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68 混沌


「そん次は私ですわね! 1番......これか。中くらいで良い感じのサイズですわ」


「あ、それ私のかな......」


「いょっしゃ! ルミのなら当たり確定ですわ! きたああああああ!」


 まるで外れがあるような言い方をしつつ、ヴィクトリアは奇声を上げた。


「マフラーとかも、悩んだんだけど、他の人が入れそうだったから、フィンランドのメーカーの、食器にしてみた。ヒラザラとか、使いやすいと思うよ」


「マジでナイスですわルミ! 私、北欧デザイン大好きでしてよ! 白いカバの奴とか!」


「名前覚えてないじゃん......後、アレはカバじゃなくてトロール。あ、次、私だ」


 ルミが冷静にツッコミを入れつつ、自分の引いたクジの番号とプレゼントに振られた番号を見て、プレゼントを手に取った。


「あ、それ私のです」


 と、月見里が手を挙げる。


「ヤケにデカいな。何入れたんだ?」


 パソコンの箱くらいの大きさはありそうなその箱に驚愕しつつ、俺はそう聞いた。


「ティッカさんが開けてみてのお楽しみです」


「......カードと、ラケット? と、えっと、何これと何これ」


「百人一首と花札と羽付きと凧と福笑いと鏡餅です。日本の伝統的な遊びを詰め込んでみました」


「へえ......面白そう。ありがとう、マヒル。ナツマ、やり方教えて」


「ああ、俺、百人一首と鏡開きしかやったことないけど、何とか教えてみる」


「正月楽しく過ごそうセットですわね」


「マヒルお前これ、ルミとハイジ以外に当たったらどうする気だったんですか」


「日本人だって、こういうのあんまり持ってないじゃないですか。福笑いとか皆で遊べるし良いかなって。鏡餅だってあって困らないですし」


「あー、確かに。私、日本人ですけど、どれも持ってませんね」


 とうとう、自分が日本人であることを認めたぞこのエセパツキン仏人。


「アーデルも正月はああいうのやろうな」


「......そうね」


「何やテンション低いなワレ」


「私のプレゼントがまだ、誰の手にも渡っていないから不安なのよ。てか、次、私ね。やるわ」


「ほいこれ、レイグンからの」


 どうやら、アーデルの引いた番号を把握していたらしく、霊群は自分でアーデルにプレゼントを渡した。


「Danke. そろそろ、ドギツイの来そうよね......」


「おい待て。何で霊群さんのプレゼントに変な物が入ってるみたいな言われ方をされにゃならんのだ」


「だって、ほら......何これ、人形? Nussknackerじゃない」


「何ぞそれ......あ、くるみ割り人形だ! レイグン様の謎センス此処で炸裂!」


「クリスマスっぽいなかなと半分ネタ、半分ガチで選んだんだが、まさか本場の方に引かれるとは......ドイツ製だから許して?」


「私の家、Nussknacker無かったから大歓迎よ。ドイツ製なら尚更」


「いよしゃああああああああああ!」


 感情の振れ幅どうなってんだ。


「次、俺か......今、残ってるのが?」


「私のとアズサのと、ケイの、後、貴方のね」


 北里が確認すると、アーデルがそう答えた。


「そういや、これ、自分のが当たった時の対策してませんでしたわね」


「制度ガバガバなのです」


「まあ、自分にプレゼントするとかいう寂しいことにならないよう、気をつけるよ......」


 と、言いながら彼は自分の番号と照らし合わせながらプレゼントを手に取った。


「どう? それナツマの?」


「どうやら、違うみたいだ」


「あ、それ梓たんのー! 開けてみ開けてみー!」


「何だろう。何と無く嫌な予感がする」


 くるみ割り人形に続くヘンテコ枠が来るんじゃないかと戦々恐々とする北里。彼が手に持っている箱は炊飯器程の大きさだが、一体、中身は何であろうか。


「あ......か、カタログギフト......」


「間違いないでしょ。内容も遊園地とかのペアチケとかが多いからルミティカちゃんと二人でどーぞ。あ、私はソレンヌちゃんと違って誰に当たっても良いように選んだからカタログの中には食べ物とかもあるよ」


「あの、蜂須賀先輩、こっち見て笑うのやめて下さい」


 月見里がさっきから凄く可哀想。


「オイコラ梓あっ! 何でお前、そんなありきたりなモン入れてんだよ! 俺が変な物入れてちょっと、滑ったのが馬鹿みたいだろがあっ!?」


「お、おお......レイグン様が私にキレてるの初めて見たかも。いや、変な物入れてルミティカちゃんとかに当たったら目、当てられないでしょ」


「チッ。つまんねーの」


「蜂須賀、ありがとう。嬉しい。疑って悪かった」


「えっへへー、梓たん出来る女なのよ!」


「いやでも、交換用のプレゼントにカタログギフトは普通におもんないと思うので......ングググ!? 離せえっ!」


「余計なこと言うとギューってするぞソレンヌちゃん!」


「やめろ! 揉むな! 胸とか! 胸中心に太ももとか揉むな! オイマジで腹は止めろコラっなのです!?」


「意外と肉付き良いねソレンヌちゃん」


「あら、そうなの? カロリーは全部胸に行くんじゃなかったのかしら」


「うっさい! やめろ! お前ら黙ってみてないで助けろなのです! あ、やめっ......ぅおおっ!?」


「じゃー、次、私ですね」


 再三、イジられまくった仕返しとばかりに助けを呼ぶソ連を無視してプレゼントを取る月見里。その横では調子に乗った蜂須賀にお触りされて割とアウトな声を漏らし続けているソ連が居る。


「何かエロいなアレ」


 俺がポツリと呟く。


「分かる。アズアズー、やれやれー」


「動画撮ってマスターに送るわ」


「五六時給下げてやるので......あっ、うっひ......霊群も、出禁にいっ......! ひゃ、くすぐった、ひゃはっ」


「あ、ウチのプレゼント、先輩のだ。ラッキー」


「誰かこのカオスな状況にツッコめる人間は居ないのか」


「貴方がツッコミを放棄するのなら居ないわね、ナツマ。それより、マヒル、貴方、何サラッとケイの奴取ってるのよ。仕組んだでしょ」


「ウチを何だと思ってるんですかフォーゲルさんは......あ、チョコレートだ。しかも、コレかなり高い奴じゃないですか」


「面倒臭かったから、この中にチョコ嫌いがいない事をさりげなくチェックしてそれにした。消耗品は間違い無いだろ」


「人のプレゼント選びを面倒臭がらないで下さいよ......でも、嬉しいです。先輩だと思って少しずつ食べますね」


「え何それ全然、嬉しくないんやけど。月見里は俺を食おうとしてる訳? それとも何? 月見里はチョコに爪とか入れちゃう系女子だってことの伏線?」


「意味分からん考察止めてください。入れても精々、血までですよ」


「何故それが少しでも自分の擁護材料になると思ったのかを小一時間問い詰めたいし、今後、絶対に月見里から渡された食べ物は食べない」


「や、流石に半分くらい冗談ですからね?」


 頼むから全部冗談と言ってくれ。


「そろそろ最後だな。まだ、開封してない奴は俺と五十六番で、プレゼントはアーデルネキと北里ニキのが残ってる感じ?」


「霊群......すまん。じゃんけんで俺が勝って、後攻を勝ち取った所悪いが、此処は先に行かせてくれ」


「お、おお......! 行ってこい」


 俺はゴクリと唾を飲み込み、指定の番号のプレゼントを手にした。アーデルも、北里も、何も言わない。俺はただ、そのプレゼントに向き合い、開封した。


「マフラーと、耳当て......」


 これは、どっちだ......?


「あ、悪い。それ俺のだな。井立田と地味に被った」


「あ.......っっっっっ、りがとうっ!」


 俺は北里の手を取り、握手をする。


「は? へ? あ、ああ......」


「普通に防寒具欲してたから助かる。嬉しいよ」


「そう言ってもらえると幸いだが、アーデルハイドのじゃなくて良かったのか......?」


「え、いや、全然。寧ろこっちが狙いだった。アーデルのを外せば、別口でアーデルから貰えてアーデルイベント増えるし」


「あ、そういうことだったのか......」


「そんな打算的なこと考えてたのね、貴方」


 少し呆れた様子でアーデルが溜息を吐く。その横ではナチュラルに消去法でアーデルのものと思われるプレゼントを開封する霊群の姿があった。


「あ、ドイツの服だ」


「ディアンドルやん」


「え何これ、俺に着ろって?」


「不知火先輩に着せてあげなさい」


「......! 成る程、そういうことか! ナイス! 最高だアーデルネキ! 天才! 可愛い! ドイツ人!」


 確かにこの中のメンバーだと、全員、着るか、パートナーに着せるか出来るもんな。アーデルらしくて、無駄にならない良い感じのプレゼントだと思う。


「でもこれ、俺に渡ってたらどうする気だったんだ?」


「このディアンドル、いつもの奴とは結構、柄とかが違うのよ。そうなったら私が着てあげようと思って」


「私に着せるという選択肢もありますよ、先輩。割と似合うと思います」


「あー、成る程......確かに月見里が似合うのは何か分かる。地味な子の着る派手な服って凄いギャップ萌えあるんだよな」


「えー、梓たんも着てみたーい!」


「んうっ、はあっ......はあ......ぃぅうぉぉうぉ......」


 蜂須賀のスキンシップから逃れられたらしいソ連は顔を真っ赤にし、満身創痍と言わんばかりにぶっ倒れた。


「ソ連、お前まだそんな状態だったのか」


「マスターさんに写真送っときますね」


「お......おい、月見里、テメェ、どういうつもりなのですか......」


「仕返しなのです」


「こんのメンヘラたこ焼き女あああああ」

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