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32 水着

総合評価が500を突破しました! 皆さん、本当にありがとうございます!! 感想やレビューもどしどし送って下さいまし!


「ふう......酷い目に遭いましたわ」


 砂浜に戻ったヴィクトリアは溜息を吐いて、ビーチパラソルの下に座った。


「イギリスがドイツに海でボコボコにされてんじゃねえよ」


 疲弊した様子のヴィクトリアを井立田が笑った。


「その汚い口を閉じて下さる?」


「乱暴なのか、丁寧なのか分かんねえなその口調」


 神奈川の海でイギリス海軍のおまる型戦艦プリンスオブウェールズから砲撃を仕掛けられたジンベエザメ型戦艦長門。それは間一髪の状況で潜水中であったドイツ海軍の潜水艦によって救出された。

 危機的状況をどうにか脱した、五六提督はこう言ったという。


「アーデルの水着可愛過ぎ。犯罪。強い。エロい。美しい。我が人生に一片の悔いがあるとすれば、それはアーデルと付き合えなかったこと。グハァ......」


「わざとらしい」


 アーデルの水着姿を目の当たりにしたことで、昇天した俺に対してアーデルは静かにそう述べた。


「いや、全部俺の素直な気持ちだって。控えめな胸をエロいと思うのも、しっかりとした筋肉を美しいと思うのも、そしてアーデルの美脚を見ることより、瞬きをすることを優先して良いものかと悩んでいるのも」


 アーデルの水着は妥当でありながら、彼女に最も似合うであろう黒色であり、その面積は胸が平坦なこともあり、少し小さい。しかし、それがエロい。貧乳水着エロいぞアーデルハイド。

 そして、彼女の洗練され、引き締まった肌は造形美の終着点ではないかという程に美しく、気品がある。

 後、筋肉質で引き締まった足は俺の持てるポジティブな形容詞全てを以て形容したい。


「......どうやら、その様ね」


 どうやら俺の思考は彼女に筒抜けだったらしく、静かにアーデルはそう言って、俺から視線を逸らした。


「あ、ちょっと、照れてる」


「照れてない」


「照れてるだろ」


「照れてない」


 頑なに照れていることを否定するアーデル。その頬は少し赤くなっていた。あー......ホント、アーデル可愛いな。


「貴方達、イチャつくなら他でやって下さらないかしら......? はっきり言ってムカつきますわ」


「二人だけの世界作り出しやがって! このバカップル共!」


 突如、ヴィクトリアと井立田からそんなことを言われた。


「イチャついてはいないわ」


「カップルて......。お前らの方がデキてるだろ」


 俺の反論にヴィクトリアと井立田は顔を見合わせた。


「はあっ! 冗談は控えて下さらないかしら!? 私、こんな変人に興味なんて更々ありませんわ!」


「俺だってお前みたいな変な口調の腐女子に興味ねえよ! 大体、お嬢様口調するならするでちゃんと貫けよ!」


「ああああああああんっ!? 私は常に気品溢れているのですけれど!? ......後、誰が腐女子じゃ。私はただただ殿方達が愛を育む物語が好きなだけですわ」


「それが腐女子って言うんだよ! 後、気品あふれた奴はそんな荒ぶらねえから! 話し方!」


 突如、口論を始めた二人を横目に俺はアーデルに言う。


「なんか、食べに行くか......。騒がしいし」


「そうね。ヤキソバを食べてみたいわ」


 そうして、俺たち二人はその場を後にした。あーあ、アイツら早く付き合わねえかなあ。


⭐︎


「......あの二人、行きましたわね」


 溜息を吐きながら、私は言う。やっぱり、二人っきりにならないと恋愛は進展しないからね。上手い具合に二人きりにさせられて良かった、良かった。


「ああ。行ったな」


「正直、どう考えても私達よりもあの二人の方がデキてますわよね。私達が、何だかんだ言って仲の良いことは認めざるを得ませんけれど」


 実際、コイツのことは嫌いじゃない。気も合うし。偶に私の完璧な言葉遣いにツッコミ入れてくるの腹立つけど。


「ま、俺達中学一緒だし、付き合いもそこそこあるからな。それに対してアイツら、出会ったの数ヶ月前だぜ? ヤバくないか?」


「ヤバイですわ。それに五六、あれだけアーデルハイドに想いを伝えたり、仲良くしている癖に『アーデルハイドは自分のことを恋愛対象としては見ていない』とかほざいていましたわ」


 あの男が言っていた言葉を思い出しながら、私は彼にそう伝えた。今、思い出しても腹が立つ。何であんなに型破りで、アーデルハイドにもグイグイいく癖に鈍感なのあの男。


「あー、それなら、アーデルハイドと俺、話してたんだけど、アイツ、あれだけ五六に好き好き言われてる癖に『ケイは、私のことを女友達としては大切に想ってくれているけれど、そういう意味では......』とか、言ってやがったな」


 アーデルハイドもかよ。


「アーデルハイド、向こうの高校ではモテまくっているみたいですし、人から好かれることに関しては慣れている筈だと思うのですけれど。一番、近くにいる五六の想いに気付けないとは.....」


「五六の距離感の近さに問題があるのかもな。近すぎっていうか」


「というと?」


「いや、普通、気になる女子に胸がエロいだとか言わないだろ? だが、五六は言う。躊躇なく言う。だから、アーデルハイドは自分が女友達程度に見られているんだろうなと思う。しかも、アーデルは一切の恥じらいを見せない。だから、五六もアーデルハイドは自分に大した感情を持ち合わせていないんだなと考える」


「そんな、幼馴染どうしの恋愛のすれ違いみたいなこと......ありますわね。あの二人なら」


 あの二人、面倒臭いなあ。


「そう! アイツらは出会って間もないというのに、秒で幼馴染みたいな距離感に行ってしまったが故にすれ違いが起きてるんだ」


「でも、それなら、勝手に放っておけばいずれ何かを切っ掛けに互いの気持ちに気が付きそうですわね。あの二人、半同棲状態みたいですし。」


 幼馴染同士の両片想いが結ばれるテンプレは基本、そんな感じだ。


「まあ、そうだけど、見てる側としては歯痒いよなあ。てか、半同棲状態なのに両片想いって、アイツら問題あるだろ」


「そうですわね......」


「「あー、早くあの二人付き合わねえかなあ。」」

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