序章
俺の名前は権兵衛。薬師田ってとこに住んでてよ、みんなからはホラ吹き呼ばわりされてんだ。まあ、それも仕方がない事だと思うけどな。今日は、村の用事で街まで来たんだ……。え?どんなホラか聞きたい?……なんだい、あんた俺の話に興味があるのかい?んー、そうだなぁ……話を聞きたきゃ酒をくれ。え?今のは何かって?はは、天狗の国の諺さ。信じてくれねえと思うけどよ、俺はあんたくらいの時分に天狗から不思議な術を貰って出瑠出亜国っていう天狗の国を旅したことがあるんだよ。……え?興味があるから酒を奢ってやる。だから話せって?……まあ、そう言われちゃ仕方がねえな。へへ。おう、姉ちゃん、お銚子を二本ばかし持ってきてくんな。へへ、あんたも物好きだな。え?早くしろ?はは、慌てちゃいけねえよ?まあ、酒が来るまでこいつでも読んでくんな。俺がグウミルって奴から貰った手紙でよ。……まあ、なんて書いてあるかわかんねえんだけどな。天狗の国の言葉とは違うしよ、何が何だか……え?読め奴を知ってる?へえ、じゃあ、そいつも天狗の国に行ってきたのかもな。
お、酒がきたな。……くぅ〜、美味えなぁ……。ああ、わかってるよ。じゃあ、まずは俺が天狗の国、出瑠出亜国に行くところから語るとするかねぇ……。