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【閑話】魔道教室①

ムーン・レナ・シュヴァルツリヒト:今作の主人公でシュヴァルツリヒト伯爵令嬢。魔女になりたい

ソフィア・ルーン・シュヴァルツリヒト:ソフィお婆様。主人公・ムーンの祖母で、尊敬すべき魔女の先輩

リリア・クライスラー:主人公の乳兄弟で姉のような存在。伯爵家の次期メイド長となるべく修行中。実は剣が扱えて強い

セラ:シュヴァルツリヒト伯爵家に仕える下男。黒猫に変身出来る。隠密が得意

ジルヴェスター・ファーレンハイト:シュヴァルツリヒト伯爵家騎士団の第一部隊長。熱血漢


アドルフ・ノア・ヴァイスシュタイン:ヴァイスシュタイン公爵家長男で主人公の元婚約者。正義漢

マリウス・リースベルク:ヴァイスシュタイン公爵家の参謀役

ルドルフ:ヴァイスシュタイン公爵家の騎士団長

カーネギー:ヴァイスシュタイン公爵家の相談役


エムロード王国:今作の舞台となる国。王子が3人、王女が2人いる

聖クラウディア教:エムロード王国建国の王を支えた聖女クラウディアの教えから生まれた。教会は王国内の各地に存在している。

王立魔術学校:聖女クラウディアが創設した歴史ある魔術学校。王都に存在している。

「マリウスさん! 今のうちに、私に魔道を教えてください!」

「――何ですか、騒々しい」


 今後の方針を決めて解散してから、いったん訪れたのどかな午後。

 お婆様の家のドアをばーんと開けると、お婆様と一緒にテーブルでお茶をしているマリウスの姿があった。

 私を呆れた声で迎えるマリウスに、今でなきゃいけない理由を説明した。


「ほら、準備が出来たら私はここを発たなきゃいけないじゃないですか。

 お婆様の家での魔道の勉強は、しばらく出来なくなるんですよ!

 この家にある本たちとも、当分のお別れになってしまいますし」

「これまでにも、貴女はここで勉強していたのでしょう? その割に、貴女が実践で使える術は少ないようですね」


 痛いところを突かれてうっとなる私に、お婆様がフォローしてくれた。


「ムゥは、魔術の基礎となる理論解説の本はよく読んでいたけどねえ。

 ここの本棚に実践系の魔術書は多くないし、記述から応用を利かせないといけないものが多いからね。魔術というものは」


 そう。

 魔女に憧れてお婆様の家にある本を色々と読んではいるのだけど、実践でどう役に立つのか、よくわからない本ばかり。

 精霊や妖精にまつわる神話の本も多かったし、それは面白かったのだけど…。


「…まあ確かに、しち面倒くさい言葉を並べている割に、実践で何をどうすればいいかというのをあまり書いてありませんよね。魔術書というのは。

 仕方ありませんので、少しなら教えて差し上げましょう。時間も限られていますがね」

「あ、ありがとうございます!」

 希望の光とばかりに、ぱっと顔が綻ぶのが自分でもわかる。

 胸の前で手を組んで感謝を伝えた。


「その代わり…」

 ゆらりと立ち上がると、彼の長いアッシュグレイの髪がふわりとたなびく。


「貴女からお願いされたのですから、手加減はしなくても良いのですよね?」

 こちらに向けたマリウスの微笑みは、今までに無いくらいにきらきらとしていた…。




「―――まず、基本中の基本なのですが…。貴女は、普段瞑想をしていますか?」

「あー…本で学んだことはあるのですが、続いていないです。なんだか、あまり効果の実感持てなくて」


 気まずそうにそう答えると、やはりと言った様子で軽くため息をつくマリウス。

「三日坊主という奴ですか…。あれは、貴女の想像以上に重要な鍛錬ですよ。

 魔法力の源は心から。…自身の精神状態と直結していますから。

 無心になり、雑念を払うことで心の中をクリーンにします。

 また、自分の思い通りのイメージをするトレーニングは、魔術の予行練習とも言えます」


「お婆様にもこれまでに何度となく言われていたことなのですが…どうにも続けられなくて」

「ムゥは昔から、じっとしているのが苦手な子だったねえ。ふふふ」

 お婆様が昔を思い返しながら懐かしそうに言う。

 昔はお婆様と出掛けた森を駆け回っているのが大好きだったなぁ…。


「とにかく、まずはやってみましょう。瞑想の仕方はわかっていますね?

 …ああ、その恰好ではいけないのであちらで着替えてきてくださいね」

 言われるままに、髪をまとめ、お婆様の家に置きっぱなしの畑作業用の服に着替えてきた。


 胡坐を組むような態勢で座り、両手のひらは上に向けて膝の上に置く。

 そして背筋を伸ばし、そっと目を閉じた。

 息を吸って、…ゆっくりと吐き出す。繰り返し深呼吸。

「…」


(そして雑念を払って…無心になる…)

「… … …」


 そして数分後。

(………マリウスさんは、何かしてくるつもりかな。ちゃんと無心になれているかどうかのテストとか)

「…今、何か考えていましたか?」

「えっ、…どうしてわかったんですか??」


 思わず目を開くと、近くで私の様子を伺っていたマリウスの蒼い瞳と目が合った。

 彼は、集中出来ていなかった私を責めるでもなく、くすりと笑った。


「貴女は思っていることがすぐ顔に出てくるのでわかりやすいですよ。

 …まあ、瞑想は誰かに見られながらするものでもありませんからね。

 起床時や寝る前にでも、習慣化することが出来れば良いと思いますよ。

 あとは…そのままイメージの訓練でしょうか」

「イメージですか…?」


 イメージの訓練と言うのは、やったことが無い。

 ピンと来ない私に、マリウスは続けて解説した。


「心の中に映像のイメージを出したり、消したりするのです。

 例えば…貴女にとっての相性の良い精霊は何だと思いますか?」


 そう言われてこれまでの自分を思い返してみても、ピンと来るものが無い…。


「まだよくわからないのです…簡単そうだからと、火や水の精霊魔法(ソーサリアン)を試したことが少しあるくらいで」

「では、それらのイメージを一つ一つ行ってみましょうか」

「はい。ではまず、火からですね」


 と、地・水・火・風・光・闇の元素のイメージを順番に行っていった…。

 こうして魔女の家の午後は、静かに、ゆっくりと過ぎていくのであった。

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