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公爵家は伯爵家と婚約破棄したい

 ――ヴァイスシュタイン公爵邸。

 エムロード王室を支える三大公爵家の一つなだけあってその屋敷は広く、私なら必ず迷う自信がある。

 広々とした中庭を通り抜けて長い廊下を案内された先、数十人は入れるであろう豪奢な応接室の主の席には公子アドルフが座り、アドルフ直属の騎士団と執事やメイド達が後ろに控えていた。

 応接室の壁には歴代公爵の肖像画が並んで掛けられていた。


 …ここまで来る間に使用人や、アドルフ公子の親族のような人々と何度もすれ違った。

 私の急ごしらえのみすぼらしい恰好を見てヒソヒソしているように聞こえたのは気のせいだろうと信じたい…。


「恐れながら、シュヴァルツリヒト領公女、ムーン・レナ・シュヴァルツリヒト。参りました」

「…まずはそこに座ってくれ」


 スカートの端をつまんで挨拶すると、彼はこちらを見もしないで私のすぐ近くのソファを指して促した。

 アドルフの席の近くには年配の男性が数人座っている。彼の両親では無いはずだ。


(何よ…私のことはもう見たくもないって?)

 促されて、私とリリアはテーブルの端の席に座る。

 彼の姿を直接見るのは6年ぶりだろうか。

 彼が士官学校に入る直前に一度会ったので、それくらいのはずだ。

 肖像画からそのまま出てきたかのよう――いや、それ以上にたくましく精悍になった。


 しかし6年前の彼の姿を思い起こし懐かしい気分に浸る余裕もなく、私の心は不安といら立ちに支配されかかっていた。

 今回の呼び出しの訳を知りたい。

「あの…」

「すまないが、こちらから先に言わせてくれ」


 遮られて私のいら立ちはさらに加速した。

 さっきから何を自分勝手なことばかり言っているんだ。

 私の知っているアドルフはそんな人じゃなかったはず…。

 しかし今のアドルフは、私とは目を合わそうともせず、近くの席に座っているご老人と話しながら書類と交互に目をやっている。


(いったい、何を――)

 しびれを切らしてさらに言い募ろうとした時、彼よりも先にご老人が口を開いた。

 グレイの髪を綺麗に撫で付けていて、眼鏡を掛けている。


「さて、突然お呼び立てして申し訳ございません。シュヴァルツリヒト伯爵令嬢。

 私はヴァイスシュタイン公爵家相談役のカーネギーと申します。

 今回のご用件は他でもない。アドルフ様とあなたとの婚約を破棄したいとの、公爵家からの申し出にございます」


 ―――は???


 私とリリアは、ぽかんと同じ顔をして口が開いたまま閉じられなくなってしまった。

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