剣を捨ててでも
「あ、あぐ」
俺の腹をハーゲンダッシュの雷が貫いた。
「もう、終わりだろう、安らかに眠れ、ん?」
ハーゲンダッシュは俺がぴくぴくと手足を動かした事に気付いた。
「もう一発食らわせ終わりだ」
ぐっ、もう体が動かない。
遂にハーゲンダッシュの雷が俺に向け発射された。
次の瞬間だった。
ティルが横からばっと俺の前に立ちふさがり、代わりに腹を貫かれた。
「!」
ティルはすぐには倒れず、腹を押さえ必死で立っている。
ハーゲンダッシュは表情を変えないが目が少しだけ驚いている。
「はあっ、はあっ」
「何故そんな事をする? この男に惚れているのか」
ティルは少しだけ微笑んだ。
「それもあるかもね。それに何としても彼をここで死なせたくない最後まで役割を全うしてほしいからよ。私はここで死んだとしてもスカーズはここで死んじゃいけない」
「何の感情だ? 愛か?」
「そうね。でもそれだけじゃなく彼なら役割を全うしてほしいと言う『信頼』よ」
「信頼?」
「そうね、貴方はいるかしら? そんな信頼したりされたりする相手が」
ハーゲンダッシュはこれに切れティルを殴った。
しかし、ティルはすぐ起き上がりまたかばう姿勢を見せた。
「それに、スカーズは貴方が同族だから殺したくなかったのよ。理想郷に行ってほしいと思ってるのよ」
「俺が理想郷へだと? それに奴はまだ本気を出してないとでも?」
「本気で怒った時の彼は私もまだ見た事がないわ。貴方も怒らせない方が身のためじゃない?」
またもハーゲンダッシュはティルを殴ろうとしたが俺はすんでで止めた。
ハーゲンダッシュの手首を怒りを込め握った。
「……」
「女を二発も殴るだと……そろそろ堪忍袋の緒が切れるぞ」
「まだ力が残っていたか」
「俺は君を何とか殺さず改心させたかった。でもそろそろ俺も我慢の限界だ」
「俺を改心させるだと? 俺の心は隅から隅まで人を殺す事しかない」
「俺は怒りだけじゃない。ティルが言った様にどうしてもしなきゃならない使命があるんだ」
「その女を殴られた怒りか? それとも使命遂行の為か?」
「人間、いや神だけど、怒ったり行動する理由は一つでなくてもいいだろ」
「まだやるのか」
「ああ」
俺は剣を捨てた。
「何?」
「素手で勝負してやる」
「正気か?」
「俺の付け焼刃剣術じゃお前には勝てない。でも素手の時の方が神として集められるエネルギーは大きいんだ」
「では、俺は剣を持ったまま戦うぞ」
いきなり水平切りが飛んできた。
これを少し粗い動きでかわした。
少し間合いを取る。
「貴様の間合いは剣術の間合いだ。馬鹿か? それで剣術に勝てるわけないだろう」
「でもあんたは気分的に素手で戦いたい。それともあんたの拳は女を殴る時だけつ使うのかな」
ついにハーゲンダッシュは切れた。
しかしかわしてカウンターパンチを浴びせた。
「ぐぐっ!」
俺は殴った。
ハーゲンダッシュも殴り返してきた。
ラリーは続いた。
俺は大地と空の神だけじゃない。
転生前の神成翔の人間のスピリッツもあるんだ。
「転生前の俺は人間の中学生なんだ」
「何だと⁉️」
「俺はバスケットをやっていた時『どへたくそなのに熱い!』と言われた男だ。一番へただけど熱いと言われたんだ」




