事ないのよね。




