めんどい
女性が暗い夜道を走っていた。
「は、は、は。ここまで来ればっ!」
「もう鬼ごっこは終わりか?」
いつの間にか女性の後ろに誰かが立っていた。
それは人ではなかった。いや、正確に言えば人の形はしていた。だが、雰囲気が明らかに人間ではなかった。
「ひっ!だ、だれか!だれか!たすけて!」
女性は化け物の禍々しい雰囲気に気圧されていた。
「誰もこねぇよ。俺の力で此処には誰もこれねぇ。大人しく俺に殺される事だな。そしたら、楽に殺してやるよ。」
化け物は嘲笑を浮かばせながら提案した。
「おやおや、それは優しい事ですね。」
そんな、化け物に対して声をかける者がいた。
「誰だ!」
化け物は声の発生源を探っていた。化け物は自分の力に信頼しているため、目の前の女以外の声が聞こえることに驚いていた。
「此処だよ、此処。」
化け物は背後から聞こえる声の方を向いた。
「てめぇは魔法少女か?」
「そうだよ。と言ったらどうする?」
化け物の正面には少女が立っていた。
少女は夜闇に溶け込むような黒いドレスを着ていた。明らかに小学生にしか見えない背丈をしているのに大人な空気を纏っている。
「此処で殺す!」
化け物は一瞬にして少女と距離を詰めて拳を振り下ろした。
「へぇ、能力が強いから。身体能力は低いのかなと思ったんだけど、普通に強いね。」
「ば、馬鹿なっ!」
少女は化け物の渾身の一撃を片手で受け止めいた。
「まぁ、俺の方が上だけどな。」
「ぐぁぁぁぁ!!!」
少女はそう言い終わると、化け物の拳を握りつぶして腕ごと引きちぎった。
「これならどうだ!!」
化け物は近接が不利だと分かると、魔法を放って遠距離攻撃に移行した。
「はぁ……めんどいなぁ…」
化け物は遠距離攻撃に移行してから少女が回避と防御しかしていない事からやはり相手は近接特化の魔法少女だと確信した。
「まあ、関係ないけどね。」
「なに?!」
少女は化け物の攻撃に壊されて生まれた瓦礫を蹴り飛ばして化け物に攻撃をした。瓦礫は化け物の魔法より威力も速度も上だった。
「う、嘘だ。俺の魔法がこんな蹴っただけの瓦礫より下な訳がない!」
そんな化け物の思いとは逆に少女に蹴られた瓦礫は化け物の魔法を撃ち破り化け物に当たり出した。
「別に近づかなくても、君を殺すのなんて訳はないんだよ。」
「う、うわぁぁぁ!!!」
化け物は少女によって生み出される瓦礫の雨にもう魔法を打つこともできなくなっていた。
少女はこのまま化け物を嬲り殺しにするつもりだ。
「うん、終わったな。」
「がっ、ひっっっ」
「あれ?まだ生きてたんだ。あいつらが来る前に終わらしたいから。さっさと死んでね。」
少女は瀕死の化け物の頭を踏み潰して殺した。
「あぁ、思ったより飛び散ったな。」
「あぅ、あっ、」
「大丈夫ですか?」
女性は、少女の質問に答える事は出来なかった。目の前で化け物を潰したことによって女性は血まみれになり、そして、その事をなんでもないように見る少女に対して女性は化け物より上の恐怖を感じた。