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真紅の果実と玉虫  作者: 神咲凛月
7/10

myth.5 彼の匂い

作者です。

前回のお話は鬼のように短かったので今回は早めに次話を公開します。(実は更新するのを忘れてたなんて言えない)

サブタイトルが 彼の匂い なのですがこの彼とは狐森ユウマ君のことです。

さて、前書きはここまで!本編へどうぞ!

myth.5 彼の匂い


「「ただいま。」」


僕とドライグが塔の扉を開ける。

玄関にはイヴ様が椅子に座って寝ていた。

僕はドライグに静かにしてねと耳打ちし寝てるイヴ様にそっと近づく。

そのまま指でイヴ様の頬をぷにっと押す。

普段は大人びてるのに寝顔はこんなにも幼いと知って好奇心が抑えられなかった、どうしてもぷにぷにしたかった。


「ソール、お前はなにをしてるんだ?」


ドライグが僕のほっぺをぷにっとしてくる。今僕がイヴ様にしたように。


「ん、ソール……?」


あ、起きた。


「ただいま、イヴ様。」


「おかえり。」


イヴ様は僕を抱きしめてくれた。

その白く長い髪からフワッとシャンプーのいい香りが僕の鼻をくすぐる。

するとイヴ様は僕の唇にキスをして「今夜はご馳走よ!」と僕の手を引いた。


イヴ様に手を引かれてリビングに入るとそこには美味しそうな料理が机いっぱいに敷き詰められていた。

パスタにピッツァにドリアやらステーキ、本当に美味しそうな料理が沢山ある。

と、僕のお腹がぐ~っと音を鳴らした。

リビングがどっと笑い声に包まれた。


「ふふふ、ソール君可愛いね。」


ルーノが僕に笑いながら言う。

結局皆の笑い声に釣られて僕も笑ってしまった。



食事が終わると僕は父様に連れられてベランダに出る。

父様がふうっと煙を吐くとまた煙草を咥える。

そんな父様の横顔が綺麗でつい見とれてしまった。


「なんだよ、俺の顔の良さに見とれちまったか?」


そう言って父様は僕の顔に煙をふうっと吐いてきた。

思わず僕はけほっけほっと咳をする。

たしかに見とれていたのは事実だけど認めたくない、なんか癪だから。


「まぁいいや、で、どうだった?最初の執行は。」


最初の執行、正直に言うとあまり覚えていない。

あれを見たあとの記憶がすっぽり抜けているのだ、まるで頭の電源が一瞬切られているような。

そして気がついたら目の前のそれはバラバラになって息絶えていた。


「あまり覚えてない……。」


僕は正直に話した。


「ま、最初はそんなもんだろ。」


「そうなんだ、なんかちょっと安心した……。」


「ま、明日も執行あるんだがな。」


明日もあるのか……。


「ソール君!デザートあるよー!起源神様もはやくー!」


後ろからルーノの声がする。

デザートがあるらしい、なんだろう。コーヒーゼリー?それともチョコレートケーキとか?あ、プリンでもいいな!

僕の頭の中はデザートで埋め尽くされた。


「父様!早く行こ!」


「覚えてない、ねぇ……。」


僕は父様の手を引いてリビングへ戻った。

父様が何か言った気がするけど、それよりもデザートデザート!


リビングに戻ると机の上にはチーズケーキがずらっと並んでいた。


「さ、どうぞどうぞ。」


と、アダム様が僕にチーズケーキの乗ったお皿を渡してくれた。

チーズの香りが鼻腔をくすぐる。

フォークでケーキを一口大に切ってそれを口に運ぶ。

ん~!おいしーい!

口の中でチーズの香りがフワッと広がって下のクッキーがサクッと砕ける。


「おいしい!」


「ふふっ、よかった。」


すると玄関の方からガチャッと音がした、扉の開く音だ。


「ただいまー。」


この声は確か狐森ユウマの声だ。

イヴ様が玄関に向かう、あの狐森ユウマからは嫌な匂いがするから苦手だ。

そういえば僕の執行対象の奴からも似たような匂いがした気がする。


「おかえりー。」


皆がユウマの方へ駆け寄る。

僕は席に座ってチーズケーキを黙々と食べた。


「ただいま、ソール。」


っ!いつの間に僕の後ろに……。


「あ、お、おかえ、り……。」


僕はそう返すことしかできなかった。

彼は距離が近い。まぁみんな距離は近いと思うが。


「じゃ、じゃあ僕のお風呂入るね!」


僕はそそくさとその場から離れ裏口へ向かう。

そこは塔を囲む大きな御屋敷へつづく道に向かうための場所だ。

僕は塔から離れ奥の御屋敷へと向かう。

御屋敷には沢山のお部屋がある、父様の部屋なんかは特に広い。一つの家が御屋敷の中にあるようなイメージだ。

後ろを振り返ると塔の全貌が見える。さすがに上までは首を上げないと見えないけど。

塔はすこし傾いている、といっても本当に少しだ。

イヴ様曰くここがこのエデンの園という世界の中心なのだそうだ、ここにイヴ様とアダム様が居るからこの世界は存在することが出来る。つまりはこの世界から二人が離れたらこの世界は崩壊してしまう、らしい。真相は分からない。

十年前にイヴ様が話してくれたことだ。自分はこの世界の杭だ、と。

そんなことを考えていたらあっという間に御屋敷の玄関に到着した。

大きい扉を開けて中に入る。広い、広すぎる。お風呂が1階にあって本当に良かったと思う。全容を把握している訳では無いが恐らく5階以上はある。

まぁ今回はお風呂に入りに来ただけだしそんなに御屋敷の中をうろちょろすることも無いだろうが。

僕は足早にお風呂場に向かう。

脱衣場で服を脱ぐ。帯を緩めて腕を抜くとそのままストンと下に落ちる。それをカゴに入れて下着も流れで脱ぐのだが……。なにか嫌な予感がする、早く風呂に入らなければならない気がする。

僕は急いで下着を脱いでお風呂のドアのドアノブに手をかけて僕がお風呂のドアを開けたその時だった、脱衣場のドアが開いたのだ。

僕は急いでお風呂の中に入る。すると。


「ソール、一緒に入ろうぜー。」


狐森ユウマの声だ。声が聞こえた少しあとにはお風呂のドアが開く。


「お、いたいた。」


見つかった。最悪だ。念の為タオルを持っておいて良かった。


「背中流すぜ?」


彼はそう言って僕を誘う。


「い、いや、いいよ。」


もちろん断る。

それでも彼は引かない。


「ほらソール、タオル取れって!」


彼にタオルを剥ぎ取られ、僕は渋々椅子に座る。


「綺麗な体してんな。」


彼はそう言いながら僕の背中にシャワーのお湯をあててくる。

まぁ彼の体とは確かに違う。

彼の体は傷だらけで僕よりも筋肉量も多い。それに肌の色も僕よりも焼けている。

一言で言えば男らしい。


「俺とは真逆だな。」


彼の言葉からはどこか陰りが感じられる。

まだ嫌な匂いはするけど、彼自体は悪い人ではない。そう思ったらどこか楽になった。


「君の手、大きいね。」


「よく言われる。」


身長は僕より少し高いくらいだけど、手も足も僕よりも大きい。それに魔力が一切感じられない。どんな生物でも魔力は存在するはずだ、けれど彼からはそれが感じられない。


「ソールはきっと強いんだろうな。」


僕の体を見て強いと言うのはすこし意外だ。僕の体は細い、そして軽い。

そんな体に強いんだろうという感想を抱くということは魔力を感知することは出来るのだろう。


「皆ほどじゃないよ。」


事実だ。皆ほどではない、イヴ様とアダム様はやはりこの世界の杭と言うだけあって魔力量も僕とは桁違いだ、妹のしきさんも、そして夜人も。

父様に関しては魔力が膨大すぎて感知が出来ないほどだ。

ドライグ達も強い、装甲龍族は体を鎧に変えることができるその鎧を纏った者に自分の能力を付与することが出来る、その時にドライグ達の魔力が流れ込んでくるのだがその時の感覚がずっと忘れられない、体がとても熱くなる感覚が。

でもディオスの鎧は纏ったことがない、と言うより纏えない。

装甲龍族の鎧は能力を付与することが目的のため魔力を流し込む、その時に魔力の相性というものがありそれが高ければ高いほど本来の力を発揮出来るのだがディオスの場合はそもそもディオスの魔力に適合出来なくて鎧に弾かれてしまう。


「っし、終わったぞ。」


そんなことを考えていると彼の声が聞こえる。背中洗いが終わったようだ。


「あ、ありがとう……。」


彼にお礼を言う。まだ苦手意識はあるが彼は優しい人間という事がわかる、彼が僕を触る手が優しさに溢れていたから。


「僕も背中流すよ。」


「ありがとう、じゃあお願いしようかな。」


手にボディーソープを垂らして泡立てる。

後ろに立ってみてわかるが背中が広いというか大きい。

僕は泡立った泡を彼の背中に乗せる。そのまま手で泡を伸ばす。筋肉質でゴツゴツした背中の感触が手から伝わってくる。正直Ω´である自分からしたら非常に羨ましい体だ。

背中洗うのが終わったのでシャワーで流そうと思ったら彼が手を握ってきた。


「前もしてくれない?」


……は?

いやいやいや、何を言ってるんだこいつは。


「な、何言って!」


僕が彼から離れたらその時、フワッと僕の体が無重力に包まれる、そのまま後ろに倒れて後頭部に衝撃が走ったと思った時には僕の意識は闇の中に飲まれていった。

作者です。

最後まで読んでくださりありがとうございます。

そうですね、読者の皆様からすれば狐森ユウマ君はどう写っているのでしょうかね。

このキャラクターは掘り下げ予定のあるキャラクターなのでぜひ注意深く観察してみてください。

作者は全てのキャラクターを掘り下げ気はありません、というより掘り下げる時間が無いです。

ですがコメントでこのキャラクターを掘り下げてーなどがありましたらぜひぜひ書いてください、実現するかも!

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