myth.6 急に求婚
どうも作者でふ。
実は随分前に出来ていたんですが、その、更新するのを忘れていました。
すんません。タイトルらはダジャレではけしてありませんので!はい、うん。
myth.6 急に求婚
初めての執行から数日、あの日はなんか疲れる一日だったな。
僕は今二回目の執行の最中だった、と言っても僕の担当?の妖怪ではない。
目の前にいる執行対象は一括りにいえば魔物と呼ばれるものだ。青白い肌に鋭い牙、それに赤い瞳、吸血鬼族の特徴を持ってはいるが一番目を引くのは額に生えている角だろう。つまり吸血鬼族と鬼族の混血だ、と父様に言われた。
「貴様、俺様になんの用だ……。」
そいつが僕に気づいて話しかけてくる。
今から君を殺すよなんて言ったらどうなるだろうか。
正直なぜ殺すのか、その理由は僕も分からない。理由を言うとすれば父様に言われたからと言うしかない。
「僕はソール、サウピヤシトの住人だ。」
サウピヤシトとはあの塔の名前だ。
そして、僕がこの名前を出した一瞬、彼の顔が恐怖で歪む。
「俺様を消すのか?」
「そういうことになるね。」
どうやらイヴ様の言っていたこの塔は嫌われているというのはこういう事なのだろう。
この塔は殺しを行っている、それはまぎれもない事実だ。そりゃあ理由もなにも知らないであの塔は殺しをしているなんて聞いたらいい印象なんてまぁ抱かないだろう。
「本当に消せるとでも思ってんのか?お前が、俺様を。」
「思ってるさ、本気でね。」
僕は手元に自身の神器である黒龍刀を発現させる。
刀身は黒く、龍の口から刀身が出ているようなデザインの刀だ。
「相棒、こいつを斬ればいいのか?」
そして喋る。
そう、僕の神器には意思がある。父様にもイヴ様にも珍しいと言われた。
「うん、いくよ、りゅーちゃん!」
「おう!」
僕は魔力を開放させて腰から翼と尾を発現させる。
そのまま翼を羽ばたかせ執行対象の目の前に詰め寄る。
「やるじゃねぇか。」
執行対象はそう言うと後方に、それも少し角度をずらして飛んだ。
僕はそのまま黒龍刀を振る、すると黒龍刀から斬撃波が発生し奥の木を真っ二つに裂いた。
少し広けた森の中、対象はこの土地をよく知っているのか木に隠れながら攻撃を仕掛けてくる。
これでは埒が明かない。
こんな事を考えている間にも対象は攻撃の手を緩めることはなく、ナイフを無限に投げてくる。全てを捌くことは出来ず何回かはそのナイフに体を傷つけられる。
「おいおい、俺様をぶっ殺すんじゃなかったのかよ!」
僕を煽る声が聞こえる、でも何処から聞こえるのかは分からない。
心無しか視界が狭まっているように感じる。
僕は黒龍刀を握る手に力を込めて横に振り下ろすのと同時にクルっとその場で一回転をする。
すると黒龍刀から発生した斬撃波が円形に変化し僕からおよそ半径数十mの円を描きながら木々をなぎ倒していった。
対象は隠れる場所がなくなりあたふたしている。
「これで隠れることはできないね。」
「隠れるなんざ、腰抜けのやることだぜ!」
僕は対象の目の前に瞬時に移動して黒龍刀を振り下ろす。
対象を空間ごと真っ二つに裂くと対象は息絶えた。
僕の神器、黒龍刀は全てを斬り裂く。物体はもちろん空間や魂、人と人を繋げる縁のようなものも斬ることが出来る。
もちろんりゅーちゃんの意思と僕の意思が一致したらの話だけど。
「りゅーちゃんお疲れ様。」
「おう相棒。またなんかあったら呼んでくれや。」
そう言うと黒龍刀は光となって僕の手元から消えていく。
ふと真っ二つになった対象の方に目を運ぶ、魂まで斬ったので転生は出来ず、魔界にも天界にも行けず存在そのものが抹消されるのだろう。
この世界において死という概念はあるにはあるが寿命という概念はない、その概念が適用されるのはイヴ様とアダム様のみだ。そのためこの世界は生命が溢れてしまっている、そのまま行けばこの世界は崩壊するだろう。そうならない為に僕達がいる。この世界にとって害をなす者、悪行を働いている者、そんな奴らをこの世界から消し去る。そうする事でこの世界を維持しているのだ。
周りからどう言われようとこれは必要なことなのだ。これが父様から言われた必要悪というものなのだろうか。
まぁそんなこと考えても仕方ないか……。
僕は息絶えた対象に向かって手を合わせてその場を離れた。
空からの追跡に気づかずにーー。
それから僕は翼を生やして空を飛びながら塔への帰り道を辿っていた。
のだが、これはまずい。
一向に塔の姿を確認できない。それに頭がクラクラしてきている。原因は……あの時のナイフになにか塗ってあったのか。
まずい、魔力が維持できない……。
そしてついに翼が消えて僕は空から落ちる。
だんだん地面が近くなる、あれに打ち付けられて僕は死ぬのか、呆気ないな……。
と思ったその時、なにかが僕の体を包んだ。ほのかにあたたかいなにかが。
そこで僕の記憶は途切れたーー。
目を覚ますと大きな天上が見える、それに体はフカフカの布団に包まれて、隣には誰かいる。
ん?誰かいる?なんで?え?
するとその誰かが目を覚ました。
「ん、起きてたんだ、おはよう。」
目が大きくて、顔小さくて、瞳の色は虹色で髪も虹色の男の子?が僕の頬にキスをしてくる。
「ふふっ、なにがなんだかわかんないって顔してるね。」
その通りだ、なにがなんだかわからない。
「俺はウェザー、ウェザー・マッド。君に一目惚れをした一匹の龍だ。」
そのままウェザーはこう続けた。
「君にはなにか龍を魅了するものがある。さて、話は飛ぶけど俺のお嫁さんになってくれないかい?」
急に求婚された。ダジャレじゃないよ。
「えっと……。」
困惑しすぎてこんな声しか出ない。
「悪いようにはしない。と言ってもこんな急に言われても……か。」
自分でわかっているのならなぜこんなことをしたのだろうか。
それよりもここはどこだ?僕は確か空から落ちたはず……。周りを見渡すと、見る限り窓はなく、この大きなベッドのみの部屋?なのか?それとも家なのか、少なくとも建物の中に居ることは間違いない。
「ここはどこ?」
「ここは俺の隠れ家だよ。」
隠れ家ねぇ……。隠れるってことはなにか悪いことでもしたのかな?
「君が空から落ちるところを俺が助けてここまで運んできたんだよ。」
助けてくれたのか、でもそれでお嫁さんになってくれはおかしくないかい?
「そうだ、まだ君の名前聞いてなかったね、お名前教えて?」
なんか子供扱いされてる気がするけど。
「そ、ソール……です。」
なぜか敬語になってしまった。
「ソールか、うん、君はオレの太陽のような存在さ!だから俺のお嫁さんに!」
「なりません!」
僕はそう言ってベッドから出ると扉を開ける。
するとそこは、空の上だった。
「な、なんじゃこりゃぁぁぁぁっ!?」
どうも作者です。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
急に求婚ってことで、劇中でもソールはモテモテですね、羨ましいです。
今後もこの一目惚れ方式はソールに対してのみ多くなります。それは何故なのか、ちゃーんと理由がありますので。
作者は全てのキャラクターを掘り下げ気はありません、というより掘り下げる時間が無いです。
ですがコメントでこのキャラクターを掘り下げてーなどがありましたらぜひぜひ書いてください、実現するかも!