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真紅の果実と玉虫  作者: 神咲凛月
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myth.3 使命

作者です。

今回はmyth.3という事で、ついにソールのお仕事がはじまります。

なにがターゲットになるのか、どうやってたどり着くのか、そこら辺を楽しんでいただければ幸いです。

myth.3 使命


「ソール、少しいい?」


イヴ様に呼ばれて僕がその使命を負ってから数日がたった。



「さてソール、言いたいことはわかるな?」


父様に言われて真っ先に思い浮かんだのは、妖怪の数を調整する執行者になる、その最初の執行が今日という事だ。


父様はソファから立ち上がって大きい本棚から一冊の分厚いファイルのようなものを出して一ページ捲った。


「こいつがお前の最初のターゲットだ。」


父様がファイルに収納された紙に描かれた絵を指さして言った。

その絵に描かれたそれは人型とは言えない、まさに妖怪を体現したような異形だった。

暗く、影が濃く描かれた絵では細かい所までは分からないが、口と思われる部分は必要以上に裂けていて、瞳は身体中に無数に存在している。

絵を凝視する僕に父様は少し冷たい声音で言う。


「お前がイヴにどう説明されたかは知らないが、これは使命じゃねぇ、必要な事だ。心を無にして何も考えずにやれ、わかったな?」


「…………わかった。」


「それでいい。」


父様は僕の頭を撫でてくれた。

父様の大きな手が心地いい。自然と頬が緩んでしまう。


「よし、行ってこい。」


父様に背中を押され行ってこいと誘導される。それを受け僕は父様の部屋から出て外に出ようと扉に手をかけたその時、後ろからドライグの声が聞こえた。


「俺も行くぞ、ソール。」


ドライグは僕の執行に付いてくると言った。


「別に一人でも……。」


正直付いてこられると緊張してしまう気がする。

ドライグは玄関のコートハンガーに掛けられた軽めの上着を羽織っては僕と一緒に外に出るように促す。


「はぁ、わかったよ、一緒に行くよ。」


「っし、じゃあ行こうぜ。」


僕とドライグは扉を開けて塔の外に出た。

空は澄み切った青空で真上にまん丸と輝く光が僕達を照らす。

僕は父様に見せてもらった絵と地図を頼りにそのターゲットがいるであろう場所に向かう。

ここからどれくらいかかるのだろうか、父様が言うには往復で一日位と聞いたが正直あの人の言う一日なんてあてにならない。

何故ならあの人は自分の常識で物を言う、この数日間と10年前の数日間過ごしてそれは痛いほど分かった。

例えばこの前は部屋に収まるか収まらないかの大きさの荷物を僕一人に持ってこいと言ってきたり、しかもそれをみんなに手伝ってもらってやっとこさ部屋に運んだら「遅すぎ。」と一蹴、さらには「こんなん一瞬で持ってこれんだろ」と指をパチンと鳴らして元の場所に戻して「あ、もっかい持ってきて。」と言う始末。

あの後イヴ様にこっぴどく叱られてたなぁ。

とまぁこんな感じであの人の感覚で言うことは大体あてにならない。


「なぁソール、これどれくらいかかるんだ?」


ドライグがタイムリーな質問をしてくる。

これはあと半日くらいと答えるべきか分からないと答えるべきか。

僕は悩んだ結果「分からない。」と答えた。

ドライグはそれを聞いても「ふーん。」くらいの反応だった。



その会話から半日、既に空は暗くなっていた。

僕は軽く絶望していた。

こんなにかかるとは思っていなかった、いくらあの父様といえ流石に一日あれば着くだろうとか思っていたのだが、周りの景色の情報を地図に当てはめるとまだ四分の一くらいの距離しか歩いていない。


「なぁ、これもしかして歩いて行くとめちゃくちゃ時間がかかるかかるんじゃ……。」


ドライグがこれまたタイムリーな質問をしてくる。

その通りだ。


「俺の背中乗るか?」


ドライグが人間の姿から元の赤い龍の姿に戻って、しゃがんで体を低くした。

今はその言葉に甘えるとしよう。

僕は「ありがとう。」とドライグにお礼を言って背中に乗る。



それから僕達は空を飛び目的地を目指した。

空が明るくなってきたがあれから睡眠を取ってないせいかとても眠い。

こんな状態ではターゲットに返り討ちにあってしまう。


「ねぇドライグ……僕眠い……。」


「じゃあ今日は野宿するか。」


ドライグは空から森の中へ降りて僕を背中に乗せたまま洞窟の中に入っていった。

中は暗くて月の光が入ってこないほど奥に進むとそれなりに開けた空間があった。

ドライグが指先に火を灯すと辺りがポワッと明るくなり先程の暗闇とは違く温かみを感じる。


「さ、寝ようか。」


ドライグが僕を抱いて横になる。

炎の能力を持っているからなのか、ドライグの体温はとても心地よい温度だ。

頭がポワポワして直ぐに睡魔が襲ってくる。

僕はそのまま意識を手放した。



目を覚ますと外からの光が差し込んで洞窟の入口付近の地面が照らされている。

外の景色も見え、緑豊かな森の中の洞窟ということがひと目でわかる。

僕を抱きしめながら横になっているドライグはまだ寝ているようだ。

動きたい、のだが……。動けない。ガッチリホールドされていて動けない。

でもドライグを起こすのは罪悪感があるし。

気持ちよく眠っている所を邪魔されるあの嫌な感じは背中がゾワゾワする。というより嫌だ。

よし、決めた。


「もっかい寝よ。」


僕はそのまま二度目の睡眠に飛び込んだ。

作者です。

最後まで読んでくれてありがとうございます。

今回はまだ戦闘には入りませんでしたね、次回戦闘描写があります。

父様の中の常識ってのがぶっ壊れていましたね。


作者は全てのキャラクターを掘り下げ気はありません、というより掘り下げる時間が無いです。

ですがコメントでこのキャラクターを掘り下げてーなどがありましたらぜひぜひ書いてください、実現するかも!

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