Sub Story 火の神と木の神
6人分の神様の話が続きます
そのあとに本編に移行する予定です。
「炎姫さま。今年のお供え物です。お受け取りください。」
火を司る神である男は毎年懇意にしている種族であるドワーフからこう言って供え物をもらっている。
食べ物を必要とせず、技術も地上生物より圧倒的にある神にとって“物”の価値としての供え物などないに等しかったが、その気持ちはとてもうれしいもので、寒く、作物の育たなかった土地を少し温め、住みやすい土地に変えたり、天啓として武器の知識などを教えたりしていた。
ここのドワーフの村は近くに因縁の敵であるエルフが住んでおり、小競り合いがちょくちょく起きている。
「あの木の神が余計なこと教えなければな…」
そう、エルフは呪文を必要としない奇跡(魔法のようなもの)を使えるものがごくわずかにおり、攻撃などのものではないものの、回復が早まったり、病気が治りやすくなったりするなどの効果があったため、それを覚えてからはドワーフにも強気に出てくるようになった。
ドワーフは力も体力もあり、今のところ危機的状況に陥ってはいないがこの先が不安である。
火の神もドワーフたちにそれとなく使えるようにしようとしたのだが、短気なものが多く、種族的なものなのか、使えるようにはならなかった。
「そろそろ大きく出るか…ドワーフたちの不満も大きくなっているらしいしな」
そう、ここの村だけでなく、各地の村でこういった小競り合いは行われており、死者も出ていたため、火の神も少しうっぷんがたまっていた。
ちなみに男であるのにもかかわらず炎姫と呼ばれているのは、天啓を下すときにふざけて女言葉を使ったところ本気で勘違いされ、引くに引けなくなってしまったからである。
決してそういう趣味は持っていない…本当だよ!!!
「さあ譜の時間だぞ!全員集まれ!」
これは火の神をたたえるためにドワーフたちが始めた言葉である。
今でいうお経のようなものであり、全員で神様の詩を朗読するのだ。
―炎を以てわが敵を倒せ
―わが敵を倒さんとするものわがもとへ集まれ
―踊れ狂え叫べ舞え
―その持てるすべての力を開放せよ
―その封印されし力を開放せよ
―照らせその先を
―焼き払えわが道のために
―踊れ狂え叫べ舞え
―刮目せよわが雄姿に
―一人の私のために
「…はずかしっ」
―・―・―・―・―・―・―
「神様!なぜ私には奇跡の力がないのでしょうか!なぜ家族を助けられないのでしょうか!」
懇意にしているエルフから毎日このような嘆きを受けるのは木の神である。
この世界にはもともと微量の魔力が存在し、それに強い適性を持つ者がいた。
そこに木の神は奇跡を起こす方法として、天啓を与えたのだ。
だがそれはかなり運に近く、また、奇跡を起こせる人も限られていて、村でも2人から3人くらいであった。
それでも力のある者の奇跡は、成功率が80パーセントくらいあり、本来完治に数か月かかるような骨折などを一週間ほどで治して見せた。
だが、もちろんそれでも救えない者は多く、日々病気やけがなどで、エルフの数は減ってゆく。
それが自然の摂理であることに変わりはないのだが、やはり感情的になる者も多く、こういった風に神様に向かって嘆いているのである。
「そういわれたってこればっかりは個人の能力だからなー。せいぜい私は潜在能力を覚醒させることくらいしかできないんだよな。」
そういいつつ、神は空から、どこにいるのかもわからない神に向かって嘆く青年の姿を見て立ち去った。
「それでも作物が成長しやすいように土の養分を増やしたり、雑草が生えにくくしたりしたんだけどな。まあこっそりとだから気づいてくれないかな。」
自分の無力感に罪悪感を覚えつつ、ふらふらといろいろなエルフの村を見て回るのが木の神の日常だ。
もちろん自分が能力を覚醒させた影響で、ドワーフとの小競り合いがだんだんエスカレートしていることは知っていたが、めんどうな案件そうだったので見て見ぬふりをしていた。
もちろん本気で攻めてきて、肩入れをしているエルフが大きな損害を受けるのは非常に癪なので、その時は本気でやるつもりではあるのだが。
「でもそろそろ何かアクションがありそうだよなー。あの火の神も何考えてるかわからないし、私ももうちょっと手厚く支援しようかしら。」
少しだけ少しだけと、エスカレートしているその支援に気が付いているのかはわからない。
だが戦争の足音が遠いながらも、着実に、一歩ずつ近づいてきている。
「おかーさーん!あのお話またきかせて!!」
「はいはい。本当にあなたは神様のお話が好きね。」
「うん!私の夢は、神様に能力を授けてもらうことなんだー」
元気な子供がすくすくと育っているのは平和な証拠であるのだろうか。
その時になるまで誰もわからない。
―わが力でそのものを癒せ
―力あるものが力なきものを救う
―自然を信じ自然に信頼されよ
―惜しむなその最後の最後まで
―舞え、踊れ、認められるまで
―踊れ、歌え、すべてを救うまで
―力に限りは無いと知れ
―自然と一体となりその抱擁に身を任せ
―さあ行かん、その先へ
―さあ行かん、すべてを超える力のために




