特訓2 ティルの過去と涙
2024年9月22日改稿しました。
「後ね『パラメーター能力振り分け』って言う神族特有のスキルがあるの」
「パラメーター振り分け?」
「そう、レベルアップ時にどの能力を伸ばすか選べるの」
「ゲームみたいだね」
「げいむって何? でこれを貴方の成長に置き換えると、貴方は『防御』を大きく上げると良いわ。そして剣術の伸びは犠牲にして」
「何故?」
「貴方は直ぐには腕力と剣術の腕は上がらない。その代わり神術の遠距離攻撃と防御を上げるの。例え遠距離攻撃でも反撃が来るでしょ。すぐやられたらそこでおしまい。だから頑丈な体を作るの。じゃあ今から私の素手攻撃避けずに全部受けて」
「え?」
ティルは俺を殴った。
「いてえ」
「耐えて。まだ本気じゃないわ。はあ!」
「いた!」
「痛みに耐える程大きく防御に振り分けられるようになるわ」
「痛い、痛い!」
「頑張って! 頑張って!」
ひとしきり二十発ほど受けた。
「よく頑張ったね。これで大きく防御が上がるよ。例えばあのゼッツリオンに殴られても」
ロミイが来た。
「二人だけで私は蚊帳の外?」
「少し休憩しましょう」
俺は話した。
「ティルは何故そんなに勉強とか頑張ったんだい?」
「親が言ったから、子供の頃から一日何時間も勉強しろって。で成績も九十九点じゃ駄目で百じゃないと怒るの」
「ひええ!」
「それって愛情で言ってるの?」
「最初は世間体か独善でやってるんじゃないかと思った。辛くて一人泣いちゃったりね。生まれつきの能力検査が高かったの」
「何かひどいね。親の見栄とかなんじゃ」
「でも段々親は私を見栄の為に使おうとしてるんじゃないかとか、勝手にいい学校に行かせて喜んでるんじゃって思って行った。その通りだった。でも例えば医者みたいに人を救う仕事に就かせたい気持ちも少しあったみたい。でも大半は独善と見栄よ。それが分かりかけてきたら今度は『君を先生にする』って話があって頭のなかこんがらがっちゃった。でも初めて父さんは『あまり負担が大きくなりすぎるとあれだから辞退しなさい』って言ったわ。私の事心配してたんだ。父は『厳しく優しい人』で母は厳しい上に優しくなかった。本当はいい人だと信じようとしてたのよ」
「でも辞退しなかったの?」
「うん、よく考えて『自分が何かの役に立てる人間になろう』と思ったから。きつかったけどこうして貴方達二人にも会えたし」
「おっ、上手い締め方」
「私友達あまりいないしね。人が集まらなかった。でも今将来最強の戦士になる人をこうしてトレーニングしてて自分でもワクワクしてきちゃった」
「良かったね」
「昔は母親同士『どっちが出来がいいか』比べっこする環境だったの。私は最初学校で二番だったんだけど一番になりなさいと母親に強く言われたの。で私が一番になって元一番の子がやる気なくして勉強しなくなった。私のせいよ。虚しくなって言ったわ。だから理由付けをする必要があった。将来他人の役に立つ仕事がしたいからって。でも親の期待に応えるのとの板挟みで。結局褒められたかったのね」
「……」
「段々激しい競争の中で人を傷つけた事を忘れそうになった。下から突き上げて来た子を今度は傷つけた。でさらに冷たくなって行ったわ」
ティルは続けた。
「でもね、私の友人で私とは違い『親に言われたからでなく自分で猛勉強して同じ学校受けた子』がいたんだけどその子は落ちたの。でも私はその子が私より努力してるって知ってたから学校に『私を落として彼女を合格にして下さい!』って頼んだの。でも彼女は『何でそんな事をすんのよ! 私にだってプライドがあるのよ! 大きなお世話だわ! あんたとは絶交よ!』って怒って怒鳴った。私は何て事をしたんだって思った」
「……」
「同期の強豪戦士を次々倒したわ。苦しかった。屈強な男性ばかりで。ぼろぼろになりながら勝ち抜いて行ったわ。で友人に言われたわ『ティルって良い人だけど能力で人を傷つけるね。実は皆を見下してるんじゃないかって言ってる人いるわ』『!』衝撃を受けて苦しくて痛かった。本当は友達が欲しいけど競争相手ばかり。親は同級生をライバルとしか見てない。でも本当に悪いのは私、親の愛情が欲しかったのよ」
ティルは見えない様に涙をぬぐうそぶりを見せた。
ロミイは言った。
「能力で人を傷つける、って、そんなひどい言葉あるんだ」
俺は言った。
「大変だったんだね。ティルって弱さを見せない人に見えるけど」
ロミイは言った。
「じゃあお母さんの期待に応える為?」
「でもそれだけでは気持ちが維持できなかった。でも天界騎士には私の母みたいに見栄で偉くなろうとする人ばかりじゃなく本当に人を守ろうとする立派な人が多くいた。それで他人を救う為に生きようと変えられたの」
ロミイは言った。
「変えられて良かったわね」
「ありがとう」
俺は言った。
「今は迷いや疑問がなくなり正しい考えが持てたんだね」
「こんなに自分の事話したの初めて。貴方達二人には話せるわ。貴方達と友達になれてよかったわ」
ティルは今までにない笑顔を見せた。
眩しく見えた。
ロミイは言った。
「でも、あまりスカーズさんの性格変えないで」
「大丈夫よ、彼本質的な優しさを失わないから」
ティルは寂しげに少し微笑んで言った。
「本当の友達が欲しかった。でも私きつい事言っちゃうから無理かな」
「そんな事はないわ」
特訓は再開された。
「今度はエアカッターが返された時受け止めたり投げ返す『返し技』特訓よ。あとエアショットを連続で撃てるようになると良いわね」




